6-9
「……あなた、だったの?」
事件を起こしていたのは、怪人じゃない。
神谷くん、あなただったの?
ねえ、黙ってないで何か答えてよ……!!
「……そうだけど」
彼は抑揚の無い冷たい声で言い放った。
「何で、何でこんなことするの……!?」
「……何で、って」
「あなた、ヒーローなんでしょ……!?」
「……ヒーロー……?」
「身体のどこかに、数字の痣……あるんでしょ……!?」
「……ああ。これのこと」
神谷くんが服を捲り上げると、へその下に《05》の痣が見えた。
「……キアラは、これのこと、知ってたんだ」
「何で!?何でヒーローなのに人を傷つけるような真似するの!?」
「……そっか。キアラのおかげか。やっぱりキアラは、お姫様だったんだな」
「な、何を言ってるの……!?」
話が通じない。
神谷くんが何を言っているのか、さっぱり分からない。理解出来ない。
「……俺、思い出したんだよ。昔から俺はずっと、ずーっと、疎まれて来たからさ。だから、せめてお話の中では、幸せになりたい、って」
「ま、待って!ねえ!何の話!?」
「……俺、本を描いたんだ。その中に出てきたお姫様……キアラ姫が、俺に力をくれて、悪いやつをやっつけろ、って」
「まさか、それって……」
「……妄想の中の話だと思ってた。でも、あの地震の日に、俺の目の前に、キアラが、キアラが現れてくれて……それから俺は、この力を、手にした」
「……だから、悪者を倒すって、決めたんだ」