第22話 恐怖する魔物
2章入ってから更新が中々出来なくて申し訳ございません。とりあえず今回でこの洞窟での話は一旦終わります。次回はユウとカケルが多分めちゃ怒られます。
魔物とは理性がなくただ本能のままに相手を喰らうことが主な行動理念であり、それ以外に魔物が持ち合わせるものはない・・・はずだった。
魔物達は今自分自身が見ている光景を信じれないものとして捉え、恐怖していた。なんせ自分達の主と言っても変わらない多頭の魔物がいとも容易く遠くまで吹き飛ばられてしまったのだ。そしてその男は自分達すら逃すつもりは毛頭ないらしく、
「よそ見なんてしてる余裕はお前らにはないはずだぜ」
そう言って先程多頭の魔物を殴り飛ばした男は狼型の魔物達の前に現れ、拳で頭蓋骨を砕き、蹴りで内臓を破裂させ、噛まれたとしてもそれを意に返さず地面にめり込ませ、引きちぎり、握りつぶし、食い千切り、逃げるものには岩で押し潰し、魔物達を次々と蹂躙していった。
それを見ていたアリサ達にとってもこの光景は異常なものに映っていた。
「・・・何者なのあの男」
「そ、そんなの私が知るわけないでしょ」
「な、なんで、あんな強い奴があいつの、そばにいるんだよ!?なんで、いつも、あいつばかり・・・」
「あはは、ねぇねぇあれってさー転生者じゃない?」
「転生者って、いやそうだとしてもあの数の魔物を相手にして息一つ切らさずに圧倒出来てるなんてあり得ないでしょ!?」
アリサ達が話している間に無数にいた魔物はカケルによってたったの三人にまで減らされていた。
「もう終わりか?なぁ、そろそろ出てこいよ。あの程度でやられるような奴じゃないだろ」
カケルは生き残った三匹の獣達にではなく、その奥にいる者に声をかけた。そしてその奥から先程カケルによって殴り飛ばされた多頭の魔物が無傷で現れた。
「驚いたな、俺が殴ると同時に後ろに飛んで自分で吹き飛んだってとこか。お前かなり悪知恵働くタイプの奴だな」
カケルも先程の一撃は相手を殺すに至らずとも、ある程度のダメージを負わしたつもりだった。しかし出てきた、多頭の魔物は傷など一切おってはいなかった。
「あのカケルって奴も化け物だけど、やっぱあの多頭も化け物ね」
「私達もすぐに援護に行きましょう」
「無理よ、私はここで少しは魔力も回復できたけどあんな化け物相手になんか出来ないわよ」
「わかりました。ならあなたはユウ達を連れて先に上に上がってて。私はあの人の援護に回ります」
「い、いえ。そ、そのひ、つようはない、ですよ」
アリサがカケルの手助けに行こうとした時だった。ユウが起き上がりアリサを止めた。
「ユウ!」
「ちょ、ちょっとあんたまだ動いちゃダメな!安静にしてないと・・・」
「あ、あはは、す、すみま、せん。でもカケルさんへの援護、はやっぱ、りいらな、ないですよ。み、見ててください」
ユウ達が話していた頃、崖の下ではカケルと多頭の魔物が両者一歩も動かず睨み合いが続いていた。
多頭の魔物は考えていた。今自分の目の前にいる存在は何故自分を怖がらないのか、何故自分の手下がなすすべなく蹂躙されてしまったのか。しかし何度考えても答えは同じだった。
単純に強いのだ。さっきまで戦っていたユウやアリサと違って何か特別な力を使う必要のないくらい自分達とはかけ離れた実力の持ち主なのだ。だから恐怖しないのだと。ならば話は簡単だこの男より強くなればいいだけの話なのだ。
その結論に至った多頭の魔物は自分を次の段階へ進化させることにした。
「・・・お前って本当に狼なの?」
