85うさたんの冒険
遡ること数時間前。
ここがジュリアダンジョンか。しっかしこの身体。どうなのかねェ?
俺は今、朋ちゃんの手にくっついていたウサギのぬいぐるみ風ミサンガの中にいる。
歩くとピコッピコッとか音が鳴りそうな身体。
ここに来るまで結構な人達の白い目というか怪訝な目で見られ、何というかまぁ、
恥ずかしいをたっぷり味わった。何かに目覚めそうな程に。
身長は約三十センチ程だろうか? 一体この身体で何をしろというのか?
というか出来るのか? 少し疑問だけどまぁ、そこはソレか。
実際は魔法は打つことが出来るし通常の俺が出来そうなことは大概出来るこのスーパーなお身体。
一体どういう構造してるんだよ。顔なども繊維で動きが自由。顔芸なんてお手の物だ。
コイツ良く絶望した顔してたよな。
でも自分で意識して行うと意外に面白かった。顔芸。
しっくりとくるんだ、何故か。
そして骨が無い分、更に凄い動きも出来る。でもちっこいぬいぐるみなんだよね。
問題は防御力と歩幅か? 意外に早くも動けそう、猫ぐらいの反射力もある。
ウサギだけどな。
早くジュリアに入って夕顔ちゃんを助けないと。
恐らくだけどプリンスちゃん辺りとエンカウントしてると思う。
きっと強制イベントだな。絶対に避けては通れない的な。
しかし今の夕顔ちゃんではプリンスちゃんにはどう足掻いても勝てないよな。
今の俺がいてもどうかなぁ…………。
でもフラグは立ち、動き始めている。
多分、敵は強くなってる。
何とか夕顔ちゃんの早期レベルアップが必要、必須だ。
…………だけどトラウマ克服しないと何も出来ないだろうなぁ…………。
兎にも角にも時間が必要だ。先ずは合流しないと。
ダンジョンの中は先程のジュリエッタと似通った構造をしている。今の身長からするととんでもない程の大きさのダンジョンだよ此処は。
歩幅も短いから時間掛かるのよ。ピコピコ。
……少し一本道を歩くと敵モンスターが現れた。
お前はフロアーラビットだな。
ちょこまかと跳ねるその個体。
あぁ気がつかなかったけど、俺も今似たようなもんだな。ラビットだ。
「よう同族…………またな」
無詠唱のアイスを敵フロアーラビットにクリティカルにヒットさせ沈黙。
ウサギで氷の彫刻が二体出来上がり。同族でも容赦はしない。別に同族では無いかもだが。
更にテクテクと歩き進むと今度は空中を浮かぶ何あれ? ふわふわ。
ええと確か鑑定が…………バルーン。
風船か? 空飛ぶ風船、殺傷能力無し。時折割ると爆発を起こす。
「……いじらなきゃ良いのか? 振りじゃ無いよな?」
俺はニコニコした顔をして素通りした。
心なしかバルーンは寂しがっている様に思えた。
遊んで遊んでー、ねぇねぇ、割ってみない? ん? ん?
とか言いたそうだ。
しかし俺は無視を決めた。…………ついて来んなよ?
心なしかバルーンは少しだけしぼんでいる。
……次に現れたのはええと、デスチャージ。
ほぅ。名前は強そうだが……能力は名前負けレベルだな。
静電気を少し強くしたぐらいの攻撃か。一応は電撃の攻撃をしてくるらしい。
コイツは少し大きめの石の色をした外殻を震えさせて電気を貯めるとか。
とりあえず俺の、いや、うさたんの足で端にけっぽっておいた。
蹴った時バイーンとか、ぽよーんとかの効果音がした。爆発したらボカーンとか音しそうだ。
二階に降りる前に現れた敵は今までを見る中では結構、強めの敵。
マントラップというモンスターで。
幻覚を見せる事がコイツの得意技で侵入者の好きな物、興味がある物を見せる。
それを囮に捕まえてちゅーちゅーと生気を吸うんだってさ。
囮に食いつかないと見ると切り替えた戦い方もする。植物なので太めの蔓を何本も使い振るってくるらしい。
俺の興味がある物。ほほぅ…………見せて貰おうか? 幻覚とやらを。ニヤリ。
ふひひ。ほへへ。うほうほ。
嫌々、無い無い。またまたー。それはイカンだろ常考。
……ほほぉ。そんなんなってんか。ふへへへへ。中々えちちやなぁ……
って、おぃ。俺の繊維を吸うな! ちゅーちゅーと。
「サンド」
砂が混じった特大の岩がうさたん(俺の右手から)射出。近距離というか、俺の左腕にくっついた触手と本体も含めて特大岩で吹っ飛ばす。
そのまま岩と共に壁に激突しペッタンコになった。
夢魔だったな。
だけど俺の想像力をブーストさせるとあんな感じの夢物語が見られるって事なのか?
