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91運命を共にするもの。

「やっと……………………見つけた」

「……………………」


石水牢の中で膝を少し抱える様に横たわっている女の子。


そう、この子だ。


間違いない。顔を見ると私が覚えている子より若干年齢が若く見える。

でも私の記憶にある女の子だった。




……どれ位の時間、此処にいたのかしら。

意識があれば良いのだけれど。


確か……石水牢の効果は時間感覚の麻痺と記憶障害。

それと殆どの魔法不可……だったかしら。


魔女の因子を持つ者が掛かる程だから恐らく罠のレベルも高いのでしょうけど。


「ねぇ……聞こえる? 見える? 朋ちゃん」


目は虚ろだけど開いている。

とある一点を見つめる瞳にぼーっとした顔。


何かに、とらえられて魅入られている様にも見えた。


「しっかりしなさい。朋ちゃん。……私を、わたしを見て!」


抱きしめて耳元で伝えた。

自分を……しっかりと…………取り戻すのよ……と。


「う、ぁ………………ね、姉さん」

「あ…………そ、そう。メルヴィッセさんを……助けるのでしょう?」


私はメルヴィッセさんに聞いていた丸を朋ちゃんに見えるように描いた。


「あ――――――――あなたは…………」



「……………………初めまして。私はルカ。……以前、ダイラックの丘、付近で少しだけすれ違ったのだけどね。あ、と。まぁ良いわ。私はね……………………貴方と運命を共にするものよ」


「…………ルカさん」





 ◇◇◇◇





バタン…………何処かで強めに扉が開く様な音が聞こえた気がする。

あるぇー? …………………俺、一体、何していたっけぇ?


うん? 此処は―――――――――――――――――――――――――


あ……………………。思い出し……って、この音は……


『……何の音だ? わわっ。…………あれれ、俺…………意識を………………何して……あぁ、なんとなく』


『思い出しそう…………あれ、あの扉…………全開で開いている…………良いんだっけ? 開いてて……いや、だめだよな、閉めないと…………』


あ、ちょっと……扉の近くへ行くと吸い込まれていく。


うわ、これ不味っ。


駄目なんだって、まだ早いんだ。

今はまだ此処から出てはいけない気がするんだ…………くっそぉ止まれ。


開かれた扉に閉ざされていた部屋の物が扉の外へと吸い込まれていく。


ふぅう…………ふぅうっ。

…………だ、駄目だ、吸引力が凄い。


何とかして、あの扉をもう少しでも閉めないと持ってかれる。


『あああっ、もっ、もう無理ぃ……だ、誰か……助け…………て』


『……………………気が変わった。……助けてあげる』


声がした方向を見ると頭に布っぽい何かを巻いている……多分、女の子?


その者は風の影響を余り受けていないのか部屋の床にしっかりと立っている。

その子が素早い動きで俺を吸い込もうとしていた扉を脇から半分ほど閉めてくれた。





『っくはー。た、助かった……き、君は…………』

『…………………』


『…………隠れていた子だよね……ほんとにありがとう。助かったよ……この扉から俺はまだ出てはいけない気がするんだ』


『そう? でも貴方は変なウサギに乗り移っていたわよね』


『そっか、知っているのか。そう。あのぬいぐるみには移れるんだけどね、何かが足りなくてそこの扉の方から出ると此処へは戻って来られないみたいなんだよ』



『そっかー』

『そうなんだよ。…………でも良かった、助かった。……改めてありがとう。俺の名前は…………ラオーア。まぁ偽名だけどね』


『……ボクも此処に随分と長い間いるんだ。キミの事情も少しは知ってるつもり。ええとボクは…………名前、無いんだよね。溶けて忘れちゃったんだった名前』


『…………不便だし、自分で好きなのにすれば良いと思うけど…………どうかなぁ?』

『好きなの……なんて無いよ。ボクは此処にいるだけだし、それ以外は解らないし』


『…………俺は何時か此処を出ると思うんだけど、キミはずっと此処に居るの?』

『んー多分そうなるの……かなぁ? とある状況にならない限りボクは此処で見守るよ』


『そっか、……何となくだけど、キミ、相当強いね。…………あ、そうだ。名前、偽名にしておこうか、俺が付けてあげるよ。ええと……君の偽名は………………ラインが良いかな』


