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「行ってきます!」
「あら、今日は早いのね」
「うん、ちょっと……!」
おはようございます。茂部姫愛です。
「よし、明日から君はヨロズ零号として他のメンバーを探すんだ」
「あ、あの!数字の痣以外にヒントとかってないんですか!?」
「そうだね……。君に零号の力が宿ったってことは……残りのメンバーも地震の日にあの会場に居た人の可能性が高いよね」
ひょんなことからヨロズ零号になってしまった私。
モブキャラのままの人生は御免だ!と会長のお願いを聞くことになった訳だけど、割とこれ無理ゲーじゃないか?って気はしています。
とりあえず、候補がいない訳では、ない……んだけど。
「よし、手近なところから片付けてこっと!」
「何を片付けるって?」
「えっ!?うわ!!」
す、皇紅蓮だ!!
背後から話しかけられてびっくりしたけどさっそく候補発見!!
「よ!昨日ぶり!気づいたら居なくなってたけど大丈夫だったか?帰ったのか?」
「あ、ああ、うん。大丈夫」
本当は会長に拉致されてました。……まあ、間違っても言えないけど。
「で、何か片付けんのか?手伝うぜ!」
「あー、いや、片付けって訳じゃないんだけど。えっと、皇くんにお願いが」
ぞくっ。
……な、何?
この全身に突き刺さるような視線は、何!?
「お願い?良いぜ!何でも言ってみろよ!」
「え、えっと……」
分かった。視線の正体。
女子だ。皇紅蓮のファンの女子だ!!
私はモブキャラだったし、男子の事情なんかにクソ程興味が無かったからスルーしてたけど。
この男、テニス部でめちゃくちゃモテるんだった……!!
「どうしたモブちゃん?」
「茂部ですっ!!……あ、」
私が怒鳴ると背後で見ていた女子連中が一斉に私を睨んできた。
「ご、ごめん!なんでもないですー!!」
「え!?いやモブちゃんこれから授業───」
視線の痛さに耐え切れず、私は教室から逃げだすのであった。