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白の魔法少女 ―届いたのは「白い封筒(不合格)」。それでも私は、血塗られた戦場に立つ―  作者: 流瑠々


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第70話 最終防衛戦


ゴゴゴゴゴゴゴ……ガコンッ!!



重厚な金属音と共に、


ユナイトアークの正面ゲートが完全に開放された。


長年閉ざされていた闇の要塞に、荒野の朝陽が鮮烈に差し込む。



その逆光の中。 待ち構えていた本隊が、雪崩れ込んだ。



「総員、突撃ィィィッ!!」



ギルベルトの号令が轟く。


だが、先頭を駆けるしずくの目は、敵を見てはいなかった。


誰よりも速く、ゲート脇の機関室へと滑り込んだ。



「ソラちゃん!!」



そこは、血の海だった。 破壊された制御盤の下、


小柄な体が力なく横たわっている。


左腕は無惨に砕かれ、腹部も赤く染まっていた。



「……ぁ……」



しずくが抱き起こすと、ソラの瞳がうっすらと開いた。



「しずく……ちゃ……」



「喋らないで! 今、治すから!」



しずくの手が震える。涙で視界が歪む。


「……でき……た……」


ソラは、しずくの顔を見て、安堵したようにふにゃりと笑った。



「……やくに……たった、かな……」



「うん……!ソラちゃんのおかげだよ……ッ!」


「よかった……」


アヤメとミカが到着した。


「ソラ!!」



変わり果てた親友の姿に、ミカがその場に崩れ落ちる。


アヤメも口元を押さえ、悲痛な声を漏らした。


彼女が一人で、どれほどの恐怖と痛みに耐えたのか、その傷が全てを物語っていた。



「……よくやった。道は、開かれたぞ」



重々しい声と共に、ギルベルトが歩み寄る。



ソラの頭を大きく武骨な手で一度だけ撫でると、



すぐに背後の医療班へ指示を飛ばした。



「最優先で治療だ!絶対に死なせるな!」



「はいッ!!」



医療班がソラを担架に乗せ、後方へと搬送していく。


しずくはその背中を見送り、涙を拭って立ち上がった。



悲しんでいる暇はない。彼女が命を削ってこじ開けたこの道を、


無駄にするわけにはいかないのだ。



しずくは親友の手を離し、涙を拭って立ち上がった。



悲しんでいる暇はない。



彼女が命を削ってこじ開けたこの道を、無駄にするわけにはいかないのだ。


「グルアアアアアッ!!」



広間に残っていたマガツの群れが、新たな侵入者に向かって殺到する。



だが、今の彼女たちに慈悲はない。



「どけええええええ!!」



リサが大剣を旋回させ、三体のマガツをまとめて両断する。



カレンとエレナも続き、魔法と弓矢の雨を降らせる。




「ソラをあんな目に遭わせて……タダで済むと思うなよッ!!」


怒れる魔法少女たちの猛攻は凄まじく、



エントランスを埋め尽くしていたマガツは瞬く間に肉塊へと変えられていった。



その戦闘の最中。


地下から合流したアヤメとミカは、


武器庫から、あるものを回収していた。


「あった……!」


ミカが手に取ったのは、エクリプス専用対マガツ用装備。


そしてアヤメは、対魔素材でコーティングされた漆黒の短刀と、


特殊拳銃を装備する。


「これだよ、これ!」


ミカがジャキッ! とボルトを引く。


今まで対人用の貧弱な装備で逃げ回るしかなかった彼女たちが、


本来の牙を取り戻したのだ。


「装備チェック完了。……行けます」


アヤメが冷徹な目で安全装置を外す。


全身を最新鋭の対マガツ装備で固めたエクリプス隊が、


ギルベルトとしずくの元へ並び立った。


「エリア制圧完了! 敵影なし!」



フレデリカの報告が響く。 正面エントランスの安全は確保された。


負傷者は後方へ送り、戦える者たちは武器を構え直す。



ギルベルトが全員を見渡し、力強く頷いた。



「よし。……ここからが本当の戦いだ」



最強の布陣が整った。 反撃の狼煙は上がったのだ。



ユナイトアーク「生命の間」。



厚い扉が開け放たれ、セラフィナが聖域へと足を踏み入れた。


その中央には、青白く脈動する巨大な結晶体――要塞の動力源にして、


人類を守る結界のコアが鎮座している。



「セラフィナ様。お待ちしておりました」



先に到着していたエリスが、恭しく頭を下げる。



「ああ……なんて美しいの」



セラフィナはうっとりと瞳を細め、核へと歩み寄る。



「これが『生命の間』の純粋魔素……。  

素晴らしいわ。ここには世界を書き換えるほどの力が満ちている」



彼女はゆっくりと手をかざした。



「さあ、私の元へ来なさい」


ズズズズズ……ッ!!



