第2皿 木の実のグラノーラ
火燃石という、赤ん坊の拳大の赤い多面体が内臓された四個ある魔導コンロ。
これのお陰でいちいち薪で竈を焚くことがなく、半年ほどは交換せずに持つというので便利ではあるのだが、見た目がまんま現世のIHコンロで、いささか異世界情緒というか浪漫に欠ける。
とは言え魔導コンロが自宅に設置されているのは、村長とかそれより上のある程度余裕のある家庭だけで、一般庶民は普通に火打石で火を熾し薪で煮炊きをしているので、どうしてもやろうと思えば煙突工事以外は比較的容易にできるのだが、便利なものがあるのにわざわざ縛りプレイをする意味がないので、これはこれで異世界要素として甘受……享受するのもにやぶさかではない。
「あと必要なのはオーブンかな? オーブンがあれば料理の幅も劇的に広がるし。とは言え絶対に安いもんじゃないだろうから、先立つものがなぁ……」
と何やら小声で愚痴りながら、火加減を調節していたコック姿の青年――『苗場市太郎』というのが本来の名前だが、いつの間にか周りから『スポンタネ』と呼ばれ、いちいち訂正するのも面倒なので、いつの間にやら定着した感がある――は、それぞれの鍋の中身を木べらで掻き混ぜ、その出来栄えにおおむね満足するのだった。
と、その時、軽快な足音とともに階段を降りてくる足音が聞こえてきて、
「お早うございます、マスター! 遅くなってすみませんっ」
普段着のままの妖精族の少女――この『森の隠れ家ビストロ・女神亭』唯一の従業員で、住み込みで働いている看板女給のミュゼットが、朝から溌剌とした表情で店の中へ飛び込んできた。
青年の価値観では店に若い女給がいるのはごく当たり前のことだが、こちらの世界の常識ではあり得ないことらしい。
最近常連になった三人組の女騎士たち曰く、
「ミュゼットちゃんってマスターの奥さんなんすか?」
「あはは、違いますよ~。単なる雇われ……というか居候で、マスターと使用人な関係ですよ~」
「――妖精族が人の下で働くなんて、お伽噺でしか聞いたことはないわ。奴隷ってわけでもなさそうだし、どんな関係なのか聞いても構わないかしら?」
「いや~、そこは聞くも涙、語るも涙の長い話があるのですけど、暇なので妖精族の里から出てフラフラしてたら空腹で倒れたところ、マスターに拾われて美味しいご飯を食べさせてもらったので、一緒にいれば食いっぱぐれがないかと」
「ぜんぜん長くもないし、泣ける要素も一欠けらもないっす!」
「ちょっと待ちなさい、スポンタネ! いまの話からして、所帯を持っているわけでもない四十歳以下の女給を――それもこんな破廉恥な短いスカートの制服で――店に出すなんて、娼婦を品定めのために置いていると喧伝しているようなものよ! アンタまさか……!?」
そう盛大に勘繰られても仕方のない行為……とのことであった。
思いっきり汚らしいクズ男を見るような、蔑みの目を向けてくる女騎士たち。
その筆頭――元伯爵令嬢で現在は辺境警備小隊の小隊長(人数的には分隊長以下だが)だというメイア・ストールの殺意すら込められた眼差しに、無実のスポンタネは盛大に辟易した様子で「そんなわけないだろう」とぶっきらぼうに吐き捨てた。
ついでに付け加えると、
「あははははははっ、四十歳以下とか赤ん坊も同然じゃないですか! そういう意味なら、余裕で年齢制限はクリアしてますので、ぜんぜん大丈夫ですよ」
けらけら笑って一笑に付したミュゼットの言い分に、実年齢はともかく見た目も言動もどう見ても16~17歳くらいにしか見えない当人を目の前にして、微妙にモヤモヤ……釈然としない表情を浮かべる三人娘であった。
とは言えこの世界での世間的な偏見はともあれ、あくまで同居人というスタンスのまま変わらないふたりである。
異世界人と妖精族とあって、一般的な人族とはそもそものものの見方が違うのであろう。
