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98お風呂

「またせたな。俺のターンだ!」



「えっ、どうしたの? おにいちゃん……」

「いや独り言だ気にしないで」


「そう…………」

何か言わなければいけない衝動に駆られてな。ふっひっひー。


さて、方針は決まった……。

いや、まだだ、実は何も考えていない。


穂美香にどれだけの事を伝えるか。勿論、内面的にだ。

ここはやっぱり慎重に行くべきか? それでなくても今の俺にはやるべきことが山のようにある。


……そうだな、ここは添えるだけだ。あくまでも流れに身を任せる。

慌てる乞食は貰いが少ない。じわじわと囲う様に……。


おっと、間違いだ優しく包み込むように、だ。理性はいま欲望に大分押されている。

俺の強欲は果てることがない。大罪さんここは見逃してくりー。


「穂美――」

「おにいちゃん、あのさ……」

「うぉ、ん、なんだ?」


穂美香に言葉を被された、インターセプトだ。

ここは慎重にいけ。あくまでも冷静に。クールにだ。


少しでも爽やかに、軽やかに、お宝を奪え。そして全てを包み込め。鳥かごだ!


「……お風呂、どうしようか……?」

「――――あぁ、それもあったな」


っと、まさか穂美香から振ってくるとは思わなかった。

どうするか、これは後手だ、とりあえずここは様子を見るか。


「穂美香は……どうしたい?」

「うん。どうしたら良いのか解らなくて……」


これは――――少し押してみるか? とりあえず二つのパターンか。

と、その前に最悪なパターンを考えてみるか。


今の俺にとって最悪なのは、そうだな…………お風呂場に二人で入ってお約束さながら二人でこける。で、元通り――――なんてことだ、俺はまだなにもしていない!


それは悪手だ。……これだけは避けなければならない。

振りじゃないんだゾ。気をつけろ。


「そうか、そうだな……」

それ以外は、大体俺の嗜好を満たしてくれるだろう。


そして、今の俺にとっては一人で入るのが一番無難で良い気がするな。

今回に限っては、他は罠なんじゃないだろうか?