空間が震える。 巨大な結晶から青い光の奔流が溢れ出し、


セラフィナの体へと吸い込まれていく。


彼女の肌が内側から輝き出し、背中に光の翼のようなオーラが噴出した。


「フフッ……アハハハハハッ!!」



高笑いが反響する。


圧倒的な全能感。 肉体が作り変えられ、人を超えた存在へと昇華していく。


「力がみなぎる……。これで私は完成した」


セラフィナは握り拳を見つめ、恍惚の表情で告げた。



「障壁などもう不要よ。私が法であり、世界なのだから。

 ……さあ、愚かな人類ども。神の裁きを受けなさい」



パリンッ……。



その瞬間、何かが見えない場所で砕け散る音がした。





同時刻。ユナイトアークの外。 荒涼とした灰色の荒野。




障壁を覆っていた対魔障壁が、ガラス細工のように粉々に砕け散り、


光の粒子となって消滅した。


「グルルル……?」


荒野を徘徊していた野生のマガツたちが、一斉に足を止める。


それまで彼らを拒絶していた壁が消え、


中から濃厚な餌の匂いが漂ってきたのだ。



「ヴォオオオオオオッ!!」



数千、数万の群れが、雪崩を打ってユナイトアークへ走り出した。



さらに、荒野の彼方。 かつて旧時代の遺物として打ち捨てられた、


廃原子力発電所跡地。



ドォォォォォォォン!!



爆発音と共に、コンクリートのドームが内側から吹き飛んだ。


黒煙の中から、山のように巨大な影が立ち上がる。


放射能と高濃度魔素を食らい続け、長い時をかけて変異した、悪夢の化身。




 ヴオオオオオオオオオオオオオオオ!!




大気を震わせる咆哮と共に、超大型マガツが動き出した。


その進路もまた、光を失った要塞へと向けられていた。




ユナイトアーク、正面エントランス。



「掃討完了! エリア内のマガツ、全滅させました!」


「中央軍の生存者、なし! 全員食い殺されています!」



報告が飛び交う。 激戦の末、しずくたち本隊は入り口周辺を完全に制圧していた。


最新装備を手に入れたエクリプス隊と、魔法少女たちの連携の勝利だ。



「よし。では、次の指示を――」



ギルベルトが口を開きかけた、その時だった。



ズズズズズ……ッ!



足元から突き上げるような、不気味な揺れが襲った。


爆発ではない。空間のバランスが崩れたような浮遊感。



「な、なんだ!?」


「地震……?」


「伝令ッ!!」



屋上で監視していたエレナの隊が、顔色を変えて飛び込んできた。



彼女の声は、かつてないほど焦っていた。


エレナに耳打ちをする。


エレナの表情が変わる。



「ギルベルト! 大変よ!  ユナイトアークの障壁結界が……消えたわ!」



「なにッ!?」



ギルベルトの表情が凍りつく。


結界の維持は、生命の間の核と、それを守る管理者の役目だ。


それが消えたということは――。


「ガレス……。」


ギルベルトが苦渋の表情で拳を握りしめる。



「それだけじゃないわ!  

結界消失に反応して、外の荒野から大量のマガツが向かってきている!」



「数は!?」



「千を超えるわ!」



「……ッ!」



場に戦慄が走る。 内部を制圧したと思ったら、


今度は外から世界ごとの飲み込む津波が押し寄せてくる。


このままでは、障壁ごと押し潰される。


ギルベルトは瞬時に迷いを捨て、顔を上げた。


その瞳に宿るのは、指揮官としての冷徹な覚悟。



「聞けェッ!! 状況は最悪だ、だが絶望している暇はない!」


彼女の怒号が、少女たちの背筋を正す。



「敵は二方向! これより隊を2つに分け、迎撃および元凶を断つ!」



ギルベルトが指を突き立てる。



「第一部隊! 私とミラ、フレデリカ、アイリス!  

我々は障壁を死守し、外からのマガツの大群を食い止める!

 一匹たりとも中に入れるな!」



「第二部隊! リサ、エレナ、しずく、カレン! 