それを間近で見ていたカケルは多頭の魔物の変化に驚た。それまであった多数の首は大きくまるでキリンのように長くなり、ユウ達を捕食しようとしていた口は耳まで裂け更に異形の姿へと変化を遂げた。
「えー八岐大蛇じゃん・・・口まで裂けてまぁー」
更に異形な姿へと変化を遂げた魔物はすぐさまカケルを殺す為に行動した。耳まで裂けた無数の口にエネルギーを溜め始めたのだ。
「え、ちょ、ちょっと待てって!おーい!お前ら!今すぐ逃げろ!そこいると死、!?」
カケルがいい終わるより早く多頭の魔物は溜めたエネルギー大空洞中に無差別で撃ち放った。地面が触れてすらないのにえぐれて行くほどのエネルギー波は崖の上にいるユウ達にも放たれていた。
「ッ!ユウだけでも!」
「ちょ!速すぎるわよ!魔力壁の展開間に合わない!」
「うわぁぁぁぁぁ」
「死んだぁ」
「だ、だいじょぶで、すよ」
マナ達は自身に迫るエネルギー波に死を覚悟した時だった。いつの間にか崖の上に登ってきていたカケルがマナ達の前に立ち拳を握りエネルギー波を殴りつけかき消した。
「は?うそ、ありえないでしょ。あんたほんとに何者なのよ・・・」
「ん?俺?転生者だよ。悪いなもう少し待っててくれや片付けて来るからさ」
そう言ってカケルは多頭の魔物の真下まで飛んだ。カケルを殺す為に新たな進化を遂げた筈の魔物は自身の渾身の一撃を食らってもなお、無傷で自分と戦おうとしている男にユウに感じた感情と同じものを感じていた。
「さてと、わざわざ変身までしてくれたのに悪いけどそろそろ終わりにしようぜ?ユウも心配だしな」
「グッ。グガ、ガァァァァダァァァァァ」
唐突に叫び出した多頭の魔物は自分の後ろにいた生き残った三匹の魔物を口で掴み、カケルの方へ放り投げた自身は奥へ逃げ出した。
「こんなんで時間稼げると思ってんのか?」
投げられた三匹を難なく殺したカケルは、次こそ多頭の魔物を狙おうと追いかけた。
多頭の魔物にすぐに追いついたカケルだったが、多頭の魔物は再びエネルギーを溜めすぐに放てる状態になっていた。カケルは咄嗟に防御の姿勢をとったが、多頭の魔物はカケルを狙うことなく、天井にエネルギー波を放った。
「なっ!?」
放たれたエネルギー波によって天井が崩れ、開いた穴から多頭の魔物は外に出ようとしていた。
多頭の魔物は自身がしている今の行動を理解できていなかった。何故自分は天井に穴を開けたのか。何故そこから出ようとしているのか。何故今目の前にいる人間がこんなにも恐ろしく映っているのか、魔物は理解出来ていなかった。いや理解は出来ていたのかもしれない。だが、認めたくはなかったのだ。
この大空洞で王として生きてきて、多くの人間もモンスターも喰らってきた自分がたった一人のちっぽけな人間に恐怖して、逃げるなんて断じて認めたくはなかったのだ。
「ガグァァァァァァァァ」
崩れた天井から這い出かけたその時だった、いきなり体が動かなくなったのだ。多頭の魔物は恐る恐る床下を見るとそこには、崩れた天井の上に立ち、自身を逃さない様にカケルが尻尾を掴んでそこにいた。
「少し驚いたぜ馬鹿野郎。でもさ言っただろ?そろそろ終わりにしようかってさ。残念だったな、ユウとその大切な人達に手を出した時点でお前の負けは確定してたんだよ」
そう言ってカケルは再び拳を握りしめ、多頭の魔物を殴りつけた。
「ぶっ飛べ」
「ガァぁぁぉぁぁぁぉァァァァア!」
その一言と共に腹部を殴られた多頭の魔物はダンジョンを突き破りながら破裂して、青空に赤い雨と肉片が飛び散った。
「さてと、ユウのところに戻るか」
そう言いながらカケルはユウ達がいる場所に歩いていった。