よし決めた、支配率を上げよう。それで行くか。


「穂美香は……一人で入れそうか?」

とりあえずストレートに聞いてみよう。


搦め手は有るにはあるが、とりあえず話を合わせていこう。


「うん。ちょっと心配」


ここで何が? とか聞いちゃう様なへまはしない。

フェイントには引っかからない。俺は鈍感ではない。安心しろ。心で自分に言い聞かせる。


「そっか、そうだよな……」


まてよ、大事なことを一つ忘れていた。

ここはどうしても二人で入るべきだ。


とりあえず、耐性を付けておくことは必要だ。

メンタルは強めるべきだ。ここを逃せばもう二度と一緒に入る機会は無いかもしれない。


そして、何時か元に戻った時にもあわよくば……。


「よし、一緒に入るか」

「……うん」

「そこで、提案がある」

「ていあん?」


「そうだ、お風呂場は滑り易い。気をつけて入ろう。そして――――以上です」

「え? ……あ、うん、そうだね。わかったよおにいちゃん」


危ない、もう少し物事を考えてから話さねば。俺は欲望に忠実だけれどもその先は考えていなかった。

そう、俺の体である穂美香に襲われた時、チキンな俺はどうすれば良いのかを考えていなかった。


流石にまさかとは思うが俺の体だしなぁ…………。

まぁ、それもありっちゃーありなんだが、各種事案から都条例さんとか、ね。


あるよね~~。


ということで一緒にじゃれあって入ろうという俺の願望の一つをとりあえず封印した。

……そのステージはまだ早いようだ。ちゃんと一段づつ上がっていこう。


「さて、入るか。……穂美香、自分で脱げるか?」

「――――うん」


寝巻きを持ってお風呂場の手前にある脱衣所に到着する。

先ほどお風呂のお湯は貯めておいた。


濡れてしまっていたスカートとブレザーは近いうちにクリーニングに出すか。


穂美香である俺は今ブラウスにスカートという格好だった。

迷い箸はいけない、だがここはゆっくりと行きたい。

まずはブラウスを引っ張りスカートから出し、ネクタイを外す。


ボタンを一つ一つ外していく。


俺の目が届く範囲に鏡が有り。鏡からも、自分の動きからも、眼を離せないでいた――――。


ブラウス、スカートを脱ぎ終わると下着姿の穂美香(俺)の身体は眩しかった。

天使がいた。


その姿に見蕩れていると、俺の姿をしている穂美香はもう脱いでいて、大き目のバスタオルを体の胸から下に身に付けていた。


「――――先に入ってるね。おにいちゃん」

「あぁ、すぐに行く」


穂美香は恥ずかしそうにお風呂場へと先に入っていった。

何時か元に戻ったときにも言われてみたい台詞だった。


一人になった俺に残された時間は少ない。

ブラのホックを外し――――あれ、上手く外せない。

鏡に背中を向け外そうとする。


うーん、うーん。うーあ、こうなってたんだ。やっとの思いで外す。

ふわっと外れるとそこには果実があった。


まだまだこれからだよー、と大きく主張をするその小さな果実に触れ――――。


「おにいちゃん、まだー?」

「ひょっ、あ、うん、ちょっ――――直ぐ行くから」


お風呂場から穂美香の声が聞こえた。

俺は急いで下着を脱ぎ、風呂場に向かうとおにいちゃん。


そこはタオルを身に付けてよと、怒られた。


「おにいちゃんはわたしが洗うから、わたしをおにいちゃんが洗ってね」

「わかった」


主導権を握られた。仕方がない。

今回はドロー狙いだ。足を滑らせない様にする事だけ気を付けるか。


いや、まだだ、まだ終わらん!