生命の間へ走れ! 奪われた核を取り戻し、

全ての元凶……セラフィナを討て!!」



「了解ッ!!!」



少女たちの返事が轟く。 それぞれの使命を背負い、決戦の火蓋が切られた。



ユナイトアーク、正面防衛壁。



「魔力充填率120%。砲身冷却確認」


「迎撃システム、起動。……全弾装填よし」



城壁の上には、張り詰めた緊張感が漂っていた。



フレデリカ率いる氷冠騎士団フロストクラウン


アイリス率いる蒼炎拳団ブルーフレア


リサの隊の紅刀隊クリムゾンブレイド


エレナの隊の翠弓結社ヴェルデントアロー



そして、重機関銃や対魔砲が、整然と配置についている。



「……風が出てきたわね」



城壁の最前列に立ったミラが、吹き荒れる荒野の砂塵に目を細めた。


結界がなくなったことで、死の世界の空気が肌を直接刺してくる。



「死を運ぶ風か」



隣に立ったギルベルトが、静かに呟く。


彼女は腕を組み、彫像のように微動だにせず地平線を見据えていた。


その立ち姿は、まさに指揮官と呼ぶにふさわしい威厳に満ちている。



ズズズズズズズ……。


地鳴りが大きくなっていく。 大地そのものが悲鳴を上げるような震動。



「……来るぞ。総員、構え」



ギルベルトの低い声が、全員に届く。



地平線の向こう。舞い上がる砂煙が、巨大な壁となって迫ってくる。


その中から無数の赤い光が灯った。



一つ、二つではない。 千、万、いや――。


「嘘……でしょ……」


エクリプスの一人が、双眼鏡を持つ手を震わせた。



地平線を埋め尽くす、黒い奔流。


視界の端から端まで、すべてがマガツだった。


ありとあらゆる異形が、腐敗した泥流のように押し寄せてくる。



「あんな数……どうやって止めろと言うんだ……」


「終わりだ……ユナイトアークごと飲み込まれる……」


「勝てるわけがないわ……」



兵士たちの間に、さざ波のように動揺が走る。


圧倒的な死。


列が乱れ、後ずさりする者が現れ始めた。


武器を取り落とす音すら聞こえる。



その絶望的な空気を切り裂いたのは、鋼のように重く、腹の底に響く声だった。


「――狼狽うろたえるなッ!!」



ギルベルトだ。



彼女はゆっくりと振り返り、怯える兵士たち一人ひとりの顔を見つめた。


「……顔を上げろ。」


その声は叱責ではない。



深い悲しみを抱え、それでも前を見る者の声だった。




「ここまで来る間に――何人が倒れた?」



兵士たちの表情が強ばる。



仲間の顔が脳裏に浮かぶ。



ギルベルトは静かに続けた。



「名を呼べば、今でも返事をしそうな奴らだ。

 笑って、怒って、泣いて……

 最後の瞬間まで、誰一人として逃げなかった。」



彼女銃を胸に抱くように立てた。それは黙祷に近い仕草だった。



「奴らは、死ぬために戦ったんじゃない。

 生き残る私たちに、未来を託すために死んだんだ。

 その重さを、忘れるな。」



兵士の目に涙が滲む。



ギルベルトは歩みを進め、最前列に立った兵士の肩へ手を置く。



「怖くていい。震えていい。

 ……私だって同じだ。」



その言葉に、何人もの兵士が息を呑んだ。


「だが――立ち止まるな。

 あの日倒れた仲間たちは、今も私たちの背中を押している。」


ギルベルトは前を向き、叫んだ。



「逃げれば、あいつらの死は無駄になる!

 それでいいのか!」


兵士の胸に響く。


「行くぞ。

 ここを守ることが――彼らに応える唯一の道だ。

 倒れた者たちの分まで、戦ってみせろ!」


兵士たちの瞳から怯えの色が消え、確かな火が宿る。



悲しみを力へと変えた叫びが、隊列を震わせる。


ギルベルトは最後に、静かに、しかし力強く告げた。



「――さあ、続け。

 死んだ仲間の未来を、ここから先につなぐんだ。」



「「「おおおおおおおおおッッ!!!」」」



障壁に響くその声は、もう恐怖ではなかった。



継がれた意志の音だった。




兵士たちの迷いが吹き飛ぶ。 恐怖が、使命感という名の狂熱へと変わった。



全員が武器を握り直し、死地へと身を乗り出す。



敵の先頭集団が、射程距離ギリギリに飛び込んでくる。




地面を埋め尽くす黒い悪意。



ギルベルトはゆっくりと右手を掲げ、そして――振り下ろした。




「総員、戦闘開始ッ!!  撃てェェェェェェェッ!!!!」



号令と共に、城壁に並んだ数百の魔導砲と銃火器が一斉に火を噴いた。



閃光が荒野を焼き、着弾地点で爆炎の花が咲き乱れる。



人類とマガツ。 存亡をかけた、最終防衛戦の幕が切って落とされた。

ここまで読んでいただきありがとうございます。


流瑠々と申します。


もし「続きが気になる」と思っていただけましたら、


ブックマークや評価で応援していただけると、がんばれます。


次回 総力戦 お願いします。


流瑠々でした。

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