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理の継承者  作者: 鈴本 流幸
第三章
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動き出す魔

 セイヤが以前住んでいたとこの門の近くに人が集まっていた。

 班長や同僚たちだ。

 襲撃を受けたときに負った傷は無事に完治したようだ。


「よーし、明日から行う見回りについて話すぞ」


 前回使用した周辺地図を広げて説明する班長。


「今回はここの拠点に向かう」


 班長は青い点の左側にある赤い点の部分を指しながら言う。

 すると、同僚たちから不満の声が上がる。

 班長も嫌そうな雰囲気を出していた。


「仕方ねーだろ。俺だって嫌だけど、むしろここが一番見回りをしなきゃいけないとこなんだからよ」


 今回班長たちが見回りを行う場所は、前回とは大きく異なる。

 前回は拠点を中心に周囲の森の見回りだったが、今回はとある一つの場所を見回りする。

 その場所は今回向かう拠点から更に南西に向かった先にある廃都(はいと)だ。

 廃都となる前は大きな町だったのだが、魔者(まもの)の襲撃に会い、廃都と化した。

 ならその廃都は魔者の巣となっているのではないか?と思うかもしれないが、

 それなら「廃都」とは言わずに「魔者の巣」と言うだろう。

 そう言わない理由は単純で、しばらく滞在していた魔者たちが数年前に突如居なくなったからだ。

 このことは人々に知れ渡り、復興しようと人々は立ち上がったのだが、

 襲撃の傷跡は大きく、数年経った今も全く復興できていない状況だ。

 そんな状況のなか再び魔者の襲撃を受けるわけにはいかないため、見回りが必要なのだ。


「ほら、ここは他の見回りに比べて魔獣に遭遇するのは極端に少ないだろ?」

「確かにそうなんですけど……あそこの空気が、なぁ?」


 周りの同僚たちに問いかけるように言うと、うんうんと頷く者が多かった。

 魔者の襲撃の影響からか廃都付近の空気は(よど)んでいる。

 ただ澱んでいるだけならまだマシなのだが、一時間もいると人体に害を与えるのだ。


「だーもう!うるせーな!俺だって嫌だって言ってん……ん?」


 班長は同僚たちを大人しくさせるために声を大にして言っている間に、

 視線を一瞬門に向けると、門の外から一人の男性がふらふらしながら歩き、そのまま倒れたのが見えた。


「おい!大丈夫か!?」


 班長が倒れた男性のもとに駆け寄ると、同僚たちもその後を追う。


「誰か医者ぁよんでこい!……おい、しっかりしろ!」


 班長は同僚に指示を飛ばしながら、男性のそばに座り込む。

 男性は命に別状はなさそうだが、外傷がひどかった。

 班長は申し訳なさそうな顔で男性に問いかける。


「そんな状態なのにすまねー。何があったか話せるか?」

「わ……私は……南にある町か……ら、商売のために……北に向かっていたのです……が、ど……道中で……ま……魔獣に……!」

「そうか。護衛は?」

「いまし……たが……人間に……殺さ……」

「魔獣と一緒に人間がいたのか?」

「はい……赤い……眼の人……間に!」

「……なるほどな。無理させてすまなかった、今はゆっくり休むといい」


 今の話を聞いていた同僚が班長に小声で話しかける。


「班長、赤い眼の人間って……」

「あぁ、嬢ちゃんが言っていた魔人(まじん)のことだろうな」


 班長も小声で答え、立ち上がろうとしたが倒れた男性に腕をつかまれる。


「どうした?まだなにかあるのか?」

「こ……これを……」


 ここに来るまでずっと握っていたのだろう。血がにじんでいるくしゃくしゃの紙を男性は班長に渡す。

 班長は受け取った紙を開くと、中身は手紙のようだった。

 手紙の内容を読んだ班長は驚愕する。


「な、なんだと!?」

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