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理の継承者  作者: 鈴本 流幸
第六章
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届かぬ物資ー理由ー

 セイヤたちがワインを購入している頃、一台の荷馬車がいつもよりも速く進んでいた。


「いつも懇意にしていただいているのに、今日は遅れてしまい、申し訳ございませんでした」


 愛用の槍を隣に置いた男性が手綱を握っている商人に謝罪する。


「とんでもございません。あなた方が理由もなく遅れることがないのは分かっているつもりですよ」


 商人はにこやかに答えると、槍の男性は苦笑する。


「ははは……護衛の仕事自体は順調に終わったんですが……」


 この言葉だけで納得する商人だったが、槍の男性の言葉の続きが荷台のほうから聞こえてきた。


「その後、護衛していたお嬢さんに『私の専属の護衛になってください(はぁと)』って言い寄られていたんだよな!」


 強面の男性が言った言葉にやはりと思う商人は槍の男性のほうを向く。


「貴方様も大変でございますな」

「いえ……今回はたまたま……」


 槍の男性が全てを言う前に荷台の方からドン!と何かを強く叩いた音が聞こえた。

 槍の男性は体全体、商人は首を少しだけ後ろに向けると荷台の床に握り拳を置く女性がゆっくりと御者台のほうを向く。


「たまたまですって?護衛対象に女性がいるときは毎回よ、毎回!その度に私のことをジロジロジロジロと見てくるのよ?護衛対象じゃなかったら睨み返してるわよ!」


 その時のことを思い出したのか再度荷台の床をドンドンと叩き出した。


「お嬢さんも毎度神経をすり減らして大変ですな。すみませんが、手綱を少し任せても?」

「えぇ、構いませんよ」


 商人は槍の男性に手綱を預けると荷台の中に入り、少しの間物色をすると、とある袋から何かを取り出した。


「もし宜しければ、こちらを召し上がってください。もちろんお代は結構ですよ」

「!?これって『マロンベリー』?私が好きなこと覚えてたの?」

「はい、皆様はもちろん懇意にさせていただいている方々からお聞きしたことは全て覚えておりますとも」

「まぁ素敵♪お言葉に甘えていただきます」


 マロンベリー。

 ぶどうのように実がたくさん房についているが、実の形や味が栗になっている果物。

 これを好物と言うだけあり、幸せそうにパクパクと食べていく女性。

 商人は女性の機嫌が戻ったことを確認すると、ゆっくりと御者台に戻る。


「ありがとうございます、助かりました」

「いえいえ、これくらい大したことではございませんよ」


 この場を収めてくれた商人にお礼を言う槍の男性。

 お礼をしっかり受け入れた商人は手綱を槍の男性から受け取る。


「では少々遅れておりますので、先を急ぐことにしましょうか」


 商人は馬に喝を入れ、客先へ向かう。

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