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女友達と仲良くしたら、親友の男の娘が壊れた話  作者: 黒髪
第一章:日常が崩壊するまで
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 さやかの爆弾発言を契機に教室の雰囲気は悪くなった。

 特に、さやかに対する風当たりというか、アイツは一体何者なんだという空気がな。日本人特有の陰湿さだ。言葉で表現するのは難しいが、触らぬ神に祟りなしという感じだな。


 元々、さやかはクラス内で浮いた存在だった。

 だが、誰にも敵意を向けることがなかったから、無害な存在だと思われていたことだろう。しかし、前回の発言で一変だ。


 休み時間だというのに、さやかは一人だけ机に突っ伏している。時折、スマホを触っては「はぁ〜」と溜め息を吐いている。その姿を見ていると、喋りかけに行きたい気持ちもある。


 だが、俺は教室内でトップに君臨するモテ男なのだ。


「ねぇ〜寄道くんはどう思う?」


 突然、昼匙さんに話を振られて、俺は焦ってしまう。

 遠目でさやかを眺めながらも、俺はクラスの仲間と喋っていたのだ。男友達も女友達も居る。賑やかな奴等である。


「……えっと何の話してたっけ?」

「あぁ〜もう全然寄道くん、話を聞いてないぃ〜」

「悪い悪い。ちょっと最近考え事が多くてな」

「今度皆んなで一緒に遊びに行けたらいいねって話だよ」


 可愛い女友達に囲まれて、楽しい高校生活を送る。

 悲惨な中学時代(アニオタライフ)を過ごしていた俺にとって、喉から手が伸びるほどに欲していたものだ。


 しかし、中学時代とは打って変わり、俺の隣には親友の男の娘——朝日さやかの姿がない。アイツはいつも俺の隣に寄り添ってくれたのに。


 それなのに、今の俺は——。


 聞き慣れたLIMEの着信音が鳴り響いた。


「誰か着信が鳴ってるよ?」


 女友達の一人が言い、俺は空かさず答える。


「悪い。俺だ」


 ポケットからスマホを取り出す。

 そんな俺を見ながら、周りがニタニタ顔になる。


「もしかして彼女??」

「んなわけねぇーだろ。俺はフリーだよ」


 そう伝えると、昼匙さんを含む女子ーズの皆様は顔を見合わせて「寄道くんは狙い目だよ」「優良物件が残ってるね」「寄道くんってまだフリーなんだ。良かったね」などという会話が聞こえてきた。


 コイツらって……実は案外チョロかったりするのか??


 と、思いつつも、俺は待たせている電話の主と話すために、教室を後にするのであった。


「で、何だよ、さやか。わざわざ電話を掛けてきて」


 人気がない階段の踊り場で、俺は電話を取った。

 相手は、教室で突っ伏していたはずの親友さやかだ。


『むふふふふふふふ。僕を仲間外れにしてるからだよ』


「なら、お前もあの輪に入ってくればいいだろ?」


『僕が恥ずかしがり屋だってこと知ってるくせに』


「あのなぁ〜。普通に喋りかければいいだけだろ?」


『僕はね、寄道がいればそれだけでいいんだよ』


 冷酷な口調で言い、さやかは続けて。


『あんな奴等と仲良くする気なんてないの、僕は』


「お前の目的は何だよ?」


『決まってるじゃん。僕と寄道が両思いになることだよ』


「だからな、俺は男を好きになるなんてありえないんだよ」


『そうかもしれないね。でも、僕は絶対に諦めないからね』


『——というわけで今後も寄道を誘惑するからよろしくね♡』


 色々言いたい気持ちもあるが、電話は切れてしまった。

 教室に戻ると、頬を緩めたさやかが小さく手を振ってきた。

 アイツの得意気な表情を見る限り、まだまだ変なことを企んでそうだ。


 欺くして、悩みの種が増えた俺は溜め息を吐くのであった。

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