1、朝が早くて、夜も早い
久々の投稿ですね! 今回もまた考えなしで突っ走る。それが、俺クオリティだ!!
山奥にひっそりと建っている喫茶店。
だが、その店は従業員が一人もいない。何故なら店主は人を嫌っているから。
人を嫌う店主が切盛りする喫茶店。
その店に一度でも行くと、他の喫茶店に行く事はないだろう。
その店で作る物は全部、最高の美味しさを誇るから。
だけど、一つだけ忠告――命の保障は無い。
覚悟があるなら一度はご来店お待ちしています。
・・・
喫茶店の朝は早い。
日が出る時に店を開け、日が沈む時に閉める。
喫茶店から一人の男性が出て来て、扉に掛けられている木の表示板を[閉店]から[開店]に変える。
「さて、開店だ!」
そう言って店内に戻っていった。
この喫茶店は客足が余り多くない。が、それを補うくらいの個性豊かな人物がご来店する。
だが、それは人とは限らない。
「話し聞いてかい?」
「聞いてますよ」
そう答える店長。
店長が話している人物は、紅い角が生えている鬼という存在だ。
鬼――この国、日本で童話の中に存在する巨大で角を生やした者。
しかし、実際には人間となんら変わりの無い姿だが、唯一違う部位があるとすれば頭に生えている角ぐらいだ。
角の色によって位が変わり、紅い角が上。蒼い角が中。碧が下の位付けだ。
「最近の若者は弱い。酒を十合飲んだだけで倒れるんだから」
「そうですか……では、注文は」
鬼の愚痴を聞いてるが、彼女は約一時間ぐらい居座っている。店長は、流石に何か注文してくれ、と思い聞く。
「注文かい。だけど、私無一文なんだが……」
「ここは、商売をするために開いてるわけでありません。ただ、注文しないと、この店の意義がなくなってしまうんですよ」
この店の意義。それは、この店を出る時には笑顔で帰ってもらいたい。
だから、ここは金が無くても良い。
「なら、日本酒を頼むかな」
「一升瓶ですか? それとも一杯ですか?」
「そんなの決まってるじゃないか」
鬼はニャッと笑うと「一升瓶さ」と、言う。
「かしこまりました。少々、お待ちください」
そう言って店長は店の奥に向って行った。
「いやーこの『夢現』って名の酒、美味いな」
酒のつまみである、焼き鳥を頬張る。その後、一升瓶をラッパ飲みをする。一升瓶の中身はいっきに半分以上無くなった。
「いやー、ここは居酒屋みたいだよ」
「喫茶店(仮)に変えようかね……」
「まあ、そう言わずに。アンタも飲みな」
喫茶店内で食器に位置を完全把握したように迷わずコップが置いてある棚に向った。コップを取り出しテーブルに戻る。
「はいよ」
トクトクとコップに透明の液体が注ぎ込まれる。コップギリギリにまで入れた。
「どうもです」
酒の入ったコップを貰う。
「従業員もいなくて、店長は酒を飲む。今日は店じまいかい?」
「大丈夫ですよ。客人は余り来ませんし。あと、簡単に酔う事はないですから」
「それは、私に対しての挑戦状かい?」
「さあ、どうでしょう。どう取るかは貴女次第ですしね」
両者は不適に笑う。そして、鬼は店長を指差し「勝負だよ」と、宣言する。
「良いでしょう。本気を見せて差し上げましょう!」
売り言葉に買い言葉。二人の飲み比べ対決が始まった。
辺りに一升瓶が何個も転がり、両者は限界を達してる。
「アンタ本当に人間なのかい……」
そう告げると、机に倒れ伏せる。
「……」
店長も無言で机に突っ伏す。
この勝負は、引き分けに終わった。
・・・
「気持ちが悪いですね」
酒の飲みすぎで気分を悪くした。店長は後悔していた。何故あんな勝負をしたのか、と。
「酒……持って来い……」
まだ飲むんですか? そう思いながら鬼を見ると、気持ちよさそうに寝ていた。さっきのは寝言だった。
それを眺めながら、やっぱ良かったですね。あの、勝負も。
「それにしても、年頃の娘がね……」
鬼は角と同様の紅い絹のワンピースを着ているが、衣類がはだけ素肌を覗かせる。
これが、グラマー美人なら店長も唾を飲み込むが、発達途上の身体に欲情はしない。
「これで良いでしょう」
店長は紺色の上着を脱ぎ、鬼に掛ける。そして、角と同色の髪の毛を撫でる。
「確か、この鬼の名は……紅鬼だったか」
この鬼の名を呟く。すると、紅鬼は「う……うん……」と、頷く。
「起きたか?」
そう思うが、その後規則正しい寝息が聞え始めた。店長は気のせいか、と済まし水を取りに行った。
「危ない、危ない」
店長が水を取りに行った後、紅鬼は顔を上げた。それと、同時にパサリと紺の上着が落ちる。
「あの店長はヘタレかい。はぁ、私が誘っているのに……」
溜息を吐き、顔を下に向けた。その時、紅鬼は「はっ! まさか!」と、何かに気づく。
「私の体型が行けないのかい!」
自分の体型を見ると、一直線に地面が見れる。遮るものは何も無い。
「ウガァー!」
自分で自爆した紅鬼。八つ当たりで机を真っ二つに叩き折る。
鬼は身体が小さい程、強大な力を発揮できる。位が上位な程、サッパリとした体型になっていく。
「な、なんですか!」
物凄い音に急いで戻ってきた。其処には、見るも無惨な姿になった机があった。
「大丈夫ですか!?」
その机の近くにいる紅鬼の怪我が無いか調べる。
「だ、大丈夫。鬼を甘く見ては困るよ」
「そうですね。次はこの机を直さないといけませんね」
机の方を向くと、片手を付き出して呪文を唱えた。
「時を戻し、過去の姿の治せ、ガ・ダリア・バル」
すると、机の周りに白と黒の円が囲い。次の時には元の状態に戻っていた。
「これで良し」
「…………」
紅鬼は唖然としていた。
店長は謎深い男だ。聞いてもはぐらされてしまう。自らの過去を語ろうとしない。
「おっと、そろそろ店仕舞いですね」
外は夕暮、後少しで日が沈み掛けている。
店長の喫茶店の方針、日の出に開き日の入りに閉める。
「なんだい、もうお開きかい?」
「そうです」
紅鬼が店を出た。
「また来るよ!」
紅鬼は満面の笑みで手を振った。それに店長は、クスッと笑い「またのご来店お待ちしています」と、お辞儀をした。
その後、紅鬼が見えなくなるまで眺め、店長は木の表示板を[閉店]に変え店内に戻って行った。
「くっ……!」
店長は店内に戻ると、突然頭を押えた。
痛い、痛い、また――。
「グッ、クゥウガァア!」
頭の痛みはドンドン酷くなり、頭を抱え悲痛な声を上げる。
また、また、また――。
「――――ッ!!」
痛みで声が出ない。
また、名の記憶を奪う!
その思考を最後に痛みで地面に倒れた。
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