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プロローグ

とあるダンジョン


 僕は今狼に似た魔物に追われている。このダンジョン内は広くモンスターの数も少ない比較的安全なところのはずなのに………


 まだ死にたくない彼女との約束をやたせず死ぬことはできない!


 こんなことを考えながら30分近く魔物から逃げ回っている。

 僕がなぜ今このような状況に陥っているのかは数時間前に遡ることになる。


〜遡ること数時間前〜

 僕の住んでいる村は王国などからかなり離れた場所にある。比較的モンスター達も大人しく田畑や豚や羊が襲われることもあまりない至って平凡な村だ。そんな村で生まれた僕には四人の幼馴染がいた。そしてその内の一人は2年前に王都にあるギルドにスカウトされ、僕らもそれを追うように4人でパーティーを組んで村を出た。

 そんな旅のある日に僕たち4人のリーダー格であるバンが近くにあるダンジョンに行こうと誘ってきたのである。僕は怖かったが皆んなが行くといい渋々行くことにした。


 しかしそれが全ての始まりだった。


 僕らは早速ダンジョンに入り探索を開始した。ダンジョン内は薄暗く、湿気が肌にまとわりついていた。 そして、そこそこダンジョン内を進んだ時に瞳に赤い光を宿し黒き体を持つ奴は現れた。


 「ま、魔物?!」

 「はぁ?なんでこんなところにいるんだよ!」


 ダンジョンに限らずこの世界には多くのモンスター達が住んでいる。凶暴なものから温厚な存在までいる。その中でもとりわけ危険なのが魔物である。魔物は理性なく目の前にある存在を食うことしか考えてないとされている。そんな奴がこのダンジョンに生息していたのだ。

 当然僕らが勝てるはずもなくみんなで逃げたのだが僕らでは狼型の魔物に追いつかれるのは明確だった。

 だからだろう僕ら幼馴染の中で一番実力が低い僕に逃げている最中、バンは足を引っ掛け転ばせそのまま3人で走り去っていった。全てがスローモーションのように感じた。

 何が起きたのか理解するまでには数秒かかった。仲間が僕を見捨てたことに絶望したが魔物がこちらに迫っていることを思い出し必死に逃げた。


 そして今この状況にいたる。足元の瓦礫に何度もつまずき、息はもう限界だった。後ろで魔物の息遣いが近づいてくるたびに胸が締め付けられるような死の恐怖が全身を支配していた。だが、足は止められなかった。止まれば、死ぬことは分かっていたからだ。

 そして遂に最深部あたりに辿り着いた。そこには大きな魔法陣が床に描かれている幻想的な大空洞となっていた。


「す、すごい・・・」


 そんなありきたりな言葉を思わず口にして立ち止まってしまった。


 後ろに魔物があることも忘れているほどに・・・


「あ、しまっ」


 全てを言う前に魔物による爪の攻撃によって僕は大きく吹き飛ばされた。


・・・致命傷だった。


 床に横たわり起き上がる力も出なかった。魔物はそれを分かっているのか僕に狙いを定め無慈悲な殺意をその目に宿しながらゆっくりとこちらに向かってきていた。


嫌だ・・

まだ、まだ死にたくない・・・・

彼女にもう一度会うために僕はまだ死ぬわけにはいかないんだ・・・!


 僕には死なない理由があった。王都に1人行ってしまった彼女との約束が僕をまだこの世に意識を繋ぎ止めていた。


 生きたい、死にたくない、誰か、誰が助けて!


 誰に聞こえるわけでもない声を心の中であげていた。そんなことが魔物に分かるわけでもなく魔物は遂に僕の目の前にまで現れた。


 僕にはできることが何もなかった。それでも諦めたくなかった。


・・・そんな時だった。


 魔法陣が光出した。そして僕と魔物の間に1人の男が立っていた。

 

 「ん?ここどこだ?」


 そんな呑気なことをいいながら立っていた男に狼型の魔物は先ほどと同じように爪で切り裂いてきた。男はその攻撃に対して反応もできていないのかただ突っ立っていた。僕は彼を助けるために声を出そうにもその力もなくただ魔物に切り裂かれるのを見ていることしかできなかった。

 しかしその攻撃は男に傷一つつけることがなかった。魔物の攻撃は確かに男を捉えていた。だが男は吹き飛ばされることもなく傷を負うこともなくただ平然とそこに立っていた。

 そしてゆっくりと口を開き


「なんだ、お前?」


 男は自分に対して攻撃をしてきた狼型の魔物に対して、僕にでも分かる分かるくらいの殺気を放った。魔物にすら感じることのなかった恐怖を感じたがそれは魔物の同じだったようで、魔物は大きく男から距離を離した。

 だが、それを超える速度で魔物の目の前に飛んでいた男が拳を握り次の瞬間、男の拳が風を切る音が響き、魔物の巨大な体が音もなく崩れ去っていった。


「おい、お前大丈夫か?」


 そして魔物を一撃で消滅させた男がいつのまにか僕の目の前に立っていた。


 「は、は、はい・・・」


 これが僕と僕の人生を変えることになる男との出会いである。

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