「……ああ、おはよう。顔は洗ってきたのか?」
「はいっ、ばっちりです。すぐに着替えて掃除をしますね」
掃除用具を取りに行こうとするミュゼットを止めるスポンタネ。
「いや待った。それは俺がやっておくので、悪いんだけど村に行ってイレーヌさんのところで――」
「ミルクとチーズですね。了解しました!」
打てば響く調子でハキハキと答えるミュゼット。
「ああ、荷物になるんで裏で草食んでいる驢馬のロシナンテを連れて行くといい。あと、あればで構わないんだけど、もしも豚を潰していたら血も貰ってきてくれ。――ま、イレーヌさんの都合もあるから、これはあれば僥倖くらいで構わないから」
「はあ、豚の血ですか……?」
「フォンと一緒にこいつをつなぎに使うと一味違うんだ。さすがに野生の動物の血だと病気や寄生虫が怖いからなぁ」
「へー……? そういうものなんですか??」
いまいち要領を得ない――キセイチュウってなんだろな? という――顔で頷きながら、厨房へ顔を出したミュゼットは、コトコト煮えている四つの鍋を確認して、
「あれ? 何種類もスープを作っているんですか?」
と不思議そうに尋ねた。
「いや、こっちの鍋は余った王冠箆鹿の骨とスジでフォン――ソースのベースになる出汁を取っているんだ」
寸胴鍋の蓋を開けて灰汁を取りながら答えるスポンタネ。
そういや一から説明するのは初めてだな、と思いながら続ける。
「作り方はいたって簡単。たっぷりの水が入った寸胴鍋を強火にかけ、王冠箆鹿の骨とスジ、肩の肉を入れ、追加でミルポア――植物オイルで炒めたエシャロットとニンジン、あとクレソンがあったのでこれに岩塩を少々加えたやつ――を鍋に投入。沸いたら灰汁を取り、今度は弱火に変えてトマトを……この量なら五個ってところか、潰しながら入れて、あとは適時灰汁を取りながらしばらく煮込めばいい。あと黒胡椒が必要なので、ポイントに応じて後で通販で購入しておこう思っている」
ちなみにこの世界にも通販はある。
地球でも案外通販の歴史は古く、18世紀イギリスでは大手商人が普通に専門部門を設けて、田舎や僻地からでも依頼があれば行っていたが、この場合の通販というのは“女神の祝福”と呼ばれるスキルを指していた。
「へえ、黒胡椒なんて贅沢ですね」
さすがに昔のように『同じ重さの金と同一の価値』とまではいかないものの、十分に高額な代物を惜しげもなく料理に使うと聞いて軽く驚きを示すミュゼットであった。
「つーか、俺はこっちでも米が水田で栽培されているのは良いとして、穀物でも野菜でもなく『香辛料』のカテゴリーで、贅沢品として麦の十倍の値段で薬屋の取り扱い品になっていることに驚いたけどな」
軽く肩をすくめたスポンタネは、微妙に遠い目をして慨嘆する。
「お米はお腹に良いと言われていますし、何と言っても見た目からして“白い食べ物”ですからねぇ。人族の間では、聖職者か貴族の食べ物ってことになってますから」
白い食べ物というのは見た目が白いミルクから作られたチーズやアーモンド、豚肉の特定の部位などでこれらは貴人が食べるものとされていた。
「まああれですよ、妖精族の伝統で『神がおわします天に近い場所にある食べ物こそ尊い』とか言って、木になっている果物を第一として、地中に生えている芋とか穢れたものを食べる猪やら動物を敬遠する風潮みたいなものですね。お陰で“妖精族は肉を食べない”なんて誤解が蔓延する原因になってますけどねぇ」
大体においてなんで妖精族に弓の名手が多いかというと、『空に近い食べ物』=飛んでいる鳥を弓で射て食べるのが日常だからである。
そんなわけで妖精族が肉を忌避する菜食主義者というのは単なる偏見と言うか、人族側の認識不足にしか過ぎない。
実際、ミュゼットは特に好き嫌いなく何でも食べる(慣れているからか木の実や果物を食べる方を好むのは確かだけれど)。
