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勇者や魔法少女、王子や姫。
それらの人は皆、生まれついて「持っている」人だ。
物語の主人公やヒロインになれる人は、「持っている」人なのだ。
「はああ、源氏様かっこいい……すき……」
そう。私が今見ているアイドルだって、生まれつき輝きを「持っている」人。
そして私、茂部姫愛は……「持っていない」側の人間だった。
見た目も地味だし、名前のせいで「モブキャラ」なんて呼ばれちゃったりして。
まあとにかく、私は絶対にあちらの世界には行けないような人間なのだ。
「ほら!もっと声出さないと源氏サマこっち見てくれないよ!」
「う、うんっ。げ、源氏様ー……!!」
私は部活の先輩である成世先輩と推しアイドルの野外ライブに来ていた。
成世先輩はオタ友みたいな関係のようなものだけど、この人も纏っているオーラが違う。
多分、「持っている」人なんだろうな。
「源氏サマーーーー!!こっち見てーーーーー!!」
「げ、源氏様っ……!」
「ふぐぁっ!?こ、こっち見た!とうとい!むり!!すこすこだいすこむっちゃすこーーーーーー!!」
学校ではかなり大人しい人だと思ってたのに、ライブで楽しんでる成世先輩は……やっぱり私とは違うんだろうなって、思った。
彼女はゴスロリ衣装が好きで、何処でもそんな服を着て堂々と歩いている。周りの目なんて気にしてない。
そんな成世先輩と私を比べること自体、彼女に失礼だろう。
私は、一生モブキャラのままなんだろうな。