第20話 アリサ
アリサがこの大空洞はなんらかの実験場だと考えた時だった。群れがいるとユウから伝えられた方から無数の目がこちらを覗いていた。
「ッ!いつの間に!?」
アリサは直ぐに臨戦体制となり、構えたが影から出て来た存在に驚愕した。その姿は先ほどまでの魔物とは異なり顔を何個も持ち、大洞窟を半分以上の大きさをしていた。
(こんな奴がずっと奥にいたってこと?まさか私のこの力に引き寄せられて目を覚ましたとか?)
「なら私の責任だ」
(今までのどの記録にも無かった個体・・・。油断はできない。この姿をあとどれくらい正気で使い続けれるかも分からない)
アリサはそれ以上考えることをやめ、目の前の存在を確実に仕留める為に剣を構え、先程と同じく魔物が視認できない速さで動いた。・・・しかし、真下に到達したアリサに多頭の魔物は反応し反撃を加えて来た。
「なっ!?」
咄嗟に横に避け攻撃を回避したアリサだったがその先には既に無数の魔物の顔がアリサを囲んでおり、アリサを噛み砕こうと向かって来ていた。
「いつの間に!?いっ!ーーー舐めるな!」
アリサは無数の顔を切り裂きながらも後方に一旦下がった。
「こいつ、さっきの魔物達とは比べ物にならない程強い。しかもこの力について来れてるなんて・・・」
吸血化は適合率が高ければ高いほど、上位種に近い力を得る事ができると理論上は考えられている。その中でもアリサはたった一人、適合率を90%以上を叩き出していた。つまり理論の上ではアリサは上位種に限りなく近い力をこの姿では宿していることになる。ただし、この力を引き出すのは危険であり、適合しても引き出しすぎて死ぬなんて事もある。アリサはそうならない為にも使用する際、力を抑え使用している。
(この魔物、この力をまだ完全には解放してないと言っても上位種に匹敵してる筈なのに・・・まさかこいつも上位種に匹敵する力を持ってるってこと?)
アリサが攻め切れずにいると、先程切った魔物の首から新たな首が生えて傷もなくなっていた。
「再生力もあるなんて・・・まさかこいつにも吸血化の手術が施されてる?」
ならば尚のこと勝ち目はない。そう悟ったアリサであったが、それとは別の感情がアリサを支配していた。ーーーこいつに勝ちたい、こんな強敵との戦いを逃げる何てしたくない、勿体無いと考えていた。
アリサは幼少期の頃、五人で迷い込んだ迷宮でその場所の主をたった一人で倒したことから、その武勇が認められ王都のギルドへスカウトされた。アリサ自身、あの時の命のやり取りにおいて感じたことのない高揚感、自分の細胞一つ一つが満たされる満足感、強敵へ勝利した余韻、などがその時自分を変えたと考えていた。いや自分を理解したのだろうと感じていた。
そして王都へ行き様々な強敵と戦う中で力への渇望が大きくなっていった。ユウ達との約束の為に強くなると誓った事も忘れてしまう程に。そしてのその渇望が遂には吸血化を手するまでに至った。
そしてそれはこの状況においても変わらなかった。目の前にいる存在を倒すと言う事は、自分を更に上の高みへ上げてくれると言う事だと考えていた。
「それでも負けたら意味はない・・・ならやる事は一つしかない・・・」
アリサは更に力を高め、パーセントで表すならば83パーセントもの力を引き出した。そうしてアリサは笑みを浮かべながら多頭の魔物に向かっていった。
「嬉しいこんな強敵と殺り合えるなんて!」
白髪姫。アリサの異名でもあるこれは一つ間違っている部分があった。と言うのもアリサの事を白髪姫と呼ぶ物達の多くはアリサと共にクエストをした事がなく、その名を聞いてこの異名だとしている。しかし本当のアリサの異名は白髪喜もしくわ白髪鬼であり、戦場を白い髪をたなびかせながら容赦なく妖艶な笑みを溢しながら戦う事からそう名付けられていた。
(あぁ。私は今満たされている。生きていると実感できている。これ、これこそが今私が生きてるって教えてくれる!)
今まさにアリサは横腹を爪で抉られようが、下半身を食いちぎられようが、腕がなくなろうがお構いなしに戦っていた。夢のような時間、自分の存在を証明してくれるこの力、切っても死なず永遠と私に向かって殺意を向ける私を超える力を持つ存在。
この全てがアリサにとっての幸福だった。だが何故かアリサはユウの事も同時に思い出していた。あの日のアリサにとって大切なものとなる約束し、王都に旅立って全てを忘れかけていた頃に、再び目の前に現れた少年。彼が脳裏によぎった時、アリサは目を覚ました。
「あ、え、ユ、ウ?」
目を覚ました先には先程逃したユウ達がおり、次に自分を確認すると多頭の魔物によって噛みつかれ全身から血を流していた。負けた、現状の自分を見て瞬時に理解した。敗北をしてそのままユウ達の元へ、生かさず殺さずの状態で連れていかれたのだ。
「あ、アリサ、アリサァァァァァァァァ!」
「落ち着きなさいユウ!突っ込んでいってもあんな奴に勝ち目なんて無いわよ!」
「で、でもこのままじゃあアリサが、アリサが!」
ユウ達が何かを言い争っている時に私は魔物によってユウ達の方へ何故か投げられた。それに気づいたユウによって私は助けられた。
「アリサ、アリサ!」
「だから落ち着きなさいって!今治療魔法使うから!」
「な、何だよあいつ、まさかアリサをここまで連れて来てくれたのか?」
「あはは、とてもそうは見えないなぁー」
ユーリャの言う通りだとアリサも考えていた。あの多頭の魔物は私達を他の魔物達とは違い獲物とも認識していないんだ。私をここまで連れて来たのだってユウ達に恐怖心を与え、恐れ逃げまどう姿を見る為に連れて来たに違いない。更に多頭の魔物の後ろから無数の狼型の魔物が現れ私達に狙いを定めていた。
「ぐっ!ご、ごめんな、さい。わ、わた、し勝てなかった・・・そ、それにあの怪物、をでばら、らせたの、も私かも、しれ、な、ない」
「そんな事ないよ!アリサ、僕らこそごめん。君一人で戦わせてこんな傷までおわせてしまって・・・」
「でもこの状況最悪よ。どうするのよこのままじゃあ私達皆んな死ぬわよ」
「・・・多分ですけど、何とかなるかも知れません」
「え?」
「は?はぁ〜何言ってんのよあんた!この人見なさいよ!聖光の守護者の副リーダーでさえ、この様なのよ?どうにかするって無理でしょ!?」
「いいえ、なんとかなります。それまでは・・・僕が時間を稼ぎます。ごめんね、アリサ少しこの剣借りるよ」
そう言ってユウは剣を私から借りて多頭の魔物を睨みつけた。
「ちょ、ちょっと待ちなさいよ!あんたが時間を稼ぐって、仮に時間を稼げたとしてもよ!?その助けが殺されちゃったらどうするのよ!」
「そしたら、この世界は終わりですよ。安心してください。僕が知るその人は、今まで会って来た人の中で一番強いですから」
そう言ってユウは私達に微笑みながら崖の下に落ちていった。
「さぁ!何処からでもかかってこい!しっかりと時間を稼がせてもらうぞ!」
ユウ以外は知らなかった。多頭の魔物が脅威だと感じ、それを排除しようとし出て来た理由はアリサではない事に、アリサ達救援達がダンジョンに到達して、アリサがこの大空洞に来た後に一人の男がこのダンジョンに到達してそれが引きがねとなったいたと言う事に・・・




