第2話 仲間から裏切られ見捨てられました。
村の入り口
村の入り口付近にはユウと共にダンジョンに入りユウを置いて逃げた3人の幼馴染が旅にでる準備を完了して集まっていた。
「おーい!ごめーん遅れちゃった!」
「ったく遅ぇよ!」
「邪魔なあいつがいなくなった大事な旅の門出だって言うのに何をしているんだお前は!」
「バン!ユーリャが遅れたのはそもそもお前のせいだろ!」
「ぐっま、まぁそれはいいだろ。ったく降ってきちまったじゃねーか」
3人はこの冒険に出た時からユウをパーティーから離脱させることを決めていた。今回それが魔物が現れたことによって予定より早まっただけのことだった。しかし旅の食糧などはユウに持たせていたことからあのダンジョンから出れたのはよかったが食糧がなかったのでこの村で調達していたのだ。
「ねぇー本当にいいの?」
「あ?まさかユウのことか?お前今更あんな奴の心配してんのかよ」
「え?全然?そっちじゃなくてさ、仲間だよ。適当な人でもいいから募集しといたほうが良くない?」
「別にいいだろ。端っこの方にある村なんかで集めても来るやつなんてたかが知れてんだろ」
「まぁそうだけどさぁー」
「そうだろ?だったらとっとと王都にまだ行ってギルドに所属して仲間募集した方が絶対いいだろ?」
「そっかぁならいっか!」
「言い訳あるものか!本当なら危険なことなんだぞ。それもこれもバン!お前がユウをあんなところで見殺しにしたからだぞ!」
「仕方ねーだろ。ああしなきゃみんな死んでたんだぜ?ならあいつ身代わりにするしかなかったろ?」
そんな会話を村の入り口付近でしながら準備を進めて出発しようとしていた。
「おい!そろそろ出るぞ!雨が降ってきやがった」
「お前が遅れてきたせいだろうが!」
「う、うるせぇよ!とにかく行くぞ!このバン様が世の中に名を残す旅の偉大な一歩だぜ!」
「3人とも待って!!」
「「「⁈」」」
準備が完了し、村の入り口付近に誰もいないことを確認し、出発しようとした3人は思わぬ人物の声によってそれは阻まれた。
「待って!ハァ…ハァ…ハァ…」
そこにいたのは自分たちがダンジョンで魔物から逃げるための駒とし、つい数刻前までは死んだと思っていた少年ユウだった。
「はぁ?な、何でお前がここにいるんだよ?!意味わかんねぇよ?!」
「驚いたな」
「あっはは本当にねぇー」
バンは目の前に立つ自身の幼馴染が本物だと信じられずにおり、他の2人は別段驚くこともなく興味のない感じだった。
「皆んな!なんで?何であの時僕を見捨てたんだよ!」
「それに何で3人だけで旅をしようとしてんだよ!僕らはみんなで旅をするわじゃなかったの?」
〜それはありし日の幼馴染達との約束〜
「いつか皆んなでこの村をでてまだ見たことない物を発見したり、すごいモンスターを倒したりしながら世界中を冒険しようよ!」
「おお!スゲェーかっけえーじゃんか!俺は賛成だぜ!めちゃくちゃ強くなって世界のてっぺんとってやるぜ!」
「うん、私もみんなと旅をしたい」
「あぁ、私たちでどんな敵も倒そうじゃないか!」
「うん!いいねいいね!私も楽しみぃー」
その約束を胸に今まで僕は生きてきた。なのに今はアリサは王都に行き、バンとユニとアカネは僕をおいて旅立とうとしている。なんで?何でこんなことになってしまったんだ。僕は何を間違えたんだ。教えてよ誰か僕は何で今ここに1人でいるの?
雨に濡れながら僕はそんなことを考えて3人を見ていた。
「ねぇ?教えてよ!バ」
「うるせぇんだよ!カス!」
僕が彼の名前を叫ぼうとしたと同時にバンも叫んだ。
「テメーはさ、足手纏いなんだよ!この歳になってもろくな魔術も覚えず、剣術とダメ、回復も楽にできねーし、おまけに頭もよくねぇときた!」
「そんなお前がどうしてこの俺たちと一緒に旅に出れるなんて思ってたんだよ!!あ?!」
雨の激しい音と共に彼の僕への今まで溜め込んできたであろう不満が響き渡る。
「え、で、でも僕たちはみんなでぼうけ・・・」
「んなもんテメーとなんか出るわけないだろ?いつまでガキの頃の約束に縋ってんだよ?」
「そーそーユウはさ、このままだとすぐに死んじゃうよ?それに弱い人がいたらその分私たちの負担も増えるし邪魔なんだよねー」
「悪いがその通りだユウ。約束を破ることは心苦しいがお前は弱い。そんな奴と私もバンもユーリャも旅なんてできないんだ」
幼馴染3人からの拒絶の言葉によって僕は何も言えなくなった。努力をしてなかったわけじゃない。誰よりも早く起きて走り筋トレを行ったりもした。魔術も勉強も夜遅くまで寝ずに行うこともしていた。
しかし、僕には才能がなかった努力してもしてもできなかった。
「テメーみたいなカスとなんかアリサだって会いたくもないだろうよ」
・・・アリサ僕にとっての最愛の人であり2人だけの約束を交わしたかけがえのない人。確かに彼女であっても今の僕と共に冒険に行きたいとは絶対に言わない。
バンのこの言葉は僕を地面に両手をつけさせるには十分すぎる物だった。
「フンッ!テメーは一生この村で生きてけよ。あばよ」
「ばいばーい」
「すまない」
雨の音によって彼らの足音はどんどん消えていき、僕はそれをただ見ていることしかできなかった。
僕には彼らを止める資格もそれに値する価値すらない人間だった。顔からしたたら落ちる物が後悔の涙なのか、それともの雨なのかわからなくなるくらい僕はそこで1人しゃがみ込んでいた。
「おい、風邪引くぞ」
そんな言葉と共に突然僕に当たる雨が遮られた。
顔を上げるとそこにはカケルさんが傘を刺しながら、先ほどの話を聞いていたのか複雑な顔をしながらそこに立っていた。