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白の魔法少女 ―届いたのは「白い封筒(不合格)」。それでも私は、血塗られた戦場に立つ―  作者: 流瑠々


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第38話 総統ゼノン・レイブン

「……以上をもちまして、ユナイトアーク・レセプションを開会といたします」



壇上から響いたのは、



魔法少女管理局・総監である イザベラ・クロムウェルの堂々たるスピーチだった。



会場には大きな拍手が巻き起こる。



しずくは会場の隅で胸にそっと手を当て、小さく呼吸を整えた。



(……終わった。アンナちゃんが用意してくれた台本通りに、


なんとかスピーチも進んだし……)



式の進行、挨拶回り、スピーチ――すべてが初めての経験だったが、


アンナの支えがあった。



「ふぅ――疲れた……。」



思わず呟いて、しずくは壁にもたれかかる。



式はそのまま立食形式の会食タイムへと移った。



グラスの音、歓談の声、料理の香りが次々に空間へ溶け込んでいく。



華やかな会場の中で、しずくはそっと息をついた。



「お疲れ様、大丈夫?」



背後から柔らかな声が聞こえ、



顔を上げると――すぐ隣にイザベラが立っていた。



「あっ……お疲れ様です。ありがとうございます。なんとか……大丈夫です」



しずくはグラスを両手で抱え、震えた声で応える。



「息苦しいだろうけど、頼むわね。これもナンバーズの役割だから」



その言葉は静かで、だが確かな重みを帯びていた。



その後、声を落とし――



「それと、ガレスから聞いたわよ。――“生命の間”を見たそうね。」



「……す、すみません……私なんかが……」



しずくは頭を下げそうになったが、イザベラはふっと微笑んだ。



「いいのよ。ガレスが自分の判断で許可したのなら。」



しずくは顔をあげ、改めてイザベラを見た。




「あの子が……誰にも許可を出さなかったガレスが、あなたにだけは見せたのね」



その言葉を添え、小さく目を細める。



「もう、あなたは立派なナンバーズだわ。これからも頼りにしてるからね」



「はい……!」



しずくの返事は思わず大きくなった。だがその直後――



イザベラの表情は一変した。



「――来たわ。失礼のないように。」



その言葉に、しずくは無意識に背筋を伸ばした。



イザベラが視線を向けた先。



護衛を数名従えた一人の人物が、こちらへゆっくりと歩み寄ってくる。




その姿に、しずくの心臓が跳ねた。



(あの人は――)




耳の奥で、アンナの声が蘇る。




「いいですか、しずくさん! 絶対に覚えてほしい人がいます。


我がユナイトアークのトップ、総統ゼノン・レイブン様です!


ぜーったい失礼のないようにお願いします!!」



その言葉の意味が――今、この瞬間に、目の前に現れていた。




身に纏うのは深い紺灰色の礼装軍服。金色の刺繍が肩から胸元を飾り、



赤いタイと白いシャツのコントラストが格式を際立たせている。



オールバックに撫で付けられた灰黒の髪。鋭い顎のライン。



隙のない姿勢。全てが計算されたように洗練されていた。



軽やかな足取りに迷いはなく、



口元には穏やかな笑みを浮かべている――が。



その瞳だけは違っていた。



まるで全てを見透かすかのような、冷たく、鋭い光を宿している。



しずくの背筋には、はっきりと冷たいものが走った。



(……この人が……ユナイトアークの頂点……)



整った口調、洗練された身振り。



(緊張する……、失礼は絶対に、できない)



しずくは自然と姿勢を正し、息を整えた。



ゼノン・レイブンは歩みを止め、



しずくの前に立った。



そして――やわらかく笑みを浮かべ、丁寧に頭を下げた。




「やあ、はじめまして。


 わたくし、ユナイトアーク総統のゼノン・レイブンと申します」



その表情は丁寧で、まるで旧知の人間に接するかのように微笑んでいる。



「お会いできて光栄ですよ、真壁しずくさん――でしたね?」



その声は低く穏やかで、まるで緊張をほぐすかのように優しかった。


さっきまで感じていた威圧感が、嘘だったかのように思えるほどだ。



しずくは一瞬戸惑いながらも、慌てて頭を下げた。



「……真壁しずくです。はじめまして。お会いできて、光栄です」



ゼノンはやわらかく微笑んだまま、しずくの顔をじっと見つめる。




「あなたのご活躍、報告で目にしましたよ。


とても頼もしく、そして勇敢な方だと。


 ……イザベラ総監の指導のたまものですね」




その言葉に、すぐ隣にいたイザベラが一歩進み出て、軽く会釈する。




「――過分な評価をいただき、恐縮です。


 真壁は吸収も早く、責任感もある。期待に応えられる器です」



ゼノンはその答えに軽く頷き、わずかに目を細める。



「……ふむ。なるほど。君がそう言うのなら、なおさら信頼できそうだ」



イザベラは静かに一礼する。


その動作は凛としていて、威厳すら感じさせた。



その時――


ゼノンの背後にいた護衛の一人が一歩前に出て、静かに耳打ちした。



「総統、次の予定が迫っております」



ゼノンは微かに頷き、再びしずくに向き直る。



「この世界を守る者として、あなたのような若き力が必要なのです。


 どうかこれからも、ユナイトアークを、そして、人類の未来を支えてくださいね」



「これからも――よろしくお願いしますよ、真壁しずくさん」



そして、すっと手を差し出す。



しずくも一瞬の躊躇の後、真っ直ぐにその手を握り返した。



「はい。よろしくお願いいたします」



握手は短く、しかし確かな重みがあった。



ゼノンはそのまま姿勢を正し、再び敬礼のように軽く頭を下げる。



「では――失礼いたします」



背を向け、護衛たちと共に静かにその場を離れていくゼノン・レイブン。



その後ろ姿は優雅で、どこか芝居がかった所作ですらあった。








ここまで読んでいただきありがとうございます



流瑠々と申します。



もし「続きが気になる」と思っていただけましたら、



ブックマークや評価で応援していただけると、がんばれます。



次回 裏切者 お願いします

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