2話 悠生の秘密
気温が下がりつつあるある土曜日、皆で朝食を取っていたところから物語は始まる
「突然だが、大事な話がある」
今回は悠生が重々しくそう口にする
「デジャヴだな」
楓の突っ込みを全力で見逃し、悠生は重々しくうなずく
「なになに??どーしたの??」
そこに、徳光の声が飛んでくる。まだ水槽が治っていないので、風呂場に居るのだ
「金魚は黙っとこうか、デジャヴなんだよ」
楓の突っ込みはまたもスルーされる。きょうは楓がアウェーのようだ
「実は、ある人を紹介したい」
『浮気!?』
総突っ込み。しかし悠生は意に介さず、
「じつはな・・・」
悠生が話そうとしたと同時にドアが勢いよくぶち破られる。彩花対策が施されているドアが、文字通り吹き飛ばされたのだ。その威力は計り知れない
「叔父さん!!寒いんだけど!!」
そう言いながら入ってきた少女は一同に衝撃をあたえた
「おまえ・・・・・・晧子、か??」
楓が恐る恐る尋ねると、晧子と呼ばれた少女は肯定し、
「久しぶり皆!!こっちの高校に進学するため、この家に住むことになりました!!」
満面の笑みでそう言った
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
対する楓達は完全に処理が追い付いておらず、フリーズしている
「晧子ちゃんにはニ階の空き部屋を使ってもらうことになるな」
「まてクソ親父、あそこは何年も掃除してないからすぐには使えないぞ」
楓がいち早く処理を終わらせ、正論を言う。すると悠生は
「掃除なんてすぐ終わるっしょ、床はル●バにやらせればいいし、埃はクイック●ワイパー使えば直ぐだ。」
「換気もしなくちゃね」
「ねぇ、さすがに怒るぜ??いつまで無視されなきゃならねぇんダよ」
それでも無視し続け、話を続ける
「それと、今日も仕事があるんだ。なので後は頼む」
『行ってらっしゃーい』
「・・・お前ら、覚悟はいいか??」
修羅と化した楓は、テレビ、冷蔵庫、ソファーを破壊。静也と香織に強制的に眠らされた
「ねぇ」
それから数時間、晧子の部屋になる部屋の掃除をしていると、晧子が思い出したように口を開く
「悠生おじさんの仕事って何なんだろう??」
ふとした疑問、それは家族の中で地味に謎な事の一つだった
「よし、確かめよう」
『起きてたの!?』
楓が起き上がり(さっきまで部屋のベッドに寝ていた)、全員の背後に針を忍ばせつつ言葉を紡ぐ。なぜ針かというと、先ほど無視され続けたのが以上に応えたからだ。
「幸い母さんはお昼寝中だ。証拠隠滅のために徳光を連れて、父さんを追うぞ」
「質問があります、楓隊長」
「なんだ、静也隊員」
いくつになっても所詮男、冒険とかは大好きなのだ
「既に父さんは仕事に出かけているはず、今からじゃ遅いのでは??」
「甘いな、父さんは掃除が嫌だったから家を出たんだ。仕事は午後からなのに」
「どういうことですか。隊長」
「俺の作った発信機が示しているのは近くのコンビニ。つまり暇つぶしをしてるんだよ、彩花隊員」
心は少年寄りの彩花も参戦。だめだこの兄妹。
「ホントに行くの??家でゴロゴロしてたいんだけど。久々のoffだし・・・」
インドア少女、香織。彼女は基本的にめんどくさがりだ
「ついてきたら、美味しいデザート作ってやるぞ」
「行く。」
でも甘いものに目が無い。よって買収も出来る。
「ウチも行く。おもしろそうだし」
従姉妹といえどなかむらけ。行動理念はほとんど同じなのだ
「よし。彩花は徳光を気絶させてから運ぶんだ。一撃で意識を刈り取れよ。他のものは各自用意をして家の前に再集合だ。母さんには気取られるな。いいな??では解散!!」
こうして、楓を主犯格とした尾行大作戦が決行された
その後楓達は家の外で再集合し、作戦について話し合っていた
「さて、これからどうするかだが・・・・・・何か考えのある者はいるか??」
言い出しっぺのくせに何も考えない男、其れが楓である
「普通にしてたら見つかっちまうし・・・・・・変装とか」
至極まっとうな意見を述べる静也、さすがは常識人
「その服はどうする気よ??まさかいまから買いに行く訳にもいかないでしょ」
素早く静也の考えの問題を指摘する晧子。すると楓は
「そう言うだろうと思って既に作ってある」
『そんな才能あったの!?』
どうでもいい才能があらわになった
「それくらいなら私もできるよ。というか楓に教えたの私だし」
