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9おつかいと前向きなお別れ。

姉さんから色々と教わる毎日と基礎鍛錬は続いた。そんな数日後。おつかいを頼まれた。


「えっと。今日買ってきて欲しいのは、ラビット人参三本と、アクアリウムの砂時計一個と影法師のヒヤリハット一個だよ。後は甘い物食べたい。風砂の金平糖とか、金色堂のミントチョコレートとか、何か買ってきてよ。何でも良いから」


「うん。解ったよ。お姉ちゃん。あ、図書館も行って来るね」


「ういうい。ついでに、エッタにも会って最近どーよって聞いてきて」


「……解った。聞いてみるね」


「今日も鐘が鳴る頃には帰ってきなさい。一応今日も付けておくから、ミサンガも持って行きなさい。んで二三四三ね」


「うん。大丈夫。じゃあ用意したらそのまま行っちゃうね」


「おっけ、いってらっしゃい」


「はい。行ってきます」


姉さんは私を見ながら指で丸を作ってニコニコしていた。一週間振りぐらいかな、ダイラック。シーラさんとリーアさん元気にしてるかなぁ。会えると良いな。



用意をして家を出た。家庭菜園を通り越して六本木さんを目指す。此処魔女の住処の家庭菜園もやはり普通では無い。この前、見たときは土が波を打っていた。


家庭菜園の区画だけ。他に誰もいないのに。波に乗っている何かの種は左から右へ運ばれていた。それをカエルが食べていた。良く解らないから一時間ぐらい見ていたら、そんなに見るなよ。恥ずかしい。ってカエルが私に話して何処かに去って行った。ぴょんぴょんって。再び畑を見るが波は止まり何時もの畑に変化していた。


そんなのも姉さんに話したら自然の、いや、魔女の摂理よ、って話していた。もう此処、何でもありじゃない?


六本木さんの中でも私が一番好きな木の前に今日も辿り着く。見上げて見るけど今日も変わらないみたい。これも摂理なのかしら。


さて、二三四三っと。私は魔法仕掛けのギミックに打ち込む。


すると直ぐに目の前の空間から風が吹く。私は何時ものように前へ進んだ。

空間の中、今日は何が見えるかな? と何も無い空間を見渡す。するとこの前見た赤と青の玉みたいな光が今日も見える。


迷い込んだのかな? なんて考えながら私は何も無い空間を進む。

今日は何時もよりも距離が短い気がした。すぐに出口についた。

今日も天気は良いみたい。燦々と輝いている太陽は私の身体を柔らかく温めた。


魔女の住処には基本、太陽が存在しない。何故かは解らない。そして照らす物が無いのに何故か明るく温度は一定。時間経過で暗くもなる。何故かは解らない。

そういう物と私は解釈している。


不思議過ぎて前に聞いてみたんだけど、魔女の住処とは魔女が何世代にも渡って紡いできた糸。少しずつ暮らしやすい場所になって行くらしい。


此処は何処なのか聞いたら、次元の狭間と答えてくれたよ。それって何処なんだろうね。ギミックに数字を打ち込むだけで色々な所に繋がるのもヘン。


このトミエクマ大陸全域に繋がっているのでは? とも思ってしまう。どんな魔法なのよ。此処に来てから三年。私の中の常識は崩れ去った。


そろそろだね。とても大きい門がかなり近くに見えてきた。今日は入り口、誰も並んでないみたい。多分時間帯とタイミングなんだろうなぁ。


「こんにちは。これでお願いします」


「はいよ、お嬢さん。今確認するからちょっと待っててね」


私はギルドの登録証を衛兵さんに手渡した。この前、冒険者ギルドで登録したから、滞在証の役割も果たしているはず。ちょっとドキドキしながら私は待ったよ。


「はい。お待たせ。かわいいお嬢さん」


「ありがとう」


「それでは街を楽しんで行ってくれ。今日も良い出会いが共にあらん事を――――」


「――――示す先で理の大地豊かたらん」


笑顔で登録証を受け取った。ふむむ。なるほどなぁ。登録証がちゃんとしていれば入るのって簡単なんだ。これは便利。


さてとぉ、何処から行こうかなぁ。時間はお昼過ぎ。ご飯もさくっと食べてきたからお腹もいっぱい。頭にペコペコの歌がよぎったけど考えを振りほどくと私は市場へ足を向けた。


進む毎に人が増えていく印象。人は多いんだけどなんとなく進む流れは出来ている様。


売ってそうなお店を一つ一つ覗いていく。今回のお使いでは影法師のヒヤリハットがまだ見つからない。

他の商品は複数のお店で売りに出していた。値段の上下もお店によってはある様でなんとなくだけど。あ、安い。とか、覚えておく様にグルッと見て回った。


市場の道は左右両方にお店がズラリと並んでいるため、行きと帰りで右側左側という風に見て回り、一通りのお店を一時間近く掛けて見た私は今度、覚えておいたお店で必要な物をお買い物していく。


