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白の魔法少女 ―届いたのは「白い封筒(不合格)」。それでも私は、血塗られた戦場に立つ―  作者: 流瑠々


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第21話 黒き継承者(ブラック・ヘリテージ)

部隊の集合地点。


しずくとアヤメが並んで歩いて到着すると、


すでにミカとソラが列に立っていた。




「しずくちゃーん! やっほー!」


ミカが手を振り、元気よく声をかける。


「おはよう、ミカちゃん」


しずくも小さく手を振り返す。



ソラは微笑みながら首を傾げた。


「めずらしいね、しずくさんが遅れるなんて」


「え、わ、私……そんなに遅かった?」


しずくが慌てて首を振ると、


アヤメが横で淡々と口を添えた。


「大丈夫です。ぎりぎり間に合っていますから」


和やかな空気が広がる――


が、列の前方から「ゴホン」と咳ばらいが響いた。


先輩の魔法少女が姿勢を正しており、


それを合図に場の空気が一変する。


ざわめきはすぐに止み、

全員がぴんと背筋を伸ばした。


直後、号令が響く。


「総監がお出ましだ――全員、整列!」


重い金属扉が軋みを上げて開く。


現れたのは、


黒衣に身を包んだ魔法少女管理局総監―― 


イザベラ・クロムウェル。



その背後には、十星たちの影が続いていた。



「――全員、よく聞きなさい」


冷徹な声が広間を支配する。



集った魔法少女、エクリプスたちの視線が一斉に壇上へと注がれた。



「数日後より、マガツ側領域への掃討戦を開始する。


我々人類は、ただ防御に追われているだけでは勝てない。

 “勝利を掴む力”を、今ここで証明しなければならない。

 ――今回の任務は、人類の威信を賭けた大規模作戦である」


イザベラは表情ひとつ変えず、


手にした書簡を掲げる。



「――ナンバーズは以下の通り、前線に配置する」


その鋭い視線が、点呼するように宙を走った。


「№2、リサ・ヴァレンタイン。

 №5、ギルベルト・シュトラール。

 №7、ライラ・ブレイズ。

 №10、カレン・シュナイダー。


 この四名を軸とし、各小隊を分散配置する」


重苦しい空気が広間を満たし、


誰もが息を呑んでいた。


イザベラは一言「以上」と告げると、踵を返し、



十星たちを伴って広間を後にする。


「解散!」


号令が飛び、


規律正しく整列していた部隊が一斉に動き出した。


――ざわめきが再び広がる。



「……ついに来たね、掃討戦!」



ミカが声を弾ませる。



「……数年に一度、ユナイトアークはマガツ領域へ侵入します」



アヤメが冷静に補足した。



「障壁に近づいたマガツを掃討し、同時に旧領域を調査する。それが今回の作戦です。


 もちろん――マガツ領域に入る以上、危険は避けられません。

 過去と比較しても、最も危険な任務となるでしょう」


その言葉に、一瞬沈黙が落ちる。



だがソラがぎゅっと拳を握り、しずくを見上げて言った。


「しずくちゃん。私、前みたいなことは絶対にしないから! 今度は任せてね」


「ソラちゃん……」


しずくは胸の奥が温かくなるのを感じ、力強く頷いた。

「大丈夫。私もしっかり、みんなを守るから」


その直後、ミカが元気よく声を張り上げる。



「あー! それ私のセリフ! みんなを守るのはわたしの役目でしょ!」


「ふふ……」



しずくも思わず笑ってしまう。



アヤメは姿勢を正し、穏やかに告げた。

「ええ、どちらにしても――私たちは“みんなで”頑張りましょう」



四人は互いに視線を交わし、小さく頷いた。



「――《紅刃隊クリムゾン・ブレイド》、集合!」


リサのよく通る声が広間に響き渡る。


整列した隊員たちの視線が一斉に彼女へ注がれた。


「聞いた通りだ。今回は掃討戦だ。

 俺たちは俺たちの持ち場を進行し、目に映るマガツをすべてぶっ飛ばしていく。

 ……油断せずに任務を遂行するぞ!」


場の空気が引き締まる。


その横で、アヤメがそっとしずくに囁いた。

「……しずく様、隣をご覧ください」


しずくが視線を巡らせると、


そこでは№5――ギルベルト・シュトラール

【コードネーム:鋼鉄の軍律アイアン・コマンダー】が、


自身の隊へ檄を飛ばしていた。


濃紺の将校服に身を包み、

背筋を一糸乱さずに伸ばし、冷鋭な声で部下を射抜く。


「任務は単純明快だ。

 命令通りに進み、規定通りに撃ち、規律通りに生還する。

 一人の勝手が全滅を招く。忘れるな」


その声は感情を抑えた低音だが、一言ごとに重みがあった。


軍靴の踵が床を叩くと、整列した兵士たちは一斉に姿勢を正す。


ギルベルトの言葉が途切れた瞬間――。


部下たちは無言のまま、完璧に揃った動作で敬礼をした。


声ひとつなく、ただ冷徹な規律だけがそこにあった。

その光景は、不気味なほどに整然としていた。


(すごい……これが、№5ギルベルトさんの隊……)

