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第9話 嵌められたユウ

 カケルがフー・ファン兄弟と戦い始める数分前。ニアは長い廊下を一人シブゥリから逃げるように走っていた。


 「こ、こら!ハァ…ハァ…き、貴様!ま、まて、ハァ…待たん…か!」


 あの部屋から逃げて数分間経ったがまだ衛兵の姿は見えてこなかった。恐らく先ほどの声の主が原因だろう。カケルと名乗っていたあの男がいればシブゥリなんて敵じゃない。そう思い私は更に足に力を入れて走った。


 「ハァ…ハァ…え、えーい!もう良いこうなったらコレだ!」


 そう言ってシブゥリはポケットから一つの指輪を取り出した。


 「岩の指輪(ロック・リング)よ。道を妨げし、壁を作れ!」


 シブゥリがそう唱えたらニアが進んでいた道の床が盛り上がりニアの行く道を塞いだ。


 「な、そんな?!」

 「ハァ…ハァ…全く世話をか、かけおって、もう逃げられないぞ」


 右にドアがあるだけで完全に道を塞がれてしまったニアは行き場を失い壁を背にすることしかできなかった。


 「さて、ニアよ。散々この私に世話をかけさせたのだ。それ相応の対価を払ってもらうぞ?因みにそのドアから逃げようとしても無駄だ。そこは調理室だからな!」


 そう言いながらシブゥリは服を脱ぎ始めた。ニアは逃げ場なくもうダメだと諦めかけた時に調理室のドアが開き手を引かれた。


 「だ、大丈夫ですか?」


 そして手を引かれたその先には、あの時にカケルという男の隣にいた少年であった。


 「な、なんで貴方がこ、ここに?」

 「僕もカケルさんと一緒に助けに来たんです。カケルさんが暴れて、その隙に僕がニアさんを助ける作戦なんです。だからもう安心ですよ!」

 「え、えっと助けに来てくれたことはありがたいんだけど、多分貴方が来た道もうないよ?」

 「・・・え?どうゆうことですか?」

 「シブゥリの奴が魔具を使って道を塞いだのよ。大きな音が今さっきあったでしょ?」

 「アレですか。てっきりカケルさんの戦っている音だと思ってましたよ」


 魔具とは、この世界にある魔力が宿っている道具のことをいう。これは魔力が乏しい人物であっても威力の高い魔力を出せたりすることから冒険者や村人など幅広い人達に使われている。


 「え、じゃあカケルさんに合流できないってことですか?ま、まずい早く何とかしなくちゃ」

 「もう遅いぞ。全くどこまで私に面倒をかけさせるつまりだニアよ」


入口の方を見るとシブゥリが部屋に入って来ていた。


 「ん?貴様は・・・あの時店にいたな」

 「え、き、気のせいじゃないですか?」

 「ふん愚か者がでは何故その女を先ほど助けた」

 「あ、え、えっと〜それは」

 「まぁ良い。ニアを渡せ。そしたら命だけは助けてやる」

 「そ、それは出来ない!」

 「ふんっ!まったくどいつもこいつも私の手を煩わせおって!!!」


 そういうとシブゥリは胸からピストルを取り出したユウに向けた。ユウはニアを庇いながらも何とかこの状況を打破できる策を考えていたが何も思いつかず自信に向けられている銃口を見て喉を鳴らした。


 「まったく貴様らはどこまで愚かなのだ。この村は私が至福を肥やすためにあるのだ。それをギャーギャーとまったくバカは理解できん」

 「くっ、」


 ニアは拳を握り締めながらも自身が今この状況で何も出来ないことに歯痒さを感じていた。


 「さて、坊主もう一度聞いてやるその女を渡せ。それは私の物なのだよ」

 「い、いやだ!ニアさんは物なんかじゃないし!お前見たいな自分勝手な奴にニアさんを渡すものか!」

 「そうか、ならば死ね」


 シブゥリがピストルでユウを打とうとした瞬間に屋敷中が大きく揺れた。


 「な、な、なんだ?!」

 

