1話 静也の受難
「突然だが、重大な発表がある」
ここは中村家。中々に個性的な家族の暮らしている家だ
そして、朝ごはんを食べる手を止めて切り出したのは二男の静也
「なになに??ど~しちゃったわけ??」
今喋ったのが一家のペット、金魚の徳光だ。何で喋ってるのかって???
そんなことを気にしているようでは、この先耐えられないぞ??
「とりあえず金魚は黙っとこうか。で??どうしたのさ静也、いつになく真剣だけど・・・まさか、彼女でもできたっていうのか??」
金魚に大量のエサという名の拷問を与えつつ、静也に確認したのは一家の長男、楓だ
「まっさか~!!よりによって静也に彼女なんてできるわけないよ~」
「うんうん、静也に出来るわけが無いよ。あたりまえのことを言わないでよ楓」
「とりあえず徳光死んじゃうからエサやめたげて。以外に高いんだよそれ」
上から順に、二女の彩花。長女の香織。そして父親である悠生。とりあえず身内に向かってとはいえ限度がある。静也は殺したい衝動を抑え込み、大きく深呼吸した。と
「ふえっくし!!!」
「お、効いた。さすがはコショウだ」
楓がいつの間にか散布していたコショウを吸い込んでしまい、大きなくしゃみをする。
「そろそろ殺してもいいんじゃないだろうか・・・」
なんて危険な考えを実行に移そうとしていると、キッチンの方からのんびりした声が聞こえる
「それで??静也、一体どうしたの??」
キッチンにいるのは母親の恵美。40超えているのになぜか20代くらいの外見をもつ魔性のお母さんだ。早起きで眠いのか今はのんびりしているが、いつもは個性的すぎる一家をまとめるために頑張っているけなげなお母さんだ。決して子供ではない。でもおばちゃんでもないので気をつけよう。見つけたら全力で逃げるのが一 番安全だ
「いや、彼女できたんだけどね」
~ピシッ~
瞬間、その場の空気が凍った
それはゆっくりと氷解していき、少しずつ動き出した悠生達は
『EEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEEE!!!!!!!?!?!?!?』
アメコミみたいな声を上げ、それぞれ何らかのアクションを起こす。
まず、悠生が年不相応の素早さを発揮して静也を転ばせ、
その次に楓が何処からか取り出した太い針と鋼糸で床と静也を縫い付け、
さらに香織が先端にウィンナーがついたフォークを静也の目に突き付け、
最後に彩花が徳光の入っている水槽を破壊した。
「って最後要らないだろ!!何してんだ彩花!?」
「いや、なんとなく」
徳光は床でびちびち跳ねている。それを見て悠生は
「ずいぶん大きくなったな、そろそろ食べてもいいんじゃないか??」
とても恐ろしいことを口走った
「やめて!!さすがに俺は喰えないよ!?」
徳光は何とか逃げようとするが間に合わず、楓の投げた針によって麻酔され、ピクリとも動かなくなった
「・・・で??静也、最後に何か言いたいことはあるか??」
徳光が恵美に運ばれて行くのを横目で見つつ、悠生はドスの利いた声で静也に聞く
「とりあえず、彼女ができたってだけでここまで殺気立つこの家はおかしいと思います」
「楓」
「了解」
悠生の指示を受けた楓は、ゆっくりと針を静也の眼球に・・・・・・・
「やめろ!!さすがにそれは怖いから!!」
「分かってるよ、さすがに人殺しはこの時代じゃできないもんね」
(この時代じゃなかったらやってたのか・・・)
数分後、席に着いた一家は、魚の活け造りを食べながら話を続けていた。
「では、状況をまとめるぞ。静也に彼女ができた」
とたん、殺気立つ彩花、香織、悠生
「ハイそこ、殺気立たない。というか父さんは殺気立つ理由が無いでしょうに」
三人を窘めてから、楓は改めて静也の方へと向き直る
「さて静也・・・言い残すことはないか??」
「お前が一番殺気立ってるぞ」
素早く悠生が突っ込む。しかし
「十秒だけ待ってやる。死ぬか、天国へ行くか、ひいばあちゃんの所へ行くか、どれか選ぶといい」
「一見選択肢あるようだけど全部死ぬかんな俺!!」
「だが断る」
「わけがわからんわ!!」
一通りギャグのようなやり取りを交わした後、楓は真剣に質問を始める
「まずは・・・いつから??」
「えっと、一カ月くらい前かな、ホントはそんときに言おうと思ったんだけど一カ月前って言うとちょうどあの出来ごとがあったから言いだしづらくて」
「確かに・・・あんときは言えないよなぁ・・・」
全員がしみじみとした顔で、一カ月前に起きたある事件を思い出す。
「なるほどな、言えずにずるずるきたわけだ」
静也はうなずき、それから言いだしづらそうに
「それからさ・・・・・
・・・・・・玄関にいるんだよね」
一家に衝撃が走った。というか彩花がほぼ無意識に壁を本気で殴ったため、文字通り家が揺れた。
「「「「そう言うことは・・・・・さきにいえぇーーー!!!!!」」」」
家が揺れてから数分後、静也が彼女を皆に紹介する
「この子が俺が付き合ってる、戸琴陽菜さんです」
