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野外ライブってことで、色んなアイドルが参加していた。
成世先輩は全部見ていく!って言ってたけど、疲れたから私は休憩することにする。
……まあ、元々源氏様目当てなだけだし。
ちょうどいい場所にあったベンチに腰掛けていると……
「あっ!モブちゃんじゃん!」
「茂部ですけど」
「そうだっけ?悪い悪い!茂部ちゃんもフェス来たのか?誰目当て?」
「源氏様ですけど」
「最近人気だよなー!俺はさー!」
皇 紅蓮は聞いてもないのに勝手に語り出した。
というかよくそんな簡単に話しかけられるよね。コミュ力どうかしてんのか?
ちなみに関係は一応私と同じクラス。そんなに喋ったことないけど。
もう名前からしてかっこいいし、選ばれし者って感じ。
「でさでさ!俺の推しユニットなんだけどさ!」
聞いてねえよ。
というかさっきからアンタが握り締めてるジュースが零れて私に掛かってるんだよ気づけよ。
「使え。零れてるぞ」
「えっ、あ……」
えーっとこの人は確か……京極 蒼真だ。
隣のクラスだけどめちゃくちゃイケメンで有名な人だ。
って、そんなイケメンが私にハンカチを!?
なんだそれ!何のフラグ!?
もしかして私にもヒロインとしてのフラグが?私も「持っている」人間だったってこと……!?
「おお、サンキュー!」
「いや、お前にじゃない」
「助かったぜー!」
「人の話を聞け」
……気のせいだった。
差し出されたハンカチは紅蓮に奪われてしまった。
「……何でこいつ初対面の相手にこんなに図々しいんだ?」
蒼真、それは私も知りたい。
「ねえねえおねーさん!携帯電話持ってない!?」
急に肩を叩かれたかと思うと、金髪の少年に携帯電話を要求された。
年下だろうか。
「スマホでいいなら」
「ありがと!」
「ち、ちょっと待って!?何に使うの!?」
「人が倒れたの!110番しないとダメでしょ!?」
えっ、人が倒れたのならそこは……
「救急車は119番ですよ」
私が答える前に緑髪の男の人が答えてくれた。
多分この人は年上っぽい。
「そうそう!それだった!とにかく早く電話しないと!」
「伝えられますか?良かったら僕が話しますよ」
「う、うん!おにーさんお願い!」
「や、やめ……」
「!?わっ、生きてた!?」
先程まで倒れていた紫髪の男が呟く。
この人は……前髪が長すぎて年齢が判断出来ない。
「か、勝手に、殺すな……。うう、こんなことなら、引きこもってりゃ……良かっ……」
「大丈夫かー!?今すぐ心臓マッサージをしてやるからな!!」
「アホか、どう見ても心臓は動いてるだろ」
紅蓮と蒼真もこの場に合流してきた。
それにしても、今日は偉く男の子に絡まれる日だなあ……とか思いながら、私はモブに徹するのであった。