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「もしよかったら一緒に帰るか?」
昼匙さんからの話は、告白ではなかった。
だとしても、俺は男だ。ここでアピールせずして、どこでするのだ。
「お言葉に甘えてもいいの?」
「甘えてくれ。一人で帰るのも退屈だし」
「普段は朝日くんと一緒に帰ってるもんね」
「元々俺とさやかは一緒の小学校なんだよ」
と言いながらも、俺は本音をポロリと呟いた。
「俺のこと結構見てるんだな」
昼匙さんは顔を真っ赤にして俯いてしまう。モジモジする姿は愛らしい。正直抱きしめたくなる。
俺と目線を合わせることもなく、昼匙さんは手を横に振りながら。
「…………そ、そんなことないよ!」
「時々、俺は昼匙さんと目線が合ったとか思っていたんだけど……アレは全て俺の勘違いだったってことなのか?」
思春期あるあるの一つ。
好きなひとと目が偶然合っているだけにも関わらず、相手も自分のことを意識していると勘違いしてしまう奴。それは俺だ。勘違いしてナンボだよな。
「勘違いじゃないと思う。わたしも時々……寄道くんのこと見てるから」
深くは訊けなかったが、昼匙さんに俺は注目されているらしい。
それだけで俺の学園生活は多少だが、色付くものだ。まぁ、恋愛に発展しなければ、意味がないのだが。
楽しい時間はあっという間だ。
俺も昼匙さんもどちらも電車登校なのだが、家が反対方向なのだ。
もう少しだけ話したい気持ちもあるのだが、改札で少しだけ喋って、その後は「電車がそろそろ来るから」と言われて、そのままお別れだ。
「今日はありがとうね! 寄道くん!」
「また明日!」
お互いに手を振って、俺たちは別れた。