ココでようやく発言するのはインドア系毒舌娘、香織である
「いつの間にそんなやり取りを繰り広げてたんだよ・・・」
「まあいいじゃないか些細なことは。問題は気取られずに尾行出来るかだ」
楓が話を本筋に戻す。作戦会議開始からほとんど進展していないのだ
「大人数でいるとその分見つかるリスクも高まる。なので個人個人で行動するのが得策だ。という訳でこれをもっておけ」
そう言って楓が出したのは見た感じただの耳栓。
「これで何をしろと??」
「それは俺が最近開発した最新型トランシーバーなのだ。耳に着けられるから場所にも困らないし通信もとりあえず地球上ならどこでもつながるぞ」
とりあえず楓はこの時代の人ではないっぽい。
「「聞こえるだろ??基本的に集合回線モードにしてあるから全員に聞こえるはずだぞ」」
目の前からの声と耳から聞こえる声でどうにも違和感があるようで、楓が話し終えると全員が一旦耳から外した
「俺が発信機の場所を絶えず伝えるから、各自見つからないように行動しろ。では解散!!」
こうして、無駄に盛大なミッションが開始された
~静也・晧子~
『静也、晧子、その地点からターゲットはすぐそばにいる。警戒しておけ』
静也と晧子がいる地点は、家からすこし離れた商店街。静也にとっては見慣れた風景だが、田舎から越してきた晧子にとっては未知の世界らしい。現に今もミッション放棄でいろんな品を食い入るように見つめている
「晧姉、そろそろ移動しようよ・・・・・・」
「待って静也、この緑色で長細いものは・・・・・・」
「キュウリだよ!?何でそれがわからないの!?」
「じゃあこれは・・・この紫色の丸いのは・・・」
「ナスでしょ!?」
「甘いわね静也、紫キャベツよ!!」
「何だって!?くそう、騙された・・・・・・ってちゃうわい!!何でいつの間にかクイズ形式!?」
「お前たち・・・何やってるんだ???」
不意に聞こえた低い声。それは聞き慣れた声であり、いまの静也たちにとって最も聞きたくなかった人の声だった
「と・・・父さん」
静也がギギギ・・・・と音がつくくらいぎこちなく振り返ると、やはりというか、案の定というか、そこにいたのは悠生だった
「部屋の掃除は終わったのか??」
「あぁ、まあだいたいは。あとは来客用の布団が乾くのを待つだけだよ」
「あ、悠生おじさん。」
形だけは取り繕ってはいるが、内心焦りまくる静也。
「今ね、悠生おじさんの・・・・・・」
晧子が尾行に関する事を言おうとした途端、糸が切れたようにその場に倒れこんでしまった
『・・・・・・間にあったか。~カシュッ~』
続いて聞こえたのは耳栓型トランシーバを通した楓の声。そしてそれと同時に空の薬莢を排出するような音が聞こえた
(まさか・・・楓が晧姉を??)
「どうした静也、ここにいると通行の妨げになるだろ、移動するぞ」
静也が悠生に視線を移すと、静也から見て悠生のさらに奥にある高層ビルで、不可思議な何かが光った
『静也、父さんと晧子を家まで連れて帰ってきてくれな』
楓の言葉に対して質問するより早く、前方の光がまたたき、一瞬遅れて銃声が鳴り響いた
「父さん!!危ない!!」
人間の初動では銃弾のスピードには追い付くことはできない。マンガとかでよく見る銃弾避けは空想であることを記しておこう
つまり、いくら悠生といえど銃弾は避けられ・・・「ぬぅん!!」
「『避けるどころか叩き落としただと!?』」
・・・まぁ、そうなりますよね~
『おい、俺たちの父親が人間じゃないことが実証されちまったぞ』
「もとから人じゃないとは思っていたが・・・まさかこれほどとは」
楓と静也の目には、人の形をした何かが映っていたという
「俺の銃弾が、叩き落とされただと・・・?」
自慢の愛銃〔アキュラシーインターナショナル L115A3Ver楓カスタム〕の世界最速の銃弾をいともたやすく叩き落とされ、驚きを隠せずにはいられない楓
「って街中でいきなりライフルぶっ放すか普通!?」
静也は静也で今の展開に驚いている。
「だれだか知らないが俺にそんな鉛玉何ぞ通らんぞ」
銃弾の飛んできた方向、つまり楓が居る方向に阿修羅すら泣いて逃げだすレベルの冷徹な視線と、鬼神すら可愛く見えるほどの殺気を放つ悠生。やはり人間ではない
『静也、俺が悠生を足止めするから皓子をおぶってエリアCに移動しろ。他の奴もそこに集まれ、いいな』
耳から楓の指示が飛ぶ。静也は指示通りに、半分はこれから此処で起こるであろう惨事に巻き込まれないため、急いで皓子をおぶり、その場を後にした