おやつの風砂の金平糖と金色堂のミントチョコレートを同じお店で買った時はおまけだよってお店のお姉さんに海星のえびせんというのを頂いた。これは食べた事無いなぁ。


結局、影法師のヒヤリハットは見つからなかったけどリーアさんを見つけた。というか、見つけられた。


「朋ちゃん発見。おひさおひさだにゃー」


「あー。リーアさん一週間ぐらい振り」


リーアさんは近くにいた猫さんに、にゃにゃにゃにぁにゃー。と話し? 私へと振り返る。話していた猫さんは何処かへ行ってしまった。


「お買い物かにゃー?」


「うんうん。後は影法師のヒヤリハットなんだけど何処かに売ってないかなぁ?」


「あーっと、影法師なら隣の通りの裏手に有ったはずにゃー」


「隣の通りって、あ、ああー。隣にも同じ様な通りがある。そっかー。此処は広いねェ」


「そそ。此処はダイラック最大の市場だからねー。でもあんまり売られてない影法師シリーズだから見つけるの大変だったと思うにゃ」


リーアさんは私をお店まで案内してくれた。お店は隣の通り、その端っこの裏手。

あー此処は見つけられる自信が無い。

私は無事に影法師のヒヤリハットを購入できた。


「ありがとう。リーアさん。見つからなかったから、助かったよー」


「いえいえ。他にはどんな物買ったのかにゃ?」


「今日はねー。お菓子と、ラビット人参とアクアリウムの砂時計だよー」


「アクアリウム…………あれを使えるなんて朋ちゃんの師匠はやっぱり凄いんだにゃ。観賞用とは思えないし、凄いにゃー」


「どんな効果があるの? アクアリウムの砂時計」


「観賞用で使うというか、置物にしているお金持ちは結構いるんだけど、本来の使い方が有って。まぁ、簡単に言うと海と繋がっているんだニャ」


「え? 海って、あの海?」


「そう。高位の魔法使いだとアクアリウムに手を突っ込んで海の海産物を手に入れる事が出来る。らしいにゃ」


「ふぇー。そんな凄い効果があるんだー」


「でもそんな事が出来る人まずそうそういないニャ。他にも深海近くに面しているアクアテラリウムの砂時計。ジャングルなどの深い森の奥地に面しているパルダリウムの砂時計。他にもテラリウムの砂時計やビバリウムの砂時計とか色々種類はあるんだニャ」


「色々あるんだねー。でも、そんな事が出来るのならそれはとても便利なんだろうね」


「普通はというか、殆どが観賞用のはずだニャー。それぐらいに難しい事って聞いたことがあるにゃ」


「そっかー。でもあの姉さんならって思っちゃう私はだいぶ感覚が狂ってきているのかも」


「状況や立場が人を変えるって親方が言ってたにぁ」


「あぁ、そう。そんな感じ。そういえば図書館って方向的にどっちの方?」


「えっと。図書館はあそこに見える通りを十分ぐらい歩くと左手に見えると思うにゃー」


「そっか、ありがと」


「調べ物かにゃー?」


姉さんの話していたスキルについて調べたくてって話すと、あー。にゃるほろー。私も去年調べたにぁ。とリーアさんは話している。


「商人を目指したのはコードが無かったからってのも、少しはあるのかもしれないにゃ。あ、でも有っても私は商人目指しただろうニャー」


「やっぱり才能よりも好きな物を目指すのが良いよね?」


「うん。それが良いと思う。あ、朋ちゃんにはこのついでに話しておこう」


「え? どうしたの?」


「実は近いうちに他の街へ行く事になってるんだ。行き先は恐らく王都か、その近くの街」


「…………お仕事で?」


「そう。親方が此処での商売上手くいったからこの勢いで王都にも一件作るという話で、悩んだけど私も一緒に行く事にした……にゃ」


「此処からだと結構遠いいの?」


「うん。此処からだと馬車でも一ヶ月以上掛かると思う」


「そっかー。……………………でも、好きなことをする為だもんね。頑張ってね! リーアさん」


「ありがとー朋ちゃん。ちょっと修行。してくるね」


「いってらっしゃい。リーアさんとはまた会える気がするから、さよならは言わないよー」


「そだね。朋ちゃんとは赤い糸で結ばれてるかもしれないし」


「……リーアさんが言うと何故か糸に絡まっている絵が浮かぶんだけど」


「それは猫のせいにゃー」


「あはは」


うぅ。残念だけどもう当分会えない。でも生きてるから、何時か会える。それだけでも全然違う。行く気になれば会いにも行ける。それって全然違う。うん。前向きに前向きに。倒れるときはー前のめりー。あぁ、ジョセフ父さんが良く言っていた言葉を思い出したよ。

私はリーアさんの手を握りぶんぶんと振った。


「わぁわぁ。ちょっと朋ちゃん」


「私は図書館へ行ってくるね。リーアさん。またね」


「――――うん。またにゃ」

ご拝読頂きありがとうございました!

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