しずくは息を呑み、その規律の厳しさに背筋を震わせた。


――その緊張を吹き飛ばすように、奥から豪快な笑い声が響いた。


「はははっ! そんなに固くならなくても大丈夫だよ!」


声の主は、鮮やかな青髪を刈り上げ、火傷痕の残る腕を組んだ女。


肩を露出した革鎧に煤けたマントを羽織り、


その拳には青い炎がほのかに揺れている。


【№7 ライラ・ブレイズ】

【コードネーム:蒼炎のブルー・インファーナル


ライラの小隊は仲間たちと肩をぶつけ合い、笑いながら言葉を交わしていた。


まるで友達同士のように、和気あいあいとした雰囲気だ。


(ほんとに……隊によって、こんなに違うんだ……)


しずくはぽつりと呟いた。


「おい、しずく!」


鋭い声が飛ぶ。リサだった。


「お前、話を聞いてるのか!」


「は、はいっ! 申し訳ありません!」


背筋を伸ばして慌てて答える。


リサは呆れたように腕を組んだ。


「ったく……。お前も自分の小隊で作戦会議を行え!」


「わ、わかりました!」


しずくは慌てて駆け出そうとする。


どんっ――。


その瞬間、誰かにぶつかり、尻もちをついた。


「しずく様、大丈夫ですか!」

アヤメが慌てて手を差し伸べる。


「いてて……」

顔を上げたしずくの視線の先――。


そこに立っていたのは、№10の魔法少女。


【カレン・シュナイダー】だった。


漆黒のマントが揺れた。


【№10 カレン・シュナイダー】

【コードネーム:黒き継承者ブラック・ヘリテージ


「……邪魔よ、白封筒。」


しずくは慌てて立ち上がり、深く頭を下げた。



「ご、ごめんなさい……! わたし――」



 唇が震え、それでも言葉を続ける。



 冷たい一言を残し、カレンは踵を返して歩み去ろうとする。


「……あの!」


 しずくは思わず声を張り上げていた。

 その背がぴたりと止まる。


 カレンが舌打ちをして振り向いた。


「……何だ。」


 しずくは喉を鳴らし、震える声で続けた。



「その……カレンさんに、ずっと謝らないとって……。

 その、セレスさんのこと……」


 その瞬間。カレンの表情が変わった。



「――軽々しく、貴様が“セレス様”の名を口にするな!」



 刃のような声が、しずくの言葉を叩き斬った。

 周囲の空気がぴんと張り詰める。


 カレンは一歩、しずくへ踏み込んだ。

 憎悪の色を宿した蒼眼が突き刺さる。


「本来なら防げた一撃だ。セレス様は守ろうとした――お前らエクリプスを。」


「ちょ、ちょっと待ってよ!」

 堪え切れず、ミカが前に出た。


「リサ様も言ってたけど……セレス様は《マガツ》にやられたんでしょ!?

 しずくちゃんのせいにするなんて、おかしいよ!」


「そんなことはわかっている!!」



 カレンは吐き捨てるように叫んだ。


「だが――事実は変わらない。

 セレス様はお前らを庇って倒れた。……それだけで十分だ。

 そして死んだ。その結果、お前は“奇跡”だなんて持ち上げられて、生きてここにいる。」


 言葉は鋭く、突き刺すように続く。


「覚えておきなさい、真壁しずく。私はお前を認めない。絶対にだ。

 “白封筒の奇跡”が何だ。現場で足を引っ張る真似だけはするな。――掃討戦の邪魔は許さない。」


 踵の音が硬い床を打ち、マントが翻る。

 カレンは列の向こうへと去っていった。


 残された空気は痛いほど重かった。


「……しずく様。」


 すぐ傍で、アヤメが静かに声を落とした。

 まっすぐな眼差しで、そっと肩に手を置く。


「私たちは、私たちの仕事をしましょう。

 訓練通りに動き、隊として結果を出す。

 それが、いつか――あなたの選んだ“道”が正しいと証明できるはずです。」


「アヤメちゃん……」


 横からミカが拳を握り、いつもの調子で声を張る。


「そーそー! 見返そ! あたしたちの連携、もう“本番仕様”なんだから!」


 ソラも小さく頷き、しずくの手をきゅっと握った。


「……大丈夫。しずくちゃんは、もうひとりじゃないよ。」


 胸の奥のざらつきが、少しだけ溶けていくのを感じる。

 しずくは息を吸い、顔を上げた。


「――うん。私たちも行こう。」


 四人は歩調を合わせ、広間の喧騒の中へと溶け込んでいった。

ここまで読んでいただきありがとうございます。




流瑠々と申します。




もし「続きが気になる」と思っていただけましたら、




ブックマークや評価で応援していただけると、がんばれます。








次回  開幕  お願いします。



流瑠々でした。

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