~楓~
「さて・・・最速の銃弾ですらあのザマとなると・・・気絶は無理だな」
静也に指示を出した後、冷静に状況を分析する。
「よし、あれで行こう」
ライフルからマガジンを抜きとり、別のマガジンをつける。
「これで・・・どうだ!!」
スコープで狙いを定めたのは悠生のちょうど前の空間。外したわけではない。なぜなら・・・
「・・・よし、作戦成功」
放たれた弾丸は狙い通り悠生の前に着弾。一瞬置いて周辺をまばゆい光が覆った。つまり、先ほど放ったのはいわゆる閃光弾だ
「さて、今のうちに逃げるとするか」
モノの数秒でライフルを仕舞いこみ、そこにいた痕跡を残すことなくその場を後にする。それは熟練されたスナイパーの動きだった
~エリアC~
「とりあえず、父さんの仕事の予想がついた」
数分後、楓を始めとしたメンバーはエリアC。つまりスーパーのフードコートで顔をそろえていた
「ちょっと待った。楓がやったのは悠生と銃撃戦をしただけでしょ??」
静也がポテトをつまみながら即座に突っ込む
「確かにそれくらいしかしてない。でも俺が使ったのはスナイパーライフルだ。スコープで常にみていたとしたら??」
「良く捕まんないね、そんなことしといて」
「破壊神はハンバーガーでも食べてなさい。それに、父さんの進行方向から推測すると、おそらく薬品会社の幹部クラスだと思う」
「・・・・・・楓、実は最初から知ってたでしょ」
皓子がジトっとした目で楓を見る
「え??何でさ」
「進行方向だけで何で叔父さんの地位まで分かるの??」
「え・・・とそれはだってあんだけ大きな家を買えるんだ、それくらいの地位じゃないと説明つかないだろ」
一応正論は言っているが、目が若干泳いでいる楓。それを目ざとく見つけた香織がたたみかける
「楓・・・実は全部知っててただ面白そうだからこんなことしたでしょ。正直に答えなさい」
香織の有無を言わさぬ口調に、楓はしばし考えた後、
「教えても良かったけどそれじゃつまらないだろ??自分で疑問の答えを見つけ出した時に人間は成長するんだぜ。ここまで妹弟たちの事を考えてやれる兄はそうそういないぜ??」
『だから??』
「・・・・・・面白そうだったので乗りました。すいませんでした」
あっさり自白。
「まぁ仕事の内容が分かったからいいけど・・・次やったらシバくからね」
と一番まともな反応をしたのは皓子。残りはというと
「とりあえず一発殴らせてね??」
一番殴っちゃいけない彩花が、笑顔で拳をかたーく握りしめつつそんなことを言う
「とりあえずスイーツを作って。とびきり甘いの」
眠すぎるのか、頭がふ~らふらしている香織が寝言かも分からないことを口にしている
「まぁあれだね、助けないからね??」
おそらく彩花の事だろう、さりげなく楓の体を拘束しながら静也が残酷な死刑宣告をする
「・・・・・・」
徳光はいまだに気絶しているのか、一言もしゃべらない
「まって、徳光はどうしたんだ彩花??」
「重いから置いてきた」
『おい!!一番やっちゃダメだろそれは!!』
今回も相変わらず酷い目に逢っている徳光だった
『父さんの進行方向から推測すると、おそらく薬品会社の幹部クラスだと思う』
悠生の「本当の」会社。その会社の自分の席で楓たちの行動をパソコンで見ているのは
「ふむ、さすがに分析力はあるな、楓は。俺に銃弾が通用しないとわかってから瞬時に閃光弾に切り替え、気絶から無力化に切り替えるだけのことはある」
やっぱ悠生だった。
「それでもダミーで何とかなるレベルか。まだ甘いな、尾行もより一層気配を絶たないとバレバレだしな。」
結局、悠生には全てばれていたらしい。
次回予告ー!!
楓「次回はだれのお話だ??」
徳「俺だ!!」
彩「あたし!!」
香「私・・・」
皓「ウチ!!」
静「だれだかわからんな・・・・・・」
悠「どれどれ??・・・・徳光だ」
徳「いよっし!!」
全「・・・・・・」
徳「何だよその反応!!いつも酷い目に逢ってるんだ!!それくらいいいだろう!!」
楓「まぁ、確かにかなりひどい扱いだな・・・・・・見直すと悲惨にもほどがある」
悠「ん??内容は・・・・・・徳光が人間になる!?」
全「はぁ!?」
悠「どうやらこの世界の魔王。キユウに連れ去られたミグメ姫を救うため、戦士カーヤ、魔道士の兄妹、オリカ、ヤシズ、針を武器にする異形の剣士、ケディアとともに旅をするお話らしいな」
楓「ついにバトル入ったか・・・」




