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第4話 太っ腹なマスターと太っちょの領主

 カケルさんとパーティーを組んで一週間が経過した。僕の傷もすっかり治り旅の身支度も完了した。幸い前のパーティーの食糧や旅の道具が色々と残っていた。脱退させられたお駄賃と思う事にして使わせてもらう事にした。

 ドアを開けたらカケルさんが廊下にある椅子に腰掛けていた。


 「なんだ、やっと傷治ったのか待ちくたびれたぜ。とっとと行くぞ」


 この一週間が相当暇だったのか初めて会った時のような気の抜けたような声ではなく気怠げな声で話しかけてきた。


 「すいません。ご迷惑おかけしました。旅の準備は完了しました」

 「水も食糧も前のパーティーの物がそのままありましたから」

 「おいおいそれいいのかよ」

「別にいいでしょ置いてった物僕が有効活用するだけですから」

 「お前以外とせこいやつだな」


 心外なことを言われながら僕たちはお世話になった医者にお礼を言って村を出た。カケルさんとの旅は何か特別なことが起きるような予感がして僕自身もわくわくしていた。


――


・・・はずだった。僕たちは本来ならあの村から王都までは三日で着くはずだったのに五日間も旅を続けており今だに王都についていなかった。


 「なぁなぁまだ着かないのかよ」

 「着かないのかよってカケルさんが適当に道進んで行ったせいでこうなってるんでしょうが!!」

 「僕何度も何度も言いましたよね!?道違うってなのにカケルさんがこっちであってる俺のカンは当たるって言ったせいですよ?!」

 「え、あ、そうだったっけ?」


 旅して直ぐにこうなるとは思いもよらなかった。少し一緒にいただけでわかる。この人は基本的に自分が好きなことや気になることを優先してしまうタイプらしい。そのせいで本来なら一本道を歩くだけでいい道を右に左に崖から降りたりして進んでしまった。僕も僕で止められなかったから責任はあるが・・・


 「はぁどうするんですか?」

 「食糧だってもう底をつきますよ。水だってもうないし早くどこか村でも見つけて食糧と水確保しないと飢え死にエンドですよ」

 「それはまずいなじゃああそこ行こうぜ」


 カケルさんが指差した方向を見てみると少し遠くにあるからかうっすらと街並みが見えた。


 「よく見えますね。普通の人が目細めてやっと見えるレベルですよあれ」

 「んーまぁ俺だから」

 「とりあえず行ってみようぜ」


 答えにすらなってない返答をしてカケルさんは1人で歩いて行ってしまった。それを慌てて追いかけて先ほどうっすらと見えた街に向かっていった。



――



 しばらく歩いて僕たちは先ほど見えた町まで来た。ここはどうやら炭鉱を資源としたレノバ村と呼ばれる所らしくスコップやツルハシやトロッコなどがある。村の人たちもいかにも鉱山で働いてるがたいをした屈強な男の人たちや四角い人が歩いている。


 「おい、あれ見ろ」


 指を指した方向にはオアシスと書かれた看板がある店があった。


 「あそこなら食いもんとかありそうだよな。いってみようぜ」


 返事をするよりも早く手を掴まれて流されるままに僕はそこの店にはいった。

 店に入ったらいかにもやばそうな人たちが一斉にこちらを見てきた。僕らは余所者ということから敵視されているのだろう。しかしカケルさんはそんなことも気にしてないのかズカズカと店に入って行きカウンターに堂々と座った。


 「マスター水を一杯くれ」

 「あんた余所者か?」

 「そうだがなんか文句でもあんのか?なんだ余所者だと水も飲めねぇのか?あ?」

 「ちょ、ちょっと待ってください!あんたバカですか?何であって早々に喧嘩ふっかけるんですか!?」


 一触即発の雰囲気に唐突になったので僕は急いでカケルさんを止めに入った。周りを見てみるとさきほど座っていた男の人たちもみんな立ち上がってこちらを殺すぞ言わんばかり見ていた。


