第8話 転生者vs暗殺兄弟
屋敷襲撃から数十分前
ユウ達があの店からでた後、すぐにマスターから呼び止められた。
そしてユウ達はマスターが負けた相手のことについて聞かされた。
「奴らのフー・フェンという暗殺を生業としている兄弟だ」
「暗殺?へぇそりゃ面白そうだ」
「舐めてかかると痛い目を見るぞ。奴らはこれまで数百人の人を殺してきたシブゥリの切り札みたいな奴らだ」
「私の足も奴らとの勝負で切り落とされた」
マスターは自分の足を忌ま忌ましそうに見ていた。話によればこのレノバ村にいきなり現れたシブゥリは元王宮直属騎士団のドレッドとフー・フェン兄弟、多くの兵隊を引き連れこの土地を自分の物にしようとしてきたらしい。
それに村の人たちが猛反発してきたのでシブゥリは決闘でこの土地の権利を決めることを提案してきたらしい。やらなければ全戦力を持ってこの村を壊滅させると言ってきたらしく村の人たちもその案になったらしい。
さらに驚くべきことに、このマスターかつては王都のギルドに所属していたらしく中々腕が立つ有名な人だったらしい。そのこともあってか、村の人たちはシブゥリの案になったのだが結果はマスターの惨敗で足まで切り落とされて負けたという。
「奴らはとにかく速い気がついた時には既に切り落とされていたからな、奴らにあったら出来るだけ直ぐに逃げるんだぞ」
「は、はい!」
僕なんか瞬殺されるだろうなと思い出会わないことを神に祈のっていたが当のカケルさんはまたも不適な笑みを浮かべながらもどこか余裕を見せていた。
「大丈夫だよ。俺が知る一番強ぇ暗殺者の敵じゃないだろうしな」
そう言ったカケルさんは自分がした世界の知り合いのことを思い出しているのか、どこか懐かしむような目をしていた。
――
屋敷のホール
「なるほどな、お前達がマスターの足切り落としたっていう暗殺兄弟か」
「おぉー正解ネ、あのマスターも中々強かたネ。でもワタシ達の敵ではなかたネ」
先ほどの攻撃を警戒しながらカケルは音速を超える速さで正面から殴りかかった。
「お前バカアルネ、暗殺者に真正面から攻撃仕掛けるなんて無謀アルネ」
「でも速さだけはワタシ達とタメ張るネ、残念ながらその速さもワタシ達二人相手には通じないがネ」
そう言ったフー・フェンは空中に飛び上がりカケルの攻撃を避け鉤爪でもう一度攻撃を加えた。
「ワタシ達の暗技で踊り狂うネ」
「「暗技・腕曲爪」」
そう言うとフー・フェンは回転しながら地面に着地し踊るようにカケルに攻撃を仕掛けてた。
さながらダンスでも踊っているかのような動きでの攻撃によってカケル翻弄された。
「くっそ!動きが読みづれぇ!」
暗技とはこの世界の暗殺を生業とする人達が使う人を殺すことに特化した技術のことである。対人戦においてはかなり有効で、暗殺者以外の人でも使う人が稀にいるとされている。
翻弄されながらもカケルはフー・フェンに殴りかかるがその拳は二人には当たることがなく成すすべなくフー・フェン兄弟の鉤爪によって切りつけられ続けた。
「ムダムダムダネ!」
「お前程度じゃ私達の攻撃を避ける愚か捉えることすら出来ないアルネ!大人しく死ねアルネ!」
「ちっ!ならこれでどうだ!!」
そう言うとカケルは拳を振り上げ思いっきり床に叩きつけた。屋敷中が揺れカケルの足元には大きなクレーターができた。そのクレーターはフー・フェン兄弟がいる場所まで広がり、二人はバランスを崩した。
「なっ!なんだネ!この力異常ネ!」
「これ予想以上すぎるアルネ!」
「お喋りしてたら舌噛むぜ!!」
