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前ページまでのあらすじ。
源氏様の歌が流れたら神谷紫苑が部屋から出て来た。
「あ、えっと……神谷紫苑くん……?」
「……そうだけど」
ボサボサな紫髪……!
前髪が長くて見えにくいけど、真っ赤な瞳。
間違いない。
あの時フェスで倒れてた人だ……!
ならやっぱりこの人が伍号!
……いやいや、まだ決めつけるのは早い。
まずは痣を見せてもらって……。
「……アンタ、源氏様の何なんだよ……」
「え?私?私は源氏様のファンだけど……」
「……す、好き、なのか?源氏様……」
「めちゃくちゃ大好きです」
源氏様のことになると2時間はずっと喋れるくらいには大ファンです。
「……俺も、源氏様、好き」
「え!?ほんと!?」
「……源氏様のCD、初回限定盤と通常盤……全部持ってる……」
「私も!」
「……イソスタ、全部チェックしてる……」
「私も私も!!」
「……ライブのブルーレイも、全部、買った」
「だよね!買うよね!?」
「……3日目の4曲目で歌詞間違えた。一瞬動揺したけど歌いきったの、好き。推せる」
「わかりみ!!あそこ何回も見直した!!」
「……野菜嫌いなの、良いよな……。ウィーチューブの野菜チャレンジ動画、好き」
「私も私も!!嫌いなのに涙目になりながらも絶対残さない源氏様ほんとに推せる!!」
あれ、私何しに来たんだっけ。
まあいいや!なんかめちゃくちゃ楽しいし!
「……俺、引きこもり、だから。ライブ、行ったことなくて、でもあの日は……場所、近かったから。だから……頑張って、行った」
倒れちゃったけど、と彼は付け足した。
私は語れる同志を見つけた嬉しさと、彼の健気さで号泣。
「……な、何で泣くんだよ……」
「だ、だってえ、だってえ……!源氏様って人気だけどさあ、ニワカも多かったりするし、話合わない人多くってさあ……!!」
私は勢いのまま、神谷くんの手を握った。
「私達、同志だよね……!!」
「……馴れ馴れしく、手握るなよな」
すみません。調子に乗りました。
私は急いで手を離すと、神谷くんは部屋に引っ込んで、鍵をかけてしまった。
うう……せっかく同志が出来たと思ったのに……。失敗かあ……。
「……明日、」
「えっ?」
「……明日も来れば」
「い、良いの!?」
「……今日は、疲れた、から、寝る。明日、また源氏様の話、しよ……」
や、やった!!
明日もまた源氏様語りが出来るぞ!!
「有難うねえ……」
「わっ!お、おばあさん!?」
いつの間にか背後に立っていたおばあさんに驚く。
「途中からお友達じゃないかもしれないと思って止めに来たんだけどねえ。でも紫苑くんがあんなに話せるなんて……来てくれて有難うねえ」
う、友達じゃないってバレてた……!
「また明日も来て頂戴ね。紫苑くん、待ってると思うから……」
「は、はい!絶対行きます!」
とりあえず明日も先生からプリントを引ったくらないとなと思った。