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88分岐点

『フン。余裕だな。「ゴブリンサークル」発動』



プリンスは地面に手を当てて何かしている。


数秒見ていると円が地面に描かれその大きめの円からワラワラとゴブリンが現れた。


召喚術の一種か?


…………中には弓を持った者や杖のような物を持っているゴブリン達。


個体差があり大きいのから小さいのまで各種揃っている。

まぁ、プリンスちゃんは強いと思うけど雑魚が幾らいたって魔法で蹴散らすだけだけどな。


「無駄だぞ? セフィロトから創造せし連なり合う四原種の理。太古から事象を連ねる炎の化身、かの者の敵を燃やし尽くせ。インフェルノ」


先ずは挨拶だよとばかりに召喚したゴブリンの集団目掛けて最上級火炎系のインフェルノを投げた。


思いっきり投げ付けた為、こんな形で、利き腕でも無い左腕からの攻撃魔法でも速度は速くビュンというスピードで業火の球はゴブリンの集団へと突き進む。


……右腕はやっぱもう使い物にならないみたいだ。


回復系の魔法覚えないとなぁ。


…………この身体が治るかは知らんけど。



インフェルノは狙った場所で発動。燃えさかる黒色の炎。

それは足も速くドンドンと周囲に移り召喚した全てのゴブリンを一気に覆い尽くした。


その場を俺の気持ちが悪そうな笑い声が低く響いた。

そして一方ではその光景を見ながら唖然としているゴブリンプリンス。


『オイ、マジかよ…………』

「………………」


「さぁ、どうする? プリンスちゃんよ」

『お前…………何者ダ?』


「…………俺はお前のこと知っているんだけどお前は解らないか」

『お前みたいナ気味が悪いウサギを俺は知らないゾ』


「……そりゃそうだろ。コレは唯の外身だからな。……俺はお前達の巣に入ったときの朋ちゃんだよ。ヨメとか巫山戯やがって。俺のファイアボールもそのマントで防いだんだろ?」


『…………アー。厄介だな。そういうコトなんだな。オマエは強いな。種アカシ有り難うヨ。フン、納得がいったゼ』


「お前――――――――やっぱり朋だよな? 俺の事が…………解るか?」

「……ん? 俺を知っているのか?」


「あぁ、お前は朋だな。間違いない。俺は――――――――郷愁だ」

「………………へ? 嘘だろ? オイ」


「いやいや、そんな事しても何も意味ないだろ。腐れ縁の友人よ。何なら穂美香ちゃんは俺が貰うぞ?」


「……………………あっは。マジ本物かよ。……ちょっと異世界へ帰って来たのか?」


「…………あぁ、ああそうだな。夢にまで見た異世界だよ、此処は本当に最高で最悪によ」

「まだ動けるか? ノスタルジア?」


「その名前で呼ぶなぁーーーーーーーーー。う、動けるか、だと? 誰に聞いてるんだ? これからだろ!」


「よし、奴を撃退する。腕とか足の一本でも良い。叩くぞ! 郷愁」


……これは嬉しい誤算だ。郷愁がどれ位強いのか知らないが手心が分かる、考えや動きが読めたり連携できる味方がいるって言うのは言わば有利すぎる状況だ。


しかし郷愁、フルボッコじゃねーのか? あの顔。


まぁプリンスちゃん強いからな。

しかも禍々しいオーラが更に強まっている気がする。



コイツ…………思ったより大物なのか? 


………………敵の強さを見誤るのは敗北への一歩。




しかし、今の現状で敗北ってどういう状況よ? 夕顔ちゃん逃がしたし。

……うーん。


此処でコイツと戦う意味って何だ?



もしかしたら? あれ、あれれ? 叩くぞとは言ったものの意味を見失ってるゾ?


逃げるか……。



……実際はこのボディーも何時まで保つか解らないんだよな。



『チッ。二号ちゃんもイナいんじゃーもうオマエ達とヤル意味無いじゃネーか……蒔いて帰るか』


『……アイテム 奈落の収穫祭、発動。オレは帰るゼ、コレは土産ダ。運が悪ければ死ねるぜ、ハッハッハ』


そんな事を話しながらゴブリンプリンスは奥の岩陰から消えていった。


…………奴も同じか。


しかし、予想以上にドンドンと強くなってる気がするな、あのゴブリン。


「おい朋。何だコレは?」


ふと郷愁の方を見ると地面から何かが……植物? が勢い良く生えだしている。


そういえば置き土産的な感じで何かしていったな。

その植物は成長スピードが速く触手のような草が増えている。


「郷愁…………お前、触手モノも好きだよな? 俺は苦手だ」


「いあいあそれは違うだろ。美少女的な女の子がグヘへとばかりにってのが良いんじゃねーか。おっさんが触手に何をされて喜べと?」


「お前なら喜べる筈だ。でももう此処に用は無くなった。帰るぞ、郷愁」


地面から生えた草はドンドンと増えている。相手にしてもきっと切りが無さそうなので取りあえず帰るか、夕顔ちゃんも心配だし。


ちょっと高いけどフライで行けるだろ……。


魔法を唱え先程の三階層を目指す。


「うわぁ…………ちょっと朋、助けてくれ」


ふと見ると郷愁が草に揉まれている。

「………………良い案が浮かばないから魔法でも投げ込んで良いか?」


「えぇー。……お手柔らかに頼むぜ」


…………お手柔らかって状況でも無いんだよな、もう。下を見ると草は伸びきって郷愁など何処に居るか解らない。



ファイアボール…………いや、インフェルノだよな、此処まで酷いと。




「郷愁、死ぬなよ。…………インフェルノ」


数分経過し俺のインフェルノは草の全てを焼き尽くした。

しかし幾ら呼んでも郷愁はいなかった。


「…………まぁ奴なら大丈夫だろ。悪運は俺より強い」



俺は見捨てる様に諦めて地上へとフライで飛んだ。






結構な長い時間ふわふわとフライで上を目指す。



降りるより登る方が全然大変だぞコレ。

MPも大分減っているけど多分、足りるだろ。



「お、三階層が見えてきた」


ふわっと三階層へ着地し地上を目指そうとした所で何かの匂いが鼻を掠める。


……あれ、何の匂いだっけ、うーん。


微かに匂ったほのかな柑橘系。気になったけど微妙に解らなかったのでそのまま地上を目指す。

まぁ、何処にでもあるような…………装飾品や服とか繊維の匂いかなぁ。



……何故か開きっぱなしになっている扉を越えて進んだとき違和感と共に突然、思い出した。


あの匂いって…………。


「…………朋ちゃん?」


…………うげ、まさかあの大穴ですれ違ったか? ……何かそんな感じな気がしてきたぞ。


ってどうする?



……朋ちゃんに会えるのなら戻らないとやっぱ駄目だな。


このまま地上へ戻っても朋ちゃんいないんじゃ後々面倒なことになるし。



マジかー。くっそー。ミスった。

い、何時すれ違ったんだよ…………。



…………っ、仕方ない。七階層まで一旦戻るか。


凍っているシラクさんを一瞬見て再び七階層へと戻る事にした。


俺の体力とMPが保つか微妙な感じにもなってきたが。間に合うだろうか?

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