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理の継承者  作者: 鈴本 流幸
第四章
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継承者としての戦い ー決着ー

 ドッソの一言で引き締めていた空気が一気に霧散する。


「ドッソ、あなた今なんて言ったのかしら?」

「ん?なんだ、聞こえなかったのか?帰るぞって言ったんだよ」


 怒りからか全身が震えだすルーマァ。

「前から思っていたけど……バカなの、あなた!?相手は一人、それも手負い!それに比べてこっちは四人。どこに帰る理由があるのよ!?」

「四人?四人だと?」


 ギロリとルーマァをにらむドッソ。

 途端、周囲の空気が一段と、いや十段と重くなったように全員が感じた。睨まれたルーマァ本人は後ずさり、堪らず尻餅をつく。


「ルーマァ、お前が今立っていられるのはそこの人間が『殴打』したからだ。もし手に持っている武器を使われていたら、お前はもう終わっていたよ」


 いいか?とドッソ。


「こっちは本来は『二人』だ。……まぁこの際、数はどうでもいい。ルーマァ、リレン。それにゴウガも。お前らはそこの人間に負けたんだよ。敗者は敗者らしく大人しくしていろ」


 ドッソから現実を叩きつけられたリレンとルーマァは顔を背け、押し黙るしかなかった。


「そして俺はそいつと戦う気はない。リィ、お前は——」

「ドッソ様に戦う気がない以上、私もそれに従います」


 リィルロッヒの言葉に「さすが、リィだな」とドッソはニヤリと笑う。


「というわけで、こっちに戦うやつは誰一人いない。……今回のこの戦い、お前たちの勝ちだ」


 だが、とドッソ。


「戦いに負けはしたが、俺たちが生きているのもまた事実。次会う時のためにここは引き帰らせてもらう」


 セイヤとドッソ両者の視線がぶつかって数十秒、セイヤは目を閉じ、『青天(せいてん)(ことわり)』を鞘に収める。


「賢明な判断だ。おし、さっき言ったとおりだ……帰るぞ!」


 ドッソの一声で先に動いたのはルーマァ。

 その場に立ち上がり、セイヤをキッとひと睨みした後、転移したかのように消えた。


 (転移符(てんいふ)?いや<天翔(あまかけ)>に近いか?)


「リレン、お前はリィに連れて行ってもらえ。リィ、頼んだぞ」

「はい。リレン様、私におつかまりください」

「すまぬ、世話をかける」


 リレンがリィルロッヒの肩あたりを掴んだ後、二人ともルーマァと同じようにその場から消える。


「そういやぁ、人間。お前、名前はなんて言うんだ?」

「……セイヤ」

「らっはっは!そう警戒するな。名前を聞いただけだろう?セイヤ、お前は俺たち『四魔星(よんませい)』のうち三人を倒した。お前の強さは俺たちの想像以上のものだった」


 だが、とドッソ。


()()()()()()()()()()。弱すぎると言ってもいい。今のお前と何度戦っても負ける気がしない」


 ドッソはセイヤに背を向けて、肩越しにセイヤを見る。


「だから強くなれ、セイヤ。お前には期待している」


 そう言い残すと、ドッソもその場から消えた。

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