まぁ、この世界も誰かの夢の現実化か。でも今おっきするもんないんよ。
ふぅ。危なかったぜ…………己の想像力に俺が勝てる気がしないからな。
さて、次いこ。つぎ…………。
二階に降りて更に進むと直ぐにエンカウント。
……ええとコイツは…………ダブルオーウルフか。
まぁ少し強いわんわんお?
見た目はそんな可愛くねー。
タッタカと俺目掛けて走ってくるが口を開けて俺の身体を噛みつこうとしているみたいだが囓られたくもしゃぶられたくも無い。
俺も中々の変態だけど嗜好が違う。
飛びかかった時にアイスを唱えダブルオーウルフの口の中に突っ込んだ。
勢い良く飛びかかっては来たもののそんな攻撃を食らえば一溜まりも無い。
何故か結構凍るスピードが速く内側から外側へと凍って地面に落下。
衝撃で一部が砕けた。
なるほどなるほど。そんな感じか。
更に俺はてくてくと歩いていると岩陰からブーンとかブワワーンみたいな感じの音が聞こえた。
あれは……トンボ…………オニヤンマか。
…………どんな攻撃をしてくるんだ?
おれは興味を持ち見ていたらそのまま通り過ぎていってしまった。ブーン
………………なんだよ。期待させやがって。
その後もガスクラウドにグール。
飛鉄に石獅子などの敵が現れたが魔法一閃。
簡単に倒していった。
まぁ、こんなもんか。うさたんな俺の敵では無い。
そして大した敵も出ないでもうあの辺は三階層終点だよな。最悪だと最終の七階層まで行くことになるのかね。
先は遠いな。一人だと寂しいし。
でも待っててね、夕顔ちゃん。絶対に助けるぜ!
ん? 女性が壁により掛かっている。うん。死んでは無い様だ。
気を失っているだけか? 少し頭に血が付着している。もう止まっていそうだけど。
…………お、目が覚めたか?
「……………………」
「よぉ……大丈夫か?」
「…………ひぃっ」
……あぁ、うさたんだしな。
怪しい者では無いのにって台詞は怪しい奴が言うと怪しさ満点だな。
「落ち着け……此処はジュリアの三階層だろ? 何が有った?」
「……………………あ、け……ケイ…………う……うぁぁぁぁぁあああああ」
止める間もなく女性は走って行ってしまった。
うーん、まぁ仕方ないか。
…………この扉の中か?
何だかボス部屋っぽいな。雰囲気が……そんな感じだ。
扉を開けて中を見るとそこには底が無かった。
「……………………ええと」
一体何が起きたんだよ、コレ。
あ、でも遠くに床があるな。誰かがいるぞ? んーとあそこまで行くには何の魔法が良いかな?
考えるまでも無いか「……フライ」
外だと始めて使うんだが飛ぶ魔法を試してみた。
ん。普通に飛べるね……この魔法、結構高位の呪文なんだよな。
でも飛べるってのは結構便利だし良いよな。
結構魔力の消費は激しいから消費を抑える奴も覚えないとなぁ。
ま、あの人がいる所に行ってみますか…………。
距離にして30メートル位か? 飛んだ後、地面に着地した。
「…………あれ? ジュリエッタで見たような」
『…………ん。何だ? 人間…………では無いな。オマエは何者だ? ……しかも、俺の事を知っている様だな? 変なウサギよ』
多分ジュリエッタにいたヴァンパイアだよな? あそこで倒れている戦士と戦っていたのか?
まぁそんな所だろ。
「おい、アンタ……大丈夫か?」
俺は倒れている男に近づいて話しかけた。
「……………………うぅっ……いや、もう俺は駄目だ」
見るとかなりの怪我をしている。顔は血だらけで片腕が無い。
「