「ま、そんなわけで煮込みの間しばらく鍋から目を離せないので、悪いけど代わりにお使いを頼みたいんだ」
「ほほう、しばらくって、どのくらいですか?」
「ざっと十時間」
事もなげに答えるスポンタネの言葉に絶句するミュゼット。
「じゅ――十時間! 大変じゃないですか!!」
「大変だけどフォンは料理の基本だからなー、仕方ないっちゃ仕方ない。で、最後に漉して床下の石室にある冷暗所で一晩冷やし、上に固まった脂を取り除けばフォン・ブランの完成となる」
「ほえ~~~っ!」
その手間の想像もつかないとばかりミュゼットは目を丸くするのだった。
「で、こっちの鍋が出来上がったフォン・ブランをさらに煮込んで、王冠箆鹿の挽き肉、卵白、そしてミルポアを再度加えて作るコンソメ・スープとなる。もうちっと透き通れば完成だな」
さらに隣の寸胴鍋を開けて木杓子で掻き混ぜながら解説する。いつもは寡黙なスポンタネだが、料理のことになると別なのか、途端に饒舌になるのを内心「可愛いっ」と思いながら、表面上は神妙な表情で頷くミュゼット。
「――って、まだ手間をかけるんですか!?!」
「まだまだ、こんなものは序の口だってーの。あと隣の鍋は野草と香味野菜、この間モンテカルロ侯爵から貰った赤ワインを加えて煮込んで作るブイヨンで、こっちは三時間ほどでできる」
「へえー……」
十時間と聞いた後だと三時間なんてたいしたことないように聞こえるなあ、と思いながら相槌を打つミュゼットの視線が、最後の小ぶりの鍋に注がれる。
「こっちの鍋は……お湯が沸いているだけに見えますけど?」
「ああ、こっちは俺たちの朝飯用」
言いつつ思い出したかのように潰した燕麦を一掴み、二掴みと投入するのだった。
「……オートミールですか、もしかして?」
なんとなくその正体を察したミュゼットの問い掛けに、「おうっ」と答えしながら、スポンタネは軽く肩をすくめる。
「ここんところ砦の姉ちゃんたちが、バカスカと食うんでそろそろ小麦も王冠箆鹿の肉も底を尽き掛けてきたんで、残っている燕麦と豆で調節しようと思って。――ん? 嫌いだったか」
「いいえ! そんなことないですよ。あははっ、本当に毎日来るんですもんね、メイアさんたち。でも、それなら小麦も一緒に買ってきますか、マスター?」
「いや、そっちは洞矮族の親爺さん――ガストンさんに頼んでいるんで、二~三日中にドワーフ酒と一緒にもって来てくれるだろう。それくらいなら、ま、問題はない」
「ああ、そうなんですか。じゃあ、私は途中で適当な山鳥か兎でもいたら狩ってきますね」
「悪いな」
「いえいえ。弓で狩りをするのは妖精族の得意技ですし、私も腕が錆びないようにしたいので気にしないでください」
頭を振ったミュゼットは、物置小屋から愛用の弓と矢が十本ばかり入った矢筒を引っ張り出してきた。
「じゃあ村に行ってきます! 二時間くらいで帰ってこられると思いますので」
「わかった。それに合わせて朝飯を作っておく」
笑顔で玄関から出て行ったミュゼットを見送ったスポンタネだが、先ほどの『オートミール』と聞いたときに彼女が浮かべた、若干肩透かしを食ったような顔を思い出して、
「いかんな。安易に考えすぎていたか……」
憮然と呟く。「なんだ、これか」という見ただけで味が想像できる……と言いたげな客の言葉が、料理人にとっては一番堪える。たとえそれが従業員の賄いであっても同じだ。
とはいえ、せっかく作ったオートミールを破棄するのも、それはそれで食べ物に対する冒涜だろう。
「――となると、一工夫加えるか」
すっかり出来上げって煮立っている鍋を眺めながらそう呟くのだった。
二時間後――。
「ただいま戻りました! イレーヌおばさんのところで、ちょうど昨日豚を一頭シメたそうで、こっちの瓶に血を分けてもらえました。あと、途中で一角兎がいたので二羽ほど仕留めましたっ」
