番外編 上位種
シブゥリはカケルに縛られた少し後に目を覚まし変わった縛り方をしていた縄を抜けた。ユウ達によって汗だくになったことで縛り方が甘くなっていたことも功をそうした。縄から脱した後、シブゥリは数名の部下を叩き起こしある程度の財産を待たせていづれアイツらに復讐をしてやると誓いながら馬車で屋敷を後にした。
「シブゥリ様どちらまで行かれるのですか?」
「そんなもの決まっておるわ!王都までだ!」
「は、はい」
全てを失ったシブゥリは王都に戻り、必ず再起しあの村を今度こそ支配下に置く事を心の奥底で誓った。
ここで自身の命運が尽きる事を知らずに・・・
「し、し、シブゥリさ、様!シブゥリ様!」
「何だ!騒がしいぞ!黙って走らんか!」
「し、しかし、外を外を見てください!」
部下に言われて渋々外を見たシブゥリは先ほどまで森を走っていたはずなのだが、いつのまにか紫色の霧に覆われた黒い墓地のようなところを走っていることに気がついた。
「な、何なのだここは!貴様、どこを走っておるのだ!私は王都まで行けた命じたはずだ!」
「お、王都までの道を走っていたのですが、い、いきなりにここになったのです!」
ここになった?意味のわからない事を言っている。部下に怒りが最高潮に昇ったシブゥリはピストルを取り出して馬車を止めさせた。
「お前はもういらん死ね」
「な、そ、そんなお待ちください!シブゥリ様どうかい、いのぐぁっ!」
何かを言い終わる前に銃弾を放ち使えない部下を始末したシブゥリは別の部下に馬車で走らそうとすると、ガシャガシャという音を聞き後ろを振り返った。
「な、何だ・・・アレは」
振り返った先では剣を持ち黒い鎧をその身につけた騎士のような姿があった。その歩き方は生気を感じさせず、まるで死んでいるように見えた。
「な、何者だ!貴様はここの主人か!ならば丁度良い貴様には今日この私をここに泊まる名誉をやろう!ありがたく思えよ?」
しかし騎士は何も言わず、こちらに歩いてくるだけだった。君が悪く思ったシブゥリは部下達に騎士の処分を命じようとしたが部下は皆いつの間にか倒れていた。
「貴様ら何をしている!誰の許可を得てそこで寝ている起きんかこの役立たず共め!」
そう言いながら倒れている部下達を蹴り続けていたが部下は何も反応しなかった。不思議に思ったシブゥリは部下が呼吸をしていない、つまり死んでいる事に気がついた。
「な、ば馬鹿な?!何が起きた、いや貴様か!貴様何をした!」
シブゥリの問いに対しても何も反応する事なくただただ歩いて来ているだけだった。
「貴様、私の問いに答えることもしないとは無礼だぞ!」
そう言うとシブゥリはピストルで騎士を撃ったが何の素振りもせずにただ歩いてこちらに迫ってきていた。
「ぐぅっ何なのだ!今日だけで何故何人も私に逆らう者が現れるのだ!私はシブゥリなのだぞ貴様らが手を出してもいい相手じゃないのだぞ!?なのに何故だ!何故私の思い通りにならない?!何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故何故なのだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁあ!」
そう言いながらシブゥリは迫って来ていた騎士が手にしていた剣によって切断された。騎士は何も言わずまた歩き始めどこかに消えた。後に残ったのは醜い姿をした死体だけだった。
―彼の者名は無い
―彼の者に感情はない
―彼の者に死は無い
―彼の者はただ死を与えるのみ
―彼の者はどこにでもいる
―彼の者から逃げる事は出来ない
―彼の者に存在はない
―彼の者は生を否定せし者
人々の死への恐怖が形作られた死そのものであるのか、死を与える死神なのか、終末を呼ぶ四騎士の一人なのか、人々の噂から生まれたのか、正体は誰にもわからない。ただわかるのは彼の者から逃げきれた人がいないと言う事だけ。そして彼の者が上位種と呼ばれる者達と同等であると言うことだけ。
"上位種"
世界を一人で滅ぼす事が可能とされている存在。この世界のどの生命体よりも上に位置しており、過去にマスターが参加した討伐作戦もこの上位種の一人を倒す為の作戦であった。現在確認されている上位種は全部で四人おり、その一人一人が人智を超えた力を持っている。
この騎士もそれらと同列の存在ではあるが、死そのものと言うこともあり人類に未だ確認されていない者達の一人である。
「カケルさん?」
「ん?あぁ悪りぃ悪りぃ」
・・・ただ一人、死そのものである彼の者を感じとった者がいた。この世界において唯一たった一人で上位種を倒す可能性を持っている男。
カケルだけがその存在を知る事ができた。