「まずはわたしが洗うね」

「よろしくー」


ふむ、俺の姿をした穂美香が、穂美香になった俺を洗っている――――だとぉー。

まぁ、そりゃそうか。出切れば今、戻りたい。


いや、まだだ。まぁでもこれはこれでご飯が美味しい。捗るな色々と。

脳内に名前を付けて保存した。


「かゆい所はない?」

「あぁ、問題ない」


「やっぱりなんか、変な感覚だよね、これって」

「そうだな。視点が違うと見える景色は全然違うのだろうな」


「うん、なんだっけ、確か……俯瞰だっけ?」

「それに近いのかもしれないな。今回のこれは結果の俯瞰だろう。あくまでも様に視えてるだけで、まぁ、それも俯瞰といっても良いのかもしれないが」


「おにいちゃんは…………わたしになれて嬉しい?」


っ! と、抉り込む様なキラーパスに俺はたじろぐ――ここは。


「そうだな、まだよくわからないが、嬉しいよ」

「そっか、良かった。わたしもこれがおにいちゃんで……よかった」


そういうことか。なら――――


「これが穂美香以外の人との出来事だったなら、理解は出来ても、納得は出来ないでいたかもしれないだろうしな」


「うん。わたしも……わたしは理解すら出来なかったかもしれない…………」

「俺が何とかするから任せておけ。何か、何か手は有るはずだ」


「わかった。おにいちゃん――――大好きだよ。信じてる」


っ。


「あ、あぁ、俺もだよ穂美香」


なんだろう、罪悪感で胸が揉みたい。

間違っていない。苦しくなんて無い。


危なかった。もう少しだったな、穂美香。

俺の姿で言われても俺の深遠の心には届かない。


勇気や根性に欲望だって頑張れば負けるはずが無い。


目指せチーレム無双大納言。


「こんな所かなぁ? じゃあ、交代だね」

「はいよ。かゆい所が有ったら言ってくれ」

「はーい」


俺の背中が見える。

あれ、肩にこんな痣有ったかな? まぁいいか。俺は俺を洗う。


まぁ、そうだよな、今度は逆の視点だ。陣地は右で左に攻める。

ビジュアル的には余りグッと来ない。いいね! は押せない。


ここは心の目で観察しよう。

俺の体は穂美香に洗われている。

そうか……確かに俯瞰っぽいな。なるほど、これも一応保存しておこう。


こういうプレイをやっているお店にも何時か行って見たいものだ。

きっと視野が広がり夢も膨らむ。


そう、膨張するだろうな。ふははははー。


わしゃわしゃと頭も洗う。あわあわにしてやろう。そういえば他の人を洗うって、もうこの年になるとそうそうは経験出来ないな。まぁ俺を洗っている訳だが。


確か介護では良くある話らしい。ソースはかーちゃん。

まぁ介護は大変だろうな。


羞恥という意味合いでは介護されるほうも恥ずかしいだろうし。

それは――慣れにもよるだろうけど。


「そろそろ良いかな」

「ふーい」

「そういえば、髭とか剃れるか?」

「うーん。どうだろう。傷物にしたらごめんね。おにいちゃん」


穂美香は顔に人差し指をあて髭を確かめる様に触りつつ話している。


「……じゃあ、先にお風呂入っているから、やってみろ」

「りょうかーい。大丈夫、わいるどになったら責任は取るよ~」

「はいはい」


ふぅ。やっぱ風呂は良いな~。

落ち着く。あ、なんか風呂に入ったら俺の欲望さんが弱まっている気がする。


湯船恐るべし。疲れているし仕方がないか。


「わたしも入るね」

「おう。スペース開けるよ」




「ふわーやっぱお風呂は良いねぇー」

「そうだな。今日は大変だったしな」

「うん。でも大変なのはこれからだよねー」

「あぁ、とりあえず明日学校には電話しておくよ。二人とも風邪ってことで」

「よろしくー」


明日からも大変だな、今日は夜更かししたいけど、疲れてるから少しは早めに寝るとしようか……。


「でも、こうやって二人でお風呂に入るのも楽しいね」

「そうだな。この生活に慣れるまでは、一緒に風呂ぐらいは入るか?」

「うん。ありがとーおにいちゃん」


穂美香は俺と一緒に風呂に入る事に対して、余り抵抗は無いのだろうか? いや、それ以上にこの現象が特殊過ぎて、そこまで頭が回っていないのかもしれないなぁ……。


実際の所どうなんだろう? まぁ、今はとりあえず良いか。


「そういえばおにいちゃん。今日本屋さんで『魔法騎士皇女レイの悲劇』買って来たよ」

「お、『クッころ』さん売ってたのか?」


「うん、増刷されたみたいだね。それと今日発売日の『いせちゃー』」

「そうか……半年ぶりかな『いせちゃー』。今回は何チャーハンで戦うんだろう?」


「あたしの予想は今回こそ究極鳳凰カレーチャーハンだと思うんだ~。前回材料大量に仕入れてたし」

「ありそうだな。多分何度も失敗するつもりなんだろうな……師匠に、それはピラフじゃって言われてる絵が浮かぶな。究極鳳凰カレーチャーハンの道はとても険しいらしいからなー」