意気揚々と戻ってきたミュゼットが、血抜きした丸のままの一角兎を二羽、耳のところで掴んで持ち上げて見せる。
地球の兎は脂肪分がないので、食べ過ぎると逆に栄養不足で体を壊すものだが、異世界の兎は雑食なせいか程よく脂肪もあって軍鶏肉に似た味わいがあった。
「おっ、ちゃんと毛皮と頭、ついでに内臓もそのままか。助かるな」
兎は一般的に仕留めたその場で毛皮と頭、内臓は捨てて肉だけを持ち帰るものだと思われているが、それらを残したままちょっとひと手間かけるだけで、格段に味が良くなるのだ。
以前はミュゼットも知らずに処理していたのだが、スポンタネのやり方を見て、いまでは言われなくても丸のまま持ち帰るようにしていた。
「あと、他の荷物はロシナンテに積んだままですが」
「よし。じゃあ、手分けして保存庫へ運んでから朝飯にしよう」
「はいっ、わかりました」
すべての鍋を弱火にしたスポンタネとともに、仔犬がまとわりつく感じでミュゼットはその後に従ってついて行く。
荷物を床下の保存庫へ運び終えたふたりは、じっくりと手を洗って汚れを払い、厨房へ戻ってきた。
ただしスポンタネの手には小ぶりの缶と紙に包まれた煉瓦の塊のようなモノが握られていたが。
「さっき貰ってきたミルクとバターですよね? どうするんですか、マスター?」
朝食はオートミールじゃないのかなァ? と、怪訝そうな顔をするミュゼットへ、にやりと笑いかけるスポンタネ。
「それじゃあツマらんからな。ちょいとひと手間かけようかと思ってね」
「……?」
すっかり出来上がっているオートミールの鍋を見ながら小首を傾げるミュゼット。
「まあ見てな」
言いつつオートミールの鍋を下ろして、代わりにフライパンを火にかける。
油を引かずに火で温めたフライパンにオートミールを投入し、そのままカラカラに乾くまで乾煎り、皿にあけてあら熱を取る。
その間に、保存しておいた木の実――胡桃(鬼胡桃よりも沢胡桃のほうが甘くて良い)と藤豆(藤の花が咲いた後にできるインゲン豆みたいなもの)、カヤの実、あと黒豆があったので乾煎りして、同様に別の皿にさけてあら熱を取る。
フライパンにバターと植物油を溶かして、さらに好みに応じて蜂蜜を加え、トロトロとトロミが出るまで煮込んでシロップを作る。その間に、先ほどのオートミールと木の実を混ぜ合わせ、よく掻き混ぜながら干し葡萄を加え、最後にシロップをかけてよく和え、全体が馴染んだら水分を飛ばして出来上がり。
ついでに薬缶でミルクを軽く温めて殺菌をする。
搾りたての生乳は確かに絶品ではあるのだが、雑菌がいるのも確か。念のために六十三℃、三十分の低温殺菌を施すのだった(熱湯消毒した入れ物に入れて冷暗所に置いて、きちんと蓋を閉めれば二週間ぐらいは持つ)。
「特製、木の実のグラノーラだ」
「ふわ~~っ、美味しそう!」
木製の皿に盛られた、初めて見るオートミールにミュゼットは目を輝かせる。
ついでに別に作っていたコンソメによるオニオングラタンスープも付けて、スポンタネはテーブルに並べた。
「こいつはこのまま食べても美味いけど、牛乳に浸してもオツなもんだ」
「ああ、それで……!」
頷きながら席につくミュゼット。
「さあ、スープが冷めないうちにいただこうか」
「はいっ!」
ふたりとも己の神や精霊に食事の祈りを捧げた後、スプーンを持って朝食に向かい合った。
「さて、と。まずはこのままで……」
呟きながらグラノーラを一掬い掬って、ミュゼットは口へと運ぶ。
「ふああっ、サクサクで甘~い! けどしつこい甘さじゃない!」
田舎で生活していると、どうしても甘いものが恋しくなるが、さりとて甘過ぎるものは口飽きするのも確かである。
だが、このグラノーラの素朴な甘さは控えめで、なおかつ様々な森の恵みが折り重なって、決して口飽きない甘さであった。
「美味しい美味しい!」
