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男の娘から告白されても現実は変わらない。時間が過ぎれば、嫌な記憶なんてもう忘れちまって、良いことだけが残るはずだ。
そして、平穏な毎日が繰り広げられて。
俺の日常は元通りになるはずだったのに!
「あ、寄道!! やっと来た!」
俺より少し前に学校へと到着していた、さやかは、教室へ入ってきた俺を見て、駆け寄ってきた。周りの奴等が奇異な眼差しで見てくるんだが……これは一体何だ?
疑問に思ったが、一瞬で謎は解けた。
どんな事件でも解けるコナンくんだとしても、この謎だけは絶対に解きたくないだろうが。
「実はね、みんなに報告がありますー!」
さやかは俺の腕を引っ張り、教卓の前へと立った。黒板にはデカデカと文字が書かれていた。
祝カップル結成とか書かれてるんだが?
信じがたい内容だった。ウソであれ。
「僕たち昨日から付き合うことになりましたー。えへへ、寄道は男の娘が好きなんだよ」
おい、テメェ。
何を言ってやがるんだ?
男の娘好き? んなわけねぇーだろ!
女子全員ドン引きしてるじゃねぇーか!!
と思ったけど、一部女子の奴等が「きゃあーー!!』とか黄色い歓声を上げてるんだが?
「というのは半分冗談で、半分本当なんだけどね」とさやかは呟いてから。
今まで一度も見たことがないような怖い顔をし、教室に居る奴等を睨みつけた。
温厚な性格で、ドジっ子みたいな奴だと思っていたのに。意外とこんな表情もできるんだな。とか、感心するのも束の間。
「寄道にさ、これ以上ちょっかい出さないでくれるかな? 僕の悪口を広めてる女子が居るっぽいんだけど……ほんとウザいから」
本題はこっちだったのね。
さっきのは冗談だってことだよね?
周りの気を惹きつけるためだったんだよね? そうだよね、だって男同士で付き合うとか、普通に考えてありえないんだもん!!
ピキーンと教室が凍りついてやがる。
このままでは空気が悪いぞ。
てか、俺とさやかに対する視線が冷たい。
「えーとだな。今のは全部ウソだからな!」
誤解を解かなくてはいけない。
あくまでも、俺たちにはないとな。
雰囲気悪くするのはよろしくないからな。
「ほんとだよ?」
さやかが空かさず疑問を提唱してくるが。
とりあえず、口を押さえ付けて黙らせた。
一安心だと思ったら、ペロペロペロ。
「うっ……こ、コイツ!!」
俺の手を舐めやがってる。
躊躇いも何もなしかよ。
むぐむぐむぐみたいに声を出そうとしているところは、多少可愛かったけど。
舐めるの。テメェはダメだ。
担任が教室に入ってくるまで、無事にさやかの暴走を止めた。黒板の文字は消せなかったけどな。お前ら付き合ってるのかとか訊ねられ、さやかは「そうです!」とキッパリ答えてやがるし……マジでやめてくれ、本当。
あとさ、自分の席に着く前に。
さやかが言ってきたんだ。
ほっぺたを少しだけ赤らめて。
「ごちそうさま、寄道」
アイスでもキャンディでもないんだ。
今後、俺の手を舐めるのは禁止だな。
てか、クラスの奴等に避けられてる気が?
「むふふ、寄道は僕の側に居ればいい」
さやか。
俺はお前の恋心を受け入れる気はない。
だがな、俺の日常を壊すのはナシだろ?
「僕はただ……寄道に好きになって欲しいだけだよ? それだけを願うのもダメなの?」
流れ星に願うぐらいならやっていいさ。
テメェがやってることは、ただの迷惑行為。これしっかり覚えてな。テスト出るから。
次回から加筆修正版です。現在進行形で精一杯執筆中でございます。
明日までには投稿できると思うのでお楽しみに( ̄▽ ̄)