とある館にて
セイヤたちがいる大陸の遥か北。
いくつかの山を越え、深い森を抜けた先に迎賓館のような大きな館が立っていた。
この館の中を赤いショートヘアで切長の目をした女性が歩いている。
長い廊下を歩き、階段を上がり、また長い廊下を歩く。
豪奢な両開きの扉の前に立つとノックもせずに扉を開ける。
部屋に入ると扉と同じように豪奢なテーブルやベット、棚などがあったが、中には誰もいなかった。
しばらく部屋を見回した後、部屋の奥のほうへ向かう女性。
向かった先にはバルコニーがあり、そこには白い椅子が二脚と白い丸テーブルが一卓置かれていた。
テーブルの上にはヴィンテージワインが置かれてあり、ガウンを羽織った男がワインを楽しみながら椅子に座っていた。
「ここにいたのね、ホムラ」
ホムラと呼ばれた男はワインを一口飲んだ後、女性に返事をする。
「よぉ、カナ。どうした?」
「今年もアレをやるなら、そろそろ準備しないといけないわよ?」
「あぁ、もうそんな時期か。招待状を作らないとな」
「まぁ……今年も同じでしょうけど」
そうだな、と返事をしようとした瞬間、ホムラの脳裏に光がよぎる。
しばらく呆然とした後、ニヤリと笑うホムラ。
「……どうしたの?」
「カナ、今年はひと味違うかもしれないぜ?」
「なんですって?」
ホムラはグラスに残ったワインを一気に飲み干し、グラスをテーブルに置いた後、勢いよく立ち上がった。
「ようやく現れたな、青天の継承者!」
嬉しそうなホムラを見たカナは心の中でため息をしていた。
(そう、青天のが……今年は荒れそうね)
部屋に戻ったホムラは着ていたガウンを勢いよく脱ぎ捨てた。
「今年は楽しくなりそうだ!」




