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靴を履き替えて、校門へと向かう。
部活動生の掛け声が聞こえてきた。
運動に励む学生生活も楽しそうだが……。
「俺、鼻くそでも付いてる? もしくは鼻毛??」
俺の背丈よりも小さいさやかが、見上げてきているのだ。
「やっぱり寄道はスポーツがしたいんじゃないかなって」
「……まだあのときのことをゴチャゴチャ言ってるのか?」
中学時代、俺はさやかを助ける為に、大きな怪我をした。
それ以来、激しい運動をすることができなくなり、スポーツ少年だった俺は唯一の長所を失ってしまったわけだ。
未練があるかないかで言えば、確かにあるかもしれない。
でも、俺の心は決まっている。
「お前の笑顔が見れるなら、俺はそれだけで十分だよ」
「………………」
黙り込んだあと、さやかは顔を真っ赤にした。
俺に見られるのが恥ずかしいのだろうか、ほっぺたまで抑えている。本当に可愛い奴である。
「今日もお二人は仲良しそうだね〜♪」
真横から鈴が鳴るような声が聞こえてきた。
相手は————。
「ひ、昼匙さん!?」
「カレンでいいんだよ? 気軽に名前で呼んでも」
昼匙カレンは、俺たちのクラスメイト。
勉強もスポーツも何でもござれの完璧超人。さっぱりとした性格で、誰とでも仲良くなれるスクールカースト最頂点だ。
ボンキュッボンを体現した身体を持ち、多くの男子生徒がお世話になっているらしい。
俺は一度も使用したことないけどな。
「いやいやいや……名前を呼ぶってのは。なぁー、さやか?」
隣に居るさやかに同意を求めてみた。
だが、さやかは反応を示さなかった。
俺のことなど全く眼中に入ってないのか、ただジィッと昼匙カレンを見ていたのだ。
いや、違うな。睨んでいたのだ。
瞳を三角定規形に変えて。
「うん。昼匙さんでいいよ、ずっと」
「そうそう、さん付けで十分だよな」
「じゃあ。そういうことで、じゃあね」
話をさっさと切り上げたいのか。
さやかは歩みを止めることはない。
「おい……さやか。何急いでるんだ?」
「ん? 別に?」
少しだけ前へ進んださやかが振り向く。
笑顔なのだが、妙に固い表情だ。
「寄道くん。話があるんだけどいいかな?」
昼匙さんが訊ねると、さやかが空かさずに言う。
「今日は忙しいよね? 寄道」
「わたしは寄道くんに聞いてるんだけど」
「僕と寄道は忙しい。はい、これで終わり」
さやかは両手をパンと叩いてから。
「残念だけど、昼匙さんの話は聞けないよ?」
「おい。勝手に話を進めるな。さやか!」
相手は昼匙カレンだぞ。
少しでもお近付きたい気持ちがあるんだよ、俺は。
こんな完璧超人な女子生徒と少しでもな。
「だって、今日は忙しいじゃん」
「何かあったか?」
「遊ぶ約束したの忘れたの? ひ、ひどい」
「遊ぶことは忙しいに入るのか?」
「入るに決まってるじゃん」
さやかと遊びたい気持ちも山々だけど、昼匙さんの話ってのも気になる。てか、俺は昼匙カレンに叶わない恋をしている。少しでもキッカケが作りたいのだ。
「悪いけど、今日遊ぶの中止でいいか?」
「えっ……? どういうこと?」
信じられないと言った表情になるさやか。
驚きを通り越して、怒ってるようだ。
「昼匙さんの話を聞こうかなと思ってさ」
「ふーん。僕より昼匙さんを選ぶんだ」
唇を尖らせて、さやかは「ふんっ」と顔を背けてくる。
腕を組む姿を察するに、余程怒っているらしい。
「寄道は僕を捨てるんだね」
「捨てるって……お、お前な」
「わたしを選んでくれたんだ、寄道くんは」
「昼匙さんも被せてくるな!!」




