6-4
「し、紫苑くん!」
「……誰」
私が部屋の外から声をかけると、掠れた低い声が返ってきた。
多分、私の予想は間違っていないかもしれない。
だってこの声、フェスの時に聞いた覚えがあるから。やっぱり倒れてたあの人が神谷紫苑なんだと思う。
それを確信に変えるには姿を見なきゃいけない訳だけど……。
「わ、私!クラスの隣の席の茂部姫愛だよ!」
「……キアラ……知らない。誰」
「お、覚えてないかな?」
「……知らない」
「か、顔見たら思い出すかもしれないよ?ね、紫苑くん……!」
「……出たくない」
こ、これは手強い!
出てくるどころか顔すら見せようとしてくれない!
そもそも会話も成立させようとしてくれないんだけど……どうしたものか。
「……俺、アンタのこと知らない。なのに、名前で呼ばれるの、不快」
「ご、ごめんなさい……!」
うわあ、向こうから私の印象は最悪みたいだ。
うう。心が折れそう……。
もう諦めて帰りたいけど、こんな遠くまで来たのに収穫無しで帰るのはあまりにも勿体なさすぎる。
でもどうやっても顔なんて見せてくれそうに無い───────
〜♪
突如鳴り響く、源氏様の歌。
え?いきなり何?って思ったけど、これ私の着信音でしょ!うわあタイミング最悪じゃない!
「ご、ごめん!今日は帰る……!」
いたたまれなくなって、もう全て諦めて帰ろうとしたその時だった。
ガチャ!
「あ、アンタ……源氏様の何なんだよ……」
……え。出てきた。
あ、私は源氏様のファンです。