そう言いながらカケルはフー・フェン兄弟の元に瞬時に近づき拳を振り抜いた。
「ぐぅ!」「がはっ!」
フー・フェン兄弟の二人は一瞬の隙をつかれガードが間に合わず腹部に拳が直撃し苦しそうな声を上げながら大きく吹き飛んだ。
「どうだ、少しはこたえたかよ。こっちはまだまだやれるぜ?」
「それにしてもお前らこんなに強いのに、その力を人殺しのために使ってんのか」
「ガフッ、何を、いま・・・さらのこと・・・い、いてるネ」
「そ、そん・・・なの人、こ・・・ろすの楽しから・・・にき、決まてる、あ、アルネ」
「き、騎士なんて、ま・・・守る仕事、ネ。そん・・・なの、私たち・・・い、やだネ」
「・・・ギルドって選択肢もあったんじゃないのか?」
「ギ、ギルド・・・ほどつま、らないと、ところ・・・他・・・にな、ないネ。あ、あそこはま、守るル、ルール多いネ。そ、それに・・・ひ、人・・・殺せ・・・ないネ」
「そうか。まだ何かしらの良心がお前らにもあると思った俺がバカだったよ。お前らは根っからの殺人鬼だよ」
フー・フェン兄弟は血を吐きながら何とか立ち上がり不適な笑みで笑っていた。
「お、お前やぱり・・・バカ、ね。私達・・・に、そ、そんな・・・こ、こと今更いても・・・無駄ネ」
「わ、私達血みた、さに・・・父母を・・・こ、殺した、ね・・・根からのひ、人殺しあ、アルネ。当たり前・・・アルネ」
「そうか・・・なら俺もそれなりのやり方をするだけだ。ぶっ飛ばす」
カケルはフー・フェン兄弟の答えに怒り、哀れみのような感情を込めた声で返した。
「フェン・・あ、あいつ殺すのに、だし惜しみ、してる場合ないネ」
「わ、わかたアル・・・ネ」
そういうとフー・フェン兄弟は胸のポケットから注射器らしき物を取り出し首に刺した。
「なんだそれ?」
「これ・・・わ、私達ガ、つク・・・たオリジ、ナ、ナルノま、魔力薬ネ。コレ使うノ久しぶリネ」
「こ、これはな、中ニつ・・・痛覚し、遮断ヲはっ、発生サセル魔薬とま、魔力、筋力・・・増進サせル薬草をシぼた、液混ゼたオリジナルの魔力薬アルネ」
そう答えたフー・フェン兄弟の体はみるみる内に傷が治っていった。更に二人は先ほどとは比べ物にならないほどの筋肉をその身に宿した。
「ホコルいいネ。コレツカタノお前デ三人目ネ」
「クルシマズニあの世ニ送テアルネ」
そう言うと二人は先ほどと同じようにカケルの視界から消えて、カケルの背後に回り攻撃を仕掛けた。
「「オワリネ!!!」」
「「踊り狂う鉤爪!!!」」
・・・がその攻撃はカケルに当たる事なく二人はいつの間にか自分達の背後をとっていたカケルに頭を掴まれていた。
「ア、アリエナイネ」
「イ、イマのワタシ達サ、サキの倍早イアルネ」
「んなもん簡単だ。俺もさっきより早いってだけだぜ?簡単だろ?」
「それにさ暗殺技術に限らずだが技ってもんは二回も三回も打つもんじゃないぜ?」
そういうとカケルは二人の頭を思い切り床に顔がめり込む程の威力で叩きつけた。
「グガッ!!?」
「ヴェ!?」
地面に叩きつけられたフーは意識こそ失わなかったが立ち上がることが出来ないほどのダメージを負い、ファンは今の一撃で意識を完全に失っていた。
「ぐっ!・・・お、お前はいったい・・・な、何者ネ」
「俺か?俺の名はカケルでこの世界につい最・・・て全部言い終わる前に意識失うなよな」
やれやれ。と口に出しながらカケルは床に座り込みユウがここまで来るのを待つことにした。
「んあ〜〜〜ちょっと寝るか。後は何とかニアちゃん連れてここまで戻ってこいよユウ」
そうしてカケルは寝転がりイビキをかいて寝た。