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魔石を吸収することで新規魔法
ほかにも生まれつきなど
強くするためには何度も使う、同じ魔石を複数接種するなど
「ん・・・ここは?」
目が覚めたが視界が真っ白だ。頭は長い眠りから覚めたようでぼんやりするが意識ははっきりしている。まださっきの空間にいるのか?と思ったが、地面もあるしよく見ると周りは草木が生い茂っている。視界が白いのは濃いきりのせいのようだ。
「本当に俺は転生したのか?」
上体を起こすと違和感がある、なんと身体が剣道を本気でやっていた頃に戻っていた。普段ならありえないことだが、先ほどまでの現実味のない会話とこの戻った体は俺が本当に転生したことを知らしめるには十分だった。
「とりあえず現状を整理しよう、前世で深い後悔を持って死んだ俺は転生した。今世では正直に生きて、今度こそ守りたいものを守れるほどに強くなって幸せになるんだ。」
「そのためにも強くならないといけないんだけど・・」
考えをまとめたのはいいが、強くなる方法もここがどこだかわからない現状では何もすることができないし、幸い獣の気配はないがそもそも食べ物や水がなければ長く生きることすらできない。とりあえずの目標は食料探しを行うことにした。こんだけ草木があるのなら鑑定眼を使えば食べれる果実くらいあるだろうと甘い考えで俺は歩き始めた。
「くそ、またこの果実か・・・」
俺はこの日何度目になるのかもわからない鑑定を果実にかけていた。
精霊の果実
禁忌の森の奥にのみ群生している伝説の果実。味は不明だが水分を多く含んでいる。魔法を覚えているものは食べるとすぐに死に至る。
「鑑定眼は天恵らしいけど、天恵と魔法の違いが判らないからわかるまでは食べないほうがいいよな。食べただけで死ぬのは嫌だし、死なないのなら食べられるんだけどなぁ、それにここってやっぱり・・」
禁忌の森
常に霧に覆われている。深部には精霊が棲んでいると伝説があるが、入って生きて出られた者はいないため真実は誰にもわからない。世界に点在する最難易度ダンジョンの一つ。
「戦闘能力もないのにこんなやばいとこに転生するとかどんだけ運が悪いんだよ」
愚痴を吐きながらも死ぬわけにはいかないため、更に歩き続けること数時間後日が傾き始めた。今は魔物もいないが精霊が住んでいる伝説がある。精霊に危ないイメージはないが、ここは異世界で何があるかわからない。無理はせずマークしていた洞穴に帰ることにした。洞穴の中は電気も炎もないため真っ暗だが、人一人入れるほどの空間はあるため近くの葉を敷いて横になる。
「明日は何か見つけないと」
初日から何も進展がなかったことに、焦りを感じながらも慣れない体で一日中歩き回っていたため、疲れにより初日はすぐに眠ってしまった。次の日目が覚めるとすぐに歩き出すことにした。日が昇っているうちに何かしらの成果が欲しいところだ。早速果実を見つけるがまた精霊の果実だ。軽く絶望しながらも奥に進むが、奥に進むにつれ霧が濃くなっていることに焦りで全然気づかなかった。
5時間後〜
「やばいな、またさっきのとこに戻ってきた・・・」
俺は物の見事に道に迷っていた。同じような景色に昨日よりも濃い霧が、方向感覚を狂わせていた。水分も食料も確保できていないのにどうしたものかと考えているとガサガサと目の前の茂みが揺れた。
「なにかいる!?」
反射的に身構えるが、持っているのは道端で拾った太い木の棒1本だ。その時茂みから1匹の灰色の狼が飛び出して来た。そしてこれが初めての魔物との出会いだった。
「小さいけど、これが魔物?」
茂みから飛び出してきたそいつは目が赤い灰色の狼だ。サイズは大型犬より少し小さいくらいで、爛々と光る三つの目と長いしっぽが特徴的だ。警戒しているのか、低い姿勢のままピクリとも動かない。だが、こちらを見る目が完全に獲物を見る目になっている。
「くそ、昨日は一回も会わなかったのに!とりあえず鑑定してみよう」
灰狼・幼体
状態 空腹 興奮
天恵 影使い
魔法 影槍Ⅰ 影移動Ⅱ
灰狼は成体になると複数の街を滅ぼすことができるほどの力を持つS級魔獣。個体数は少ないうえ成体まで行くには100年かかるといわれている。幼体時点ではそこまで強くないが、警戒心が強く影で逃げるため、危険度はⅮ級で見つけ次第討伐推奨の危険モンスター。
見た目ただの狼なのにめちゃくちゃやばい魔物じゃん。昨日何もなかったから油断してたけど、ここは異世界の禁忌の森とかいうやばいところなの忘れてた。動揺しつつも鑑定結果を見直すと幼体は強くないらしい。幼体なら行けるんじゃないかと思い、剣道の構えを取り魔物に向けるには心もとない木の棒を握る手に力を込める。灰狼が動き出した!早いが目で追えないほどではない。俺は走ってくるのに合わせて木の棒を振り抜いた。
「バシィ!!」
木の棒が走ってくる勢いそのまま灰狼に直撃した!
