第5話 元王宮直属騎士団
1話前に出てたニアの名前を間違えてユノと書いていました。すみません。
シブゥリと呼ばれた男はズカズカとカウンターまで歩き村の人たちをどけて椅子に座った。体重を支えきれず椅子は今にでも壊れそうになっていた。
「ふむ、マスター水を貰おうか?」
「・・・」
「なんだ?この私に水を出さないのか?たかが水だろうが」
「うっさい!あんたなんかに出すような水なんてないんだよ!とっととこの店からでていけ!」
バンッと大きな音を立てて机を叩いてシブゥリの隣に立ったユノは怒鳴った。
「なんだニアではないか。相変わらず美しいなお前は。どうだ?お前だけ私の屋敷で暮らすことを許すぞ?この哀れな男の介護なんて懲り懲りだろう」
「そんなの私の勝手だ!それに誰がお前みたいな豚がいるところに行くか!」
「まったく、この私がここまで行ってやっているのに相変わらずだな」
「ニアの言う通りだ。悪いがうちの娘は貴様なんぞにはやらん。わかったのならその汚い手をどけて出ていきな」
「ふんっ!まったく親が親なら子も子だな!どうやら少し教育をしてやった方が良さそうだな」
「やれるもんならやってみろ!お前なんかあいつらがいなければ何もできないくせに!私だってお前にはもう限界なんだよ!この村からでていけ!」
そう言いながらニアはシブゥリに向けて拳で殴りかかった。しかしその拳はシブゥリに当たることなく空中を舞いながら体ごと地面に叩きつけられた。
「痛っ!」
「シブゥリ様には手出しさせん」
ニアはシブゥリの護衛として来ていた騎士によって組み伏せられていた。
「全く相変わらずのじゃじゃ馬だな。親の教育がなっていないんではないのか?なぁマスターよ?」
「それは悪かったな。なんせ、村の領主が無能なもんでな金もなくまともな教育を受けさせてやらなくてな」
「貴様!この私に向かってよりにもよって無能だと?立場をわきまえんか!」
そう言いながらシブゥリは胸にしまってあったピストルを取り出しマスターに向けた。
「丁度いい。ニアよお前の父親はまともな教育もできない能無しだったようだからな。私が直々に教育してやろう。屋敷に帰ってたっぷりとな?」
シブゥリはニアの方を見ながら下卑た笑みを浮かべ舌舐めずりをした。
「だが、その前に私にニアの世話を焼かせるような無能には少し痛い目を見せなければならないらしいな。その足のようにな」
「な、や、やめて!お父さんは関係ないでしょ?!やめろ!」
「哀れなニアよ。これは父への教育と共にお前への脅しでもあるのだぞ?あまり生意気な口ばかり聞くのならばこうなると言う脅しだ。よく見ておきなさい」
「や、やめて!やめてよ!お父さんを撃たないで!言うこと聞くから!お願いやめて!」
「そ、そうだ!やめてくれ」「マスターがいないとこの村は本当に終わってしまう!」「どうかもう一度お考えくだしい!」
「えーい黙らんか!貴様らこそもう既に休憩時間を過ぎておるぞ!これ以上私に逆らうと言うのならそれ相応の罰を与えることになるぞ?」
「それともなんだ?貴様らもそこの男のように私に逆らって足を切られて見るか?」
そう言いながらシブゥリは銃口をマスターに向け放とうとした。誰もがもうダメだと思った瞬間、それまで水を飲むだけ飲んでいつの間にか寝ていたカケルが目を覚ました。
「んあ〜〜〜よく寝た。ん?なんだ?何この雰囲気?空気をなんか悪いし?ん?」
起きたカケルは周囲に目をやり、そしてシブゥリを見つけ、そして・・・
「おおおおお!ゴブリンじゃん!ユウ見てみろよ!ゴブリンだぜ!いやぁ異世界と言ったらやっぱゴブリンだよな!」
「でもなんだそのセンスのない似合わない服は?面白すぎるだろ!」
起きてシブゥリを見てカケルさんはゲラゲラと腹を抱えながら大爆笑した。それを見ていたシブゥリは顔を真っ赤にしながら怒鳴り声を上げた。
「き、貴様ぁ!よりにもよってこの私を!ゴブリンだと?無礼者がよかろう!貴様から先にあの世に送ってやるわ!」
叫びながらシブゥリはピストルの引き金を引き、バンっという音と共に銃弾がカケルさん目掛けて放たれた。しかし、その銃弾をカケルさんはまるで投げて渡された物を取るかのように難なく片手で掴んだ。
「んな?!ば、バカな?!銃弾を素手で取れるなどありえん?!」
「う、嘘でしょ」「す、すげぇ」「タダ飲み野郎じゃなかったのか」「何者なんだあの男は」
これには流石の僕も驚いた。だがそれ以上に他の人たちも驚いたようで捕まっていたニアも村の人たちも皆んなカケルさんに注目した。マスターやニアを捕まえていた騎士は別段驚くこともなかったが騎士の方はカケルさんを危険と判断したのかすぐにでも戦えるように臨戦体制に静かに入っていた。そして、当の本人であるカケルさんは・・・
「んでさ、これどうゆう状況?マスターと娘さんの話は?あれ?」
「てゆうかよ!おい!ゴブリン!てめぇ何銃なんか撃ってんだよ!てかなんでファンタジーに銃なんてあるんだよ!ゴブリンなら棍棒もてよ!それか最低でも弓だろうが!バカか!」
よくわからないがこの状況では恐らくどうでもいいことで勝手にキレていた。
「な、何者なんだ貴様!」
「俺か?俺の名はカケル!転生者らしいぜ!よろしくな!」
カケルさんの転生者という言葉にこの店にいた全ての人が驚いた。
「ば、馬鹿な?!転生者だと?貴様らまさか王都のギルドに依頼をしたのか?そんな金をまだ持っていたのか!」
「そ、そんなわけないだろ!お前に取られて皆んな今日を生きるので精一杯だ!」
「その人達は今日俺の店にたまたま来たのさ」
「ぐ、ぐぬぅ〜な、ならばドレッドよ!」
「ハッなんなりと」
「あそこにいる転生者と嘘ぶくやからを処分せよ!失敗は許さんぞ!元王宮直属騎士兵団、第九部隊副団長であった貴様の力を今見せよ!」
「かしこまりました。ですがこの娘はよろしいのですか?」
「そんな娘どうとでもできるわ!今は奴だ!私を侮辱したことを後悔させよ!」
「願ってもないことです。まさかこんなところで転生者と戦えるとは楽しみですね」
「ん?なんだその王宮ナイツなんやらって?どっちで読めばいいんだ?」
王宮直属騎士兵団それは王都にいる王を直属の騎士であり、それに選ばれることは騎士としての最大の勲章とまで言われる物だ。その中でも団長、副団長は生物の域を超えるとまで言われている。まさかそんな人がここにいるなんて。
「さて、私をせいぜい楽しませてくれたまえよ?それが無理でもせめて3分は持ってくれなくては話にならんぞ?」
「あ?なんだ俺と闘るってんのか?いいねぇテメェこそ楽しませろよ?」
カケルさんは普段の気の抜けたような笑顔ではなくまるで悪魔のように不敵に笑いながら
「俺の拳はテメェらには重いぜ?」
といって拳を構えた。