 それによってシブゥリは大きく転倒してしまった。そしてその隙をついてユウとニアが調理室から出て行った。


 「あ、き、貴様ら!まて、待たぬか!!」


 隙をつかれたシブゥリは反応出来ずユウ達が出るのを見ているしか出来ずにいた。


 「と、とりあえず何とかしてカケルさんと合流しましょう」

 「え、ええそうね。でもどうやって?この屋敷の入口に戻る通路は塞がれてるのよ?」

 「他の場所を探してみましょう。どのみちここにいてはあの人に殺されますし」

 「それもそうね」


 二人はカケルと合流できる場所を探すことにした。カケルが戦っている余波なのか入口を探している間も屋敷中が揺れていた。

 そうして数十分がたったが入口までの道は見つけれてなかった。


 「何なんですかここ無駄に広いくせに入り口まで通じてる通路が全然ないじゃないですか!」

 「それどころかさっきから同じ、つ、通路をって・・・まさか?!」

 

 ユウは自分が言った言葉に対して疑問を感じニアに伝えようとし、後ろを振り返ると通路の先でシブゥリがピストルを構えている事に気がついた。


 「危ないニアさんっ!!!」


 バンッ!と言う大きな音と共にニアを咄嗟に庇ったユウの足から血が飛び散った。

 

 「ッ!!」


 言葉にならない痛みと共にユウは倒れた。ニアは急いで寄り添い血を止めるために傷口も持っていたハンカチで抑えた。


 「ちょ!大丈夫!?」

 「え、ええ。な、何とか・・・でもすいません。とてもじゃないけど歩ける状態ではないですね」


 そしてニアに対してピストルをうった張本人であるシブゥリが近づいて来た。


 「鬼ごっこは終わりだ。それにしても心臓を狙ったつもりだったんだがな。運のいい奴め」

 「やはり僕達は貴方に嵌められていたんですね」

 「ほぉなんだ気がついていたのか」

 「どうゆうこと?」

 「簡単な事ですよ。ニアさんが言ってたじゃないですか道を塞いだって」

 「まさか?!」

 「そうです。僕たちは魔具によって作られた道を何度も走っていたんです」


 やられたとユウは思った。確かにシブゥリは疲弊していたし、あの揺れで転びはしたがすぐに追いかけれないほどではなかった。さらに道を塞ぐことをできる魔具を持っていたのなら道を作る事だってできる。そんな簡単なことさえ予想できていなかった。


 「さてここまでだな。最後の最後で私の手のひらの上で弄ばれて死ぬ。私の邪魔をした貴様とってお似合いの死に方ではないか!!!」


 シブゥリは高笑いをしながら勝ち誇っていた。それもそうだこの状況は僕たちにとって最悪の状況だ。シブゥリはピストルと魔具があり自由に屋敷の構造をかえられる。対して僕たちは武器という武器を持ってない。いや剣は一応持っているが抜くより早くに打たれることなんて誰でも理解できる。


 「さて最後に言い残すことくらいは聞いてやる。いや待てお前を人質にしてあの男を私の配下とするのもいいな」

 「ざ、残念ですけど僕を人質にしたってカケルさんは従いませんよ。だいたいあ、貴方みたいな人があの人をし、支配なんてで、出来るわけないでしょ」

 「ふんっ。まぁいいフー・フェン兄弟なら万が一にも勝つ可能性などないだろうからな。さて言い残す言葉は決まったか?それとニアよお前にはきつ〜いお仕置きをしてやるからな?その後は隅から隅まで私が味わってやる」

 

 下卑た笑みを浮かべながらシブゥリはニアを見て涎を垂らした。その時だった、遠くの方からドンドンと壁を壊すような大きな音を立てながら何かが近づいて来ていた。


 「な、なんだ!?・・・ま、ま、ま、まさか!?」

 「そ、そうですよ。多分」


 そうして最後の壁が壊されて出て来たのは僕がよく知る顔だった。


 「カケルさん!」

 「悪い悪い。お前がすぐに来ると思ってよ。まさかシブゥリがこんな隠し玉持ってるとは思わなかったしな」

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