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Page  作者: 時ノ宮怜
2頁-丘の漣-
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忘却の少女Ⅷ

 古物商というのは、いわゆる中古品を取り扱うお店の事だ。

 都会のそれと比べてどうとかは正直分からないが、基本的に田舎では割と重宝したりするお店の形態ではある。

 その理由は単純で、田舎ではなかなか手に入らない物や、それそのものが非常に高額な物などの需要が存在するためだ。

 だからこそ、田舎の街には高額な機械なんかを修理することをメインの生業にする電気屋だとか、使わなくなったものが並ぶ古物商なんかは一定に存在する。


 とは言え、私自身がこの街以外を見たことがないため、ただの印象でしかないんだけど。


「”鉄棒”ってなんでこんな変な名前」

「そうだねぇ、こういう街の個人経営の店って自身の名前とか使ったりするし、鉄棒さんが経営しているのかもよ?」

「そんなことある?」


 クセイアがあり得ない、けどなくなくはなさそうな微妙なラインの冗談を言う。

 さすがに鉄棒さんなんて名前の人がいるとは思えないけれど、現代だってなんて読むのか分からない名前の人もいるし、もしかしたら昔の人の感性では珍しいけどなくはない名前だったのかもしれない。

 でも、やっぱり変な名前だと私は思ってしまう。


「さ、いこう。ここは面白いものがいっぱい置いてあるんだよ!」


 私たちが店の名前に引っかかっていると、ゆきがサラを連れてどんどんと店の中に入っていく。

 私はクセイアと目を見合わせてから、このまま入らないというわけにもいかず仕方なく店に入った。




「お邪魔しまーす」


 なんとなく小声になりながら店に入る。

 店の中は普通と言えば、普通。どうやらこの店は使わなくなった機械とか、雑貨をリサイクル的に売るというよりは骨董品にちかい品を扱っているようだ。

 アンティークの時計や棚、食器類から、用途不明の謎の陶器や、もはや呪いの品にしか見えない厳重に箱にしまわれた物まで、妖しい商店という意味ではこれ以上ないほどの雰囲気を出していた。


 同時に、ああこれはゆきが好きそうだなと妙に納得がいった。

 そも現代において昔話や伝承話が好きで、街中から収集しているという時点で変わった子だ。

 必然、こういう曰くのありそうな物品に関しても興味があるだろうなというイメージがある。

 あくまでイメージだが。

 いや、そもそもここはゆきの案内で来たのだから、ある意味イメージ通りにこういうのが好きなんだろうな。


「あれ~?おじいちゃ~ん?いないの~?」


 あまり普段は興味がない私でも、こういうものをたまに見れば多少の興味が惹かれてしまうもので、「なんだこれ」という程度の興味でもって、いろいろな物を鑑賞していたら、ゆきが店の奥に向かって何やら叫んでいた。


「もしかして、ゆきはここの店主と知り合いなのかい?」

「うん!私の昔話集めの師匠みたいな人なの!」

「ほう...?」


 ゆきのその一言でクセイアが釣られた。

 そりゃそうか、クセイアはその昔話を聞きたくてこの街にやって来て、その話を伝えていたのはゆきだ。

 そのゆきが昔話の師匠なんて言ったら、クセイアは食いつくに決まっている。


 ていうか、昔話の師匠ってなんだ?

 そんななんか怪談師みたいな、プロの語り部でもいるのだろうか?


「.........っ」


 テンション上がっている二人とは少しだけ距離をとっていたら、視界の端で縮こまっているサラが居た。

 どうやら店に連れてきたはいいけど、目的の人物がいなくてそっちに夢中のため、一人置いてけぼりをくらっているようだ。

 しかし、どうにも様子がおかしい。


「サラ、どうしたの?」

「......いえ、ちょっと............ここ、気配が」


 何かに怯えるように、何かに睨まれているかのように、何かよくない事が起きる前触れのように確証がなくとも確信があるようなサラの様子に私は戸惑う。


「サラ、それは―」

「おんやぁ?なんだお嬢ちゃんがいっぱいじゃぁねぇか。なんかイイコトでもあんのかい?」


 そんな尋常ではないサラの様子に、私はどういうことか聞こうとした時、店の奥から陽気でありながらもどこか怪しい雰囲気をあたりにまき散らすような老人の声が聞こえた。

 その声のあまりに場違いな雰囲気に空気がガラリと変わる。


 私はサラにかけようとしていた言葉を見失う。

 それは、その雰囲気に呑まれたからというのも確かにある、おおよそ大部分はそのせいだと言える。しかし、完全にそのせいだと言えないのはその老人の声に覚えがあったためだ。


「あ、おじいちゃん」

「お。ゆきの嬢ちゃんじゃねぇの。元気か?」

「うん!おじいちゃんこそ、元気してる?」

「おうよ!当たり前にな!」


 つい最近みた、奇抜な恰好。和服にシルクハット。流石に室内、自身の店の中だからだろうか、杖は持っていなかったが、その杖など必要もなさそうな力強い立ち姿は、図書館で私に「海の花」の話を教えてくれた川村さん、その人だった。


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