 「落ち着けよユウ軽いジョークだって、なぁおっさん」

 「おう、その通りだぜにいちゃん。あって直ぐに喧嘩なんてする気力なんてこっちにはねぇよ」


 がははははははと笑いながらこの店のマスターらしき人は自分の太ももをバシバシと叩いた。よく見るとこの人の片方の太ももから下がなく椅子だと思っていたのは車椅子だった。


 「ユウ流石の俺でも怪我人相手に喧嘩なんてしねぇよ?多分」

 「多分って言った時点で信頼ないんですよ」

 「まぁ悪かったなにいちゃん達。詫びのしるしにほら水一杯タダで飲ませてやるよ」

 「え?!い、いいんですか?」

 「なんだおっさん太っ腹だな」


 マスターが僕たちに水を渡してくれた後、店にいた人がマスターに駆け寄ってきた。


 「いいんですか?ただでさえ少ない水をこんな奴らに渡しちまった?」

 「それに上納金の方だってあるんですぜ?」

 「村長の分がまた無くなっちまいますぜ?」

 「え?村長って今言いました?」

 「いいんだよ。せっかくの客だしな。何もないこのレノバ村によってくれたせめてもの礼だよ。」

 「それに俺は今は村長なんかじゃねぇよ。今はただのしがない街のマスターだよ」

 「で、でも・・・」

 「でももすともねぇよ!ほらお前達も俺の奢りだ水を今日は飲め飲め!!」


 どうやらこの村は何やら問題があるのだろうと会話の内容から察することはできた。僕は流石に申し訳なく思い水を飲むことができなかった。

 すると大きな音が後ろで聞こえてきた。後ろのドアを思いっきり開けた音らしく入ってきたのは若い女の人だった。


 「パパ!またみんなに水を奢ってるの?!」

 「いい加減にしてよ?!ただでさえ上納金の方もギリギリだし!水も食べ物も底をつきかけてるんだよ?いつまでこんなことやるのよ!!」


 大きな声で入ってきた女の人は健康的な褐色肌で髪を無造作に後ろで縛った女性だった。さっきまで鉱山で働いていたのかつなぎを腰に巻いており、それが彼女を活発な人だとわからせた。


 「おーおかえり早かったなニア」

 「早かったなじゃないでしょ!!パパ今の話聞いてた?」

 「いいだろ別にパパの勝手だろ?ニアお前には迷惑をかけとらんだろ?お前の分の生活費はしっかりとあるんだしな」

 「何言ってんのよ!パパがそんなんだからあいつらに村も鉱山も足も何もかも奪われたんだよ?」

 「ニアちゃん何もそんなにいうことないだろ?」

 「そうだよニアちゃん君のお父さんは俺たちのために一生懸命あいつらと戦ってくれたんだよ?」

 「うるさい!結局何にも取り返せてないじゃない!足まで取られて諦めてこんなところでタダ同然で食糧や水を渡しちゃってバカみたい!」


 どうやら完全に僕たちにとって完全にアウェイな空気になっていたが、こんな状態でも隣で座っていたカケルさんは水を僕の分まで飲んでやがった。

 この人には一発本気で殴ってもいいだろうかと思ったが返り討ちに合いそうだったので諦めた。呆れた目でカケルさんの方を見ていると村の皆さんの方もエスカレートして行ったらしく次第にマスターやニアさんだけでなく他の鉱山の人たち同士でも喧嘩を始めていた。

 そろそろ止めたほうがいいだろうなと思い声を上げようとした次の瞬間、またもドアを勢いよく開く音が聞こえた。


 「失礼するよ。まったくここは相変わらず薄汚いところだね。なぁ()()()()?」

 「シブゥリ様・・・」


 その声にみんな気がつき後ろを見た。そこに立っていたのはモヒカン頭に肥え太ったいかにもな感じの男で部下であろう騎士を連れて入ってきていた。

 ・・・偏見はあまり良くないだろうが、なんとなく今回のこの村の問題の原因のように思えた。

 

 


 

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