「ふふ。だよねぇ~」

「そろそろ出るか、穂美香」

「そうだね」


俺たちは風呂場を後にするのだった。あれ?。何か忘れてるな。


そっか、欲望さんも今日は疲れて寝てしまったのか。

何か賢者モードだな。それはそれで物足りないが――――以上です。

俺の戦いはまだ始まったばかりだ。



髪も二人で乾かした後。飲み物を飲み、二人ともトイレに行く。

すまない、心の友よ。おにいちゃんモードの俺には死角しかない。割愛させてもらおう。


心の中で呟くと、すっかり忘れていた階段下の状況を見て、風呂入る前にかたすべきだったな、と軽く後悔した。


雑巾を持ってきて二人で掃除する。

穂美香のバッグの傍でイーピンは粉々になっていた。


当たり所が悪かったのだろうか――――まぁ、仕方ないな。お守りだったのだが、それのお陰でたいした怪我もせず、こうなったのならばむしろ感謝の言葉しか出てこない。


ありがとう。君にはとても長い間、お世話になった。また来世で俺を守ってくれ。

賢者な俺は実に謙虚な方だった。


時計の針は深夜零時に差し掛かろうとしていた。今日は疲れたな。

もうとても眠い。


「今日は、早く寝るか」

「……うん。当分の間――――。わたしと一緒に寝てくれないかな? おにいちゃん」


「あぁ、わかった」


俺にはやるべき事がまだ沢山あったのだが、まぁいい。

どうせ後三十分も起きてられないだろう。


「どっちの部屋で寝る?」

「わたしの部屋で、お願い」

「うい」


俺の部屋を通り過ぎ、穂美香の部屋へと進み扉を開ける。

まぁ、何度も入ってはいるが、女の子らしい部屋の作りで、良いにおいがする。

くんかっかー。


おっとそこまでだ。もう横になろう。

俺と穂美香はベッドに入った。


「ふぅ」

「今日は疲れたねー」


「うむ、今日は色んなことが有り過ぎて疲れたよな」

「うんうん。そういえばおにいちゃん」

「なんだ?」

「ぶつかる前、そんなにトイレを我慢していたの?」


「げ。……あぁ、ネットゲームしながら友達とチャットしていてな、上手く抜けられなくて、我慢してしまったんだ」


軽く半分嘘をつく……通るか?。


「そうなんだ~」


ふぅ。…………大丈夫な様だ。


「……ふわぁ。もう限界。そろそろ寝るわ、お休み穂美香――――」

「うん。お休みおにいちゃん」


危ない。あの時は色々必死だったんだ。周りが見えない状況だった。

漏らしてしまったのも俺のせいだ。


俺が漏らしたのを穂美香に押し付けてしまったようなもんだ……。


でも、それすら喚かずにいてくれる、とても優しい子だ。すまない。

心から反省する。


あの時の俺は何でも出来そうな気がしていたんだ――――――――あの、俺な、ら、空だって、飛べ、たはず、だ……すぅーーーー。


「おまえは――」

「おまえは――――おれのつばさだぁーむにゃむにゃ」

「えっ? どうしたのおにいちゃん」

「…………すぅー」

「寝言、かな?」


「……おやすみ。おにいちゃん」






朝、俺は朝日がカーテンの隙間から少しだけ入る、そんな僅かな光にくすぐられ眼を覚ましだした。

眼をなんとなく、開けてみると、隣にはこっちを見つめる俺が居た――――


「おはよう、おにいちゃん」

俺はその優しさと強さが交じり合うかのような言葉に、まだ重い目蓋が軽く刺激され、意識を少しづつ……。覚ましつつあった。


あぁ。そっかー


「おはよう、穂美香」

俺は昨日の出来事、現状を徐々に思い出す。


「良く眠れた?」

「……あぁ、なんか、ぐっすりと」


今まで十八年間の人生で、自分と認識していたはずの容姿に朝を起こされる――――。


これは……もう一人の自分だ。


分離されてしまった自分の精神と肉体。その状況に神秘的な――――まるで、生命の尊さ、自然の摂理。若しくは考えの及ばない人為的、魔術的な何か――。


やはり……まだ理解できていないんだろうと、心の中で戸惑いを感じると共に、目の前にいる俺の存在は、俺ですらまだ納得できていない状況に応じ、納得し受け入れる。


そんな……少しだけ達観した様な瞳をしていた。


「わたしはそろそろ起きて、朝ごはん作ってるから、おにいちゃんはもう少し寝ていてね」

「……うん、悪いな穂美香、少ししたら起きるよ」


俺の姿をした穂美香はそういうと、部屋の扉を開けて下に降りて行った。

「ふわぁ……」


「あと、少しだけ――」

俺は眠気を覚まさせる様に、これからの行動、今日何から始めるかを思案しつつ、もう少しと夢うつつの状態でいるのだった。


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