「ど・・・どうも、戸琴陽菜です、静也君とは、その、お付き合いさせていただいております。」
緊張のせいか、しどろもどろになる陽菜。それを呆然として見ている悠生達
誰もしゃべらず、おもっくるしい雰囲気が漂う中、台所から空気を読まない声が飛んでくる
「ちょ~と!!おれのことわすれてな~い??」
・・・別の意味で沈黙が訪れる。そんな中楓はソファーから腰を上げ、
「ちょっとあの馬鹿シバいてくる」
そう言い残して、台所に消えていった。しばらくして
「おぉ楓!!早くここから水槽に戻してくれよ!!」
「残念だが、お前の水槽は破壊神によって使用できない、それにお前はもう水槽に戻らなくていいんだ」
「マジで!?ついに俺にも自由が訪れる???」
「イヤ、お前は此の世の理から外れられるぞ」
「え、それって・・・」
「そう、つまり・・・ハリネズミにランクアップだ」
「ちょ、うそでしょ??何で俺が殺されなきゃなんないわけ??」
「黙れこのKY人面魚がぁァァァァ!!!!!!!」
「イヤァァァァァァァァ!!!!!!!!」
そんなやり取りが、リビングに聞こえてきた
『・・・・・・・・・・・・』
重い、非常に重い空気になって仕舞っているリビングに、すっきりした表情の楓が入ってくる
「ん??何、まだこんな空気なの??」
『誰のせいだよ!!!!!』
総突っ込みだった。そして、それがきっかけとなり、重苦しい空気は綺麗さっぱり無くなった
「陽菜ちゃん、だっけ??俺は静也の兄の楓です。こっちから順に、馬鹿、ポイズンメーカー、母の恵美、父の悠生です」
「「待てコラ」」
楓の紹介に不満げな香織と彩花
「何だよ、ちゃんと紹介したろ??」
「何処がよ!!何馬鹿って!!」
「私にいたっては理解できないでしょ!!そんなこともわかんないのか駄兄貴!!」
「駄兄貴って何だおい!!むしろお前たちを知ってもらうためにはうってつけじゃねぇか!!」
三人が言い争っているのを無視し、恵美が陽菜に話しかける
「ごめんね、騒がしくって」
「い、いえ、そんなことは・・・」
「さっき楓くんに紹介してもらったけど、私が静也くんの母、恵美です、いつも静也くんがお世話になっています」
「ちょ、母さん・・・」
「いえ、こちらこそいつもお世話になっています」
なんか良くあるパターンのやり取りをかわしている恵美。それを見ていた悠生がついに動く
「それで??もうヤ・・・・」
『アウトォォォォ!!!!!!!』
先ほどまで争っていた楓、彩花、香織が強制的に悠生の意識を刈り取る。具体的なやり方はとてもじゃないが描写できない。それほどまでにえげつない刈り方をしたのだ、どうか理解してほしい
徳光が沈黙し、悠生が強制退場させられてからしばらくして、残ったメンバーは和やかに談笑していた
「そのときに静也君が・・・」
「へぇ~。静也もいいとこあるじゃん」
「いつも私たちにはきつく当るくせに~」
「お前ら俺がお前たちの攻撃の被害に逢い続けてること忘れてるだろ!!お前たちの攻撃冗談じゃないんだからな!?」
・・・・・・訂正、和やかではない気もするが、とにかく談笑していた
すると、意識が戻ったらしい悠生が立ち上がり、静也を見て
「・・・・・・お前にもついに、あの技を教える時が来たようだな」
と、寝言を吐いた
楓は針を出し、彩花と香織もいつでも殺れる体勢になる。次下ネタを言ったらマジで殺すつもりのようだ
悠生は静也をリビングの外へ連れ出し、数分後、清々しい顔で戻ってくる。静也もどこか勇ましい顔つきになっていなくもない
「行くぞ、静也」
「おう」
お互いうなずき合い、何があったのか分かっていない楓たちの方へ向き直り・・・・・・
『サイン・コサイン・タンジェント!!!!』
全力で、一発芸をかました
『・・・・・・・・・・・・』
一瞬で空気が絶対零度まで冷え、何故このタイミングでそれをやったのかという疑問を抱きつつ固まる楓達を見て、悠生は
「やりきったな・・・・・・楓、次はお前が継承する・・・「するか!!」・・・なら彩・・・「絶対にヤダ」・・・なら・・・「私もやだよ」・・・徳光についでもらおう」
かくして、静也の彼女は、なかむらけの衝撃に地味に耐えきり、本編は幕を閉じる
楓「なぁ、最後の方彼女関係なくない??」
まぁそうなるよね、なかむらけだし
晧「やっぱ??」
楓「だれだお前は!?」
新キャラだよ、お前達の従姉妹だ
晧「晧子です」 サッ(名刺を渡した音)
楓「これはご丁寧に、楓です」 スッ(名刺を受取り、自分のを渡した音)
まぁその前に改訂版なかむらけ家族構成をはさむんだけどね
静「おぉ、晧姉!!」
晧「静也!?変わんないわねアンタ・・・・・・」
悠「晧子はこっちの高校を受験するためにこっちに来たんだ。楓、お前と同じ所を受けるつもりみたいだぞ」
楓「え??来年三人も家族くんの!?気まずいんだけど・・・・・・」
恵「まぁまぁ、良いじゃない楽しそうだし、ちゃんと勉強見てあげるのよ??」
楓「母さん・・・マジかよ」
という訳で次回なかむらけ2話!!
~悠生の秘密~
は、
全「お楽しみに??」