『……………………そう?』

『うんうん。君は……最後の砦だよ。多分ね。…………それか唯の引き籠もりになるか。どっちかね』


『ラインか…………まぁ、悪くないね。うん、ありがとう。偽名、付けてくれて』

『あぁ、気にしないで。思い出せたらそっちを名乗れば良いし。とりあえずよろしく』


『…………うん』

『…………俺も節度は守るよ。キミが恥ずかしがりなのは知ってるし。此処は心の中だしね、まぁ身も蓋も必要な時ってのもあるよね』







 ◇◇◇◇






再び気を失うように寝てしまった彼女。


起きるまで待ってよう。

もう此処まで来たらもう急がなくても良いだろうし。


私の目的は彼女と共にあること。


……それだけで十分。


それイコール私の目的は達成されるはず。


そう…………これで良い。


「………………」

気配を感じる。


「……いるんでしょ?」


「………………る、ルカニーだよな?」

「そうね。久しぶり。……朋くんだよね?」


「…………ああ、相変わらずルカニーは可愛いなぁ…………少し、年齢も若いね」

「……ねぇ。あれからどんな事があったの? 私に教えてよ?」


「うん? ああ、そうだな、ちょっと長くなるけどすり合わせもしておこうか、ルカニー。そういえば、タナシナプスは?」


「………………いないわ。カナメはいるけど」

「そっか……あれから会えていないのか?」


「うん…………実際いるのかも怪しい所」

「うへ。……そんな感じか」




「でね、前哨戦で私はかなりの高得点を手に入れた筈なんだけど最後の最後に何かのペナルティーを食らってしまったのよ」

「…………そうか」


「うん。だから思った以上に今の私は万能じゃ無くてね、ホント実際は予定外で困っているのよ……」

「あぁ、そうだ。ルカニーに聞きたいんだけどさ、俺の身体はどうなっているのか知らないか? そして穂美香のも……」


「………………そうね。なんとなくは解る事もあるんだけど、結構入り交じっているみたいなのよね」

「…………複雑なのか?」


「うん。まずは貴方の身体は何処にあるか全く解らない。何処かに存在している可能性は高いんだけどね…………だから誰かが使っているとか、封印されているとかそういう感じなのだと思うわ。でね……少し調べたんだけど、貴方も私以上の……比較にならないほどのペナルティーを食らっているわよ?」


「それは…………そうだな。現世で博士に勝つために結構な無茶をしたからなぁ……じゃあ、穂美香の事は?」


「……まず解っているのは朋ちゃんの身体にはいないわよ。そこに居るのはキミと勇者と朋ちゃんね」

「うは……あの子は勇者なのかよ…………それは大変だな」


「そうなのよ。それと、穂美香ちゃんは今の貴方みたく別の人の中にいるわよ。多分、間違いなく」

「…………というと誰かの人格の中に……というか裏にいる感じか?」


「そうね……」

「それは誰だ?」


「多分…………」

「多分?」


「この国のお姫様」


「……………………それホントかよ?」


「ごめんなさい。自信は無いけど良いところは付いているとも思うわ……一回だけ会ったんだけどね」


「ふぅー。……………………そっか。……まぁ、それは追々だな……あ、あと気になっているんだけど俺ってもしかして此処に居ない方が良いのか?」



「……………………そ、そうね。後で……相談しようと思っていたんだけど、貴方の心に結構な感じで朋ちゃんが引っ張られているわよ」


「……引っ張られる?」


「うん。まぁ少しぐらいならよかったのだけどね。……今も見えるんだけど魂の色が危険水域まで濁っているわね……」


「それはどういう?」


「まぁ簡単に言うと女…………女の子を保てなくなっちゃうかも。だいぶ色が変化しているし」

「うげ。…………俺はどうしたら良い?」


「当面は貴方を外部に定着させておくのが良いのだけれど……もしかしてそのぬいぐるみって」

「…………あぁ、そうだ。その中なら多分、大丈夫だと思う」


「…………じゃあそういう事にしておいてよ。……腕と足は後で縫っといてあげるから」

「解った。どの道、俺は朋ちゃんの友達を回収しに行かないといけない筈だったし」


「貴方の波長は解ったから、何かあったらカナメを飛ばすわ。とりあえず……朋ちゃんは私に任せて?」

「…………解った。とりあえず3日後にでも連絡してくれ」


「じゃあ用意が出来たらカナメに追いかけさせるから、後のことは……後で決めましょう。……それで良い?」


「ああ。それで頼む。俺は適当に抜けるから、後は……頼む」

「良いわよ」



彼の気配が薄くなった。まずは編み物からね……。




「よしっと…………じゃあ始めましょうか。……………………編み物、苦手なんだけどね」

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