「これならいける!」
木の棒とはいえ異世界の棒だ。結構強くたたいたのに折れる様子はない。この調子で何回か続けていればいけるはず。もう一度同じ構えをして灰狼をみる。いい一撃が入った灰狼は少し離れたとこで口から血を流している。だがさきほどとは違い、俺の事を餌としてではなく敵として認識したようで、さっきよりも姿勢を低くしてこちらの出方を伺っているようだ。互いににらみ合うだけの時間ができたが先に行動を起こしたのは灰狼のほうだ。灰狼の周りに小さな魔法陣が浮かぶ。次の瞬間黒いとげのようなものが飛んでくる。
「それが魔法か!」
気づいたのはいいが早くて避けきれない。とっさに体をかばうように木の棒を前に突き出した。それが功を制したのか、黒い魔法は木の棒にあたり軌道がずれて肩に当たる。とても痛いが死ぬよりはましだ。唯一の攻撃方法であった木の棒を失ってしまったが、ここで諦めるわけにはいかない。痛みをこらえながら灰狼のほうを見るがどこにもいない。
「あいつ魔法だけ撃って何処かに逃げやがった!」
逃げたと思い気を緩めた瞬間思い出す。灰狼のスキルはもう一つあった。確かその魔法は・・
「影移動!」
俺が叫んだと同時にやつは近くの木陰から飛び出してくる。飛び出してきた勢いのまま右腕にかみつかれ押し倒されてしまう。無事な方の手で引きはがそうとするが、かむ力が強く素手ではどうすることもできない。
「ガルル!」
「ぐあぁ」
血が止まらない!さっきの傷と合わせて大量に出血したせいだろう。かまれている腕からどんどん感覚が失われていく。ぼんやりする頭の中で前世での後悔がフラッシュバックする。
「くそ!せっかく転生したのにこのまま何も出来ずに終わるか!」
眼だけで周りを見渡すとさっき折れた木の破片があった!鋭くとがっているそれをやつの喉笛に突き刺す!
「ガルル!」
「離れろ!犬っころが!!」
無我夢中で何回もさすと噛む力が徐々に弱まりやっと口を離した。すぐにそばを離れる。
「・・・ガルル」
低く鳴いたあと灰狼は動かなくなったが、灰狼の体から黒い石が出てきた。不審に思いながら手に取ってみる。触った感じただの黒い石だが、初めて倒した魔物から出てきたものだ。特別なものであってくれと思いながら鑑定眼を使ってそこには期待通りの情報が浮かんできた。
灰狼 幼体の魔石
状態 未取得
天恵 影使い
魔法 影移動Ⅰ
灰狼・幼体の魔石。取得することで付属されている魔法を取得することができる。
「こうやって魔法を手に入れるのか!」
異世界らしさが出てきてうれしくなるが、視界がふらつく。体を見ると先ほどの傷から血が流れ続けている。
「どうしよう、血が止まらない」
止血をしようと思うが、当たり前のように止血の仕方なんて知らないし、ここは森の中で道具もあるはずがない。傷を負って手に入れた魔石も傷を癒すようなようなものではないし、そもそも使い方がわからない。せっかく命の危機を抜け出したのに早くも絶望してしまう。何かできないかとぼんやりした頭で考えているとたくさんなっている精霊の果実が目に入る。今となっては見慣れた果実だが食べられないのなら意味がない。
「いや待てよ、灰狼が使ってたのが魔法なら俺の鑑定眼って魔法じゃなくないか?」
魔法のような能力だから勝手に勘違いしてたけど、ここは異世界だから何があってもおかしくはない。一つの希望を見出し自分の体を鑑定してみる。
実
状態 負傷 脱水
天恵 鑑定眼
「やっぱり鑑定眼は魔法じゃない!」
なおさら天恵が何かわからないが、とりあえず今は水分だ。食べることができると思うとたくさんなっている精霊の果実が不思議と全部おいしそうに見える。早速近くに生っている果実を一つもぎ取り口にしてみる。
「なんだこれめちゃくちゃうまいな」
今まで食べたどの果物よりも瑞々しく甘い。食べ続けること数分あっという間に9個を食べ切り次の果実にも手を伸ばすが、手から落としてしまう。久しぶりの食糧で舞い上がり忘れていたが、噛まれた傷からはいまだ血が流れている。すでに失った血は多くあまり体に力は入らなくなってきた。果実を食べたはいいが、治癒能力もないし食べたそばから血肉になるわけでもない。
「食べ物はあるのに・・早く怪我を治療しないと・・」
周りを見渡すが深い霧に包まれていて相変わらず人気は全くない、それになんだか眠くなってきた。眠ったら死んでしまうと傷をたたいて痛みで目を覚ましながら歩いていると、森の中に似つかわしくない青い光が見えた。その青い光はふらふらと霧の奥に消えて行く。
「待ってくれ!けがをしているんだ!」
痛みを我慢しながらも青い光を追いかけると少し開けた場所があった。その真ん中にポツンと小さな祠がある。祠には何も祀られてられてないが、ここだけ霧がかかってなく神聖な感じがする。青い光は見えなくなってしまう。
「誰かいませんか!けがをしているんです!」
叫んでみるが青い光はもう見えない。それどころかわずかに残っていた体力が尽きて倒れてしまう。
「助けて下さい・・・お願いします!こんなところで死ぬわけにはいかないんだ・・・」
死にたくないと強く思っても現実は非常だ。血を失い続けた体にはもう力が入らない。意識が途切れる瞬間祠が青く光った気がしたが、、そこで俺の意識は途切れた。