夢中でスプーンを何度も口へと運んでいたミュゼットだが、さすがに乾いたものばかりでは物足りない。そこでオニオングラタンスープへとスプーンを延ばした。
――うわ~、なんだか琥珀色のスープに狐色に炒めたタマネギが沈んでいて贅沢~。
芳醇なその香りに唾を飲み込みながら、一口スープを飲み込む。
「――っっっ!?! なにこれ、凄い、もの凄くスープが濃厚ですよ!」
「おう。残っていた王冠箆鹿の肉をほとんど使い切ったからな。並みの肉の分量じゃあ、この味は出ないさ」
自慢げなスポンタネの薀蓄を半ば聞き流しながら、無我夢中でスープを飲み込むミュゼット。
肉はスープの出汁くらいで丁度良かったな、と思いながらスポンタネもスープを啜る。
「タマネギもトロトロで甘くて美味しいーっ!」
「じっくり狐色になるまでキャラメリゼするのがコツだな」
ふんふん、と適当に相槌を打ちながらあっという間にオニオングラタンスープを飲み干したミュゼットは、残りのグラノーラに向かったところで、最初のスポンタネの助言を思い出して、皿にミルクを追加してみた。
どうかな? と、思いながらミルクと一緒にグラノーラを口に含むと、新鮮なミルクとサクサクのグラノーラが噛み締めるごとに渾然一体となって、口の中でマリアージュを果たしのをミュゼットは確かに感じ取った。
「これ、この食べ方が私は一番好きかも!」
瞳を輝かせるミュゼットの様子に、「それは良かった。気に入ったようでなによりだ」そう満更でもない気分で応えながら、スポンタネはほっと安堵の吐息を放つ。
料理人にとっては、食べた人間に美味しいと言ってもらえることが、なによりも嬉しいことなのだ。
どうやら、これで朝からテンションを落さずにやっていけそうだな、そう思いながら自分の分の朝食を口へ運ぶスポンタネであった。
さて、スープはこれでいいとして、メインデッシュは何したものか。とりあえず、朝食後に兎の処理をせにゃならんな……。
そう本日の予定を頭で組み立てながら、スポンタネも朝食を口に運ぶ。
ほどなくご機嫌な朝食を終えて着替えを済ませたミュゼットは、後ろ向きになっていた店の看板を表向きにして、「お客様をお待ちしています」という飲食店の意思表示である椅子をひとつ、入口の隣に置いて、準備万端整えたのだった。
『森の隠れ家ビストロ・女神亭』。
本日の営業もつつがなく、そしてしめやかに開店とあいなります。
ヨーロッパではもともと米はイタリア北部でかなり大規模に水田で栽培されていました。
もともと中東経由でローマ帝国時代に伝わったと思われます。
稲の種類は一種類だけで、作中にあるように17世紀頃までは「香辛料」「お腹に良い薬」として扱われていました。
18世紀になると貴族を中心に主にデザートの材料として食べられるようになりましたが(稲の種類も何種類か増えました)、それでも同じ袋に入った小麦の7倍の値段がしたことがイタリアの貴族同士の手紙に書かれています。本場イタリアでその値段なので、輸入に頼っている他国ではさらに高額だったと思われます。
庶民でも食べられるようになったのは、アジアと貿易が盛んになって以後なのでかなり近代です。
※なお、この作品はあくまで異世界を舞台にしたものであり、現実の世界における鳥獣の捕獲等に関しましては、狩猟免許等の取得が必須です。
《一口メモ》
藤の豆は食用になりますが、大量に食べるとおなかがゆるくなるのでご注意ください。
兎を仕留めた後の処理は、まずはその場で血抜きを行う(「放血」という)。
そのまま持ち帰って内蔵を取り出す。
心臓、腎臓、肝臓は料理に使えるので水で洗って戻し、毛がついたまま冷暗所で五~六日熟成させる。
内臓を取り出して、毛皮を剥いで解体する(足の先に切れ目をいれて、少しずつめくっていけば、靴下が脱げるようにズルッと剥ける)。
脳味噌も食べられるので頭の先まで剥く。
パーツごとにバラした肉はさらに冷暗所で五~六日熟成させるほうがよい。