継承者としての戦い ー二十ー
リレンは万が一のことを考え、セイヤの落下地点にもう一撃を与えるため再度ハルバードを構える。
鎧の重さもありリレンの落下速度も相当だが、火の鳥の大群も追従する。
あと少しで地上というところで何かが動く影があった。
リレンは構えたハルバードをそのままに、両足で難なく着地。
追従していた火の鳥の何羽かは地上に激突したがそれ以外は停空している。
瞬間、斬撃を帯びた衝撃波が横から迫ってきた。
リレンはこれを先ほどと変わらず受けきるが、この衝撃波により火の鳥の大群は全て一掃された。
内心ルーマァに詫びながら衝撃波がきた方向へリレンは向かう。
すると思った通りの人物——傷を負ったセイヤが『青天の理』を振り抜いた状態で立っていた。
リレンが向かってくるのを見たセイヤは再び『青天の理』を構える。
「<空破>!」
「!馬鹿の一つ覚えか!!人間!」
空破の中を平然と突き進んでいくリレンは空いている手でセイヤの胸倉を掴み、持ち上げる。
「貴殿は今後脅威になると思ったが、我の勘違いだったようだ」
「……」
「最後だろうからな。一つ貴殿に伝えておこう。我は貴殿の相手を二十秒ほど行うのが役割だったのだ」
「?」
「もちろん最初は貴殿を我が倒そうとしたのは事実。だがルーマァのくせでな。体に触れたあと、口に指をあてる仕草は『口に当てた指の数ぶんの時間を稼いでほしい』という暗黙のメッセージだそうだ。指一本分で十秒。今回は二本だから二十秒だな」
"ルーマァは人差し指と中指を揃えて、リレンに向けて投げキッスをする"
「何か言い残すことはあるか?」
セイヤはリレンの鎧を一瞥して言葉を発する。
「もう少しだと……思うんだけどな」
「最後の言葉がそれか。……後悔して逝くがいい」
後方にいたルーマァは先程「Ⅴ」と刻まれた水晶玉の他にもう一つ取り出していた。その水晶玉には「Ⅱ」と刻まれていた。
「これは強力だけど発動までに時間がかかるのがネックなのよね」
今のルーマァが「Ⅱ」の水晶玉を発動するのにかかる時間は約二十秒ほど。
リレンが稼いでくれた時間と同じである。
ルーマァはリレンがセイヤを持ち上げているのを見ると、少し考え始めた。
「んー、リレンも巻き込んじゃうけど……まぁいいかしら。人間。冥土の土産に見せてあげるわ」
水晶玉は黒いオーラを纏い始め、透明だった水晶玉が次第に赤くなっていく。
ルーマァは言葉を発する。
「赤の魔門・第二開『天火上登』」
セイヤとリレンがいる足元に巨大な陣が描かれていく。
陣が完成すると赤く光り出し、そして。
天を貫くかの如く、火柱が上がった。




