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白の魔法少女 ―届いたのは「白い封筒(不合格)」。それでも私は、血塗られた戦場に立つ―  作者: 流瑠々


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第47話 決意の夜

しずくとカレンが、導かれるように辿り着いたのは――



イザベラの部屋だった。



しずくがそっと扉に手をかけ、



静かに押し開くと――



その部屋には、



すでにナンバーズの面々が勢揃いしていた。



リサ、エレナ、クラウディア、ギルベルト、ライラ、そしてミラ――



まるで、何かを待っていたかのように。



先ほどのコウモリが、



ミラの周囲をくるくると旋回し、やがて――



「ご苦労様」



ミラの指先へと吸い込まれるようにして、



音もなく消えていった。



「こ、これは……いったい……」



カレンが思わず声を漏らす。



「まあ、カレンも来たのね」



エレナがカレンを見やる。



「これで、そろったな」



リサが一歩進み出て、場を見渡す。



「……あれ? セラフィナとエリスは?」



ライラの問いに、クラウディアが淡々と答えた。



「セラフィナ様は、管理局総監としてユナイトアークを離れた。

町の中央部へ状況説明に向かって、エリスも同行している。」



「ふん……」



ギルベルトが眉をひそめた。




「それで、ミラ。こんな時に何の用だ? 

この面々を、こんな場所にまで呼び出すとは……」



しずくは、ミラを見つめながら言った。



「……ミラさん、もしかして」



ミラは瞳を伏せ、静かに頷いた。



「えぇ。もう、話すしかないわね」



その声には、これまでにない深い決意が宿っていた。


そして――



ミラは、語り始めた。



しずくと共に出たあの日の出来事。


街に現れたマガツが、「助けて」と声を発したこと。


捕らえたヘーゲル卿がマガツについて口を割ろうとした後、


何者かによって口封じ同然に殺されたこと。


そして――


内部に裏切り者がいる可能性。



それが導いた、イザベラの死。



言葉が、影のように静かに部屋を満たしていく。



やがて語り終えたとき――



ナンバーズの表情は、


驚愕と困惑と怒りに、三者三様、染まっていた。



「そんなことが……」



リサが唇を噛む。



「……イザベラさんも、そいつに……?」


エレナが眉を寄せたまま呟いた。



「なるほど……」


クラウディアは沈黙のまま、目を閉じる。



「ちょ、ちょっと待ってよ! そんなの、この場で言うことじゃないでしょ!?」



ライラが手を広げて叫ぶ。


「やっぱりこの中に……裏切り者がいるってこと!? うちらの中に!?」



ギルベルトが、重い口を開いた。


「……敵がイザベラを殺害するという大胆な行動に出た以上、

もう晒してしまった方が、早いとミラは判断したのだろう。

……賢明な判断だ」



カレンは視線を伏せ、そっと胸元に手を置いた。



「イザベラ様……」



部屋を満たす沈黙は、


今やただの静けさではなかった。



信じていた何かが、



音もなく崩れたような気配があった。



「……セラフィナには、伝えたのか?」


リサが静かに口を開く。

その声には、抑えきれない焦りが滲んでいた。


「まだよ」

ミラが首を振る。



「ガレスには伝えたわ。……彼女は、なおさら生命の間を守る必要があるって言って、ここには来なかった」


「……そうか」



ライラが机の方をちらりと見ながら、小さく呟いた。


「でもさ、これからどうするの? イザベラの机とか、色々見たけど……

手がかりになりそうなのは、何もなかったって……」


「ああ、なかった」

ギルベルトが腕を組み、短く答える。


「ポケットにあったUSBも、粉々になっていた。復元は……不可能だった」


「……ミラ、私たち、もう……お手上げなの?」


エレナの声が、わずかに震えていた。



ミラは……黙っていた。

ただ、その真紅の瞳が、部屋の一点をじっと見つめていた。



しずくは、悔しさに唇を噛み、下を向く。

その瞬間――



「……!」



右目の義眼が、かすかに光を帯びた。

視界の隅に、ごく淡い魔素が――ナンバーズのそれではない、異なる色が漂っていた。


「ちょ、ちょっと待ってください」


しずくが、咄嗟に顔を上げる。


「どうした、しずく」


リサが即座に反応する。


しずくは、目の動きに導かれるままに、部屋の隅へと足を向けた。


「……この辺です。観葉植物の方……」


ずん、と心音が高鳴る。

しずくはひざをつき、土にそっと手を差し入れた。


「急に……土遊びか?」


クラウディアの皮肉にも、誰も笑わなかった。


――そして。


しずくが掘り出した小さな箱状の物体。


それは、明らかにUSBだった


「……ありました!」




「そ、それは……!」


カレンが目を見開く。


「間違いない」


ギルベルトが慎重にそれを受け取り、


手袋越しに確認する。


「イザベラが……残したものだ」


「でも、壊されてたんじゃ……?」


ライラの声に、ギルベルトはかすかに口角を上げた。


「――用心深いイザベラのことだ。気づかれたことを察して、ダミーとすり替えたんだろうな。これは……本物だ」


「……しずくちゃん、ありがとう」


エレナがそっと微笑み、しずくの肩に手を置いた。


「さあ。中を、見てみましょう」


ギルベルトの手の中で、


しずくが見つけたUSBが静かに光を放つ。


「……ここで開くしかないな」



ギルベルトが静かに立ち上がり、


慎重にUSBを差し込む。



数秒の静寂ののち、


端末の画面にひとつのフォルダが現れた。



誰もが息を呑む中――



ギルベルトの指が、そのフォルダをクリックする。



画面が切り替わり、


何枚もの画像と映像ファイルが並んだ。



資料。記録。証拠。



その全てが――



「……っ、これ……!」



リサが目を見開いた。



「これ、本当なの……?」



ライラの声が震える。



「……ありえない」



クラウディアが、いつになく表情を失っていた。



エレナは言葉を失い、


ただモニターを見つめ続けている。



ミラだけが、目を閉じ、


静かに拳を握り締めていた。



「こんなことが……あって、いいはずが……」



しずくは胸の奥がざわつくのを感じながら、


画面を見つめた。



見知らぬ風景。聞き覚えのある声。奇妙な魔素反応の記録。



(……嘘。こんなの……)



だが、疑う余地などなかった。



イザベラが命を賭して残した――真実なのだから。



しずくは、そっと拳を握る。



「……確かめに行きましょう」



その言葉に、全員がしずくを振り返った。



部屋の空気が変わる。



――決意の夜が、始まる。




ここまで読んでいただきありがとうございます




流瑠々と申します。



もし「続きが気になる」と思っていただけましたら、



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次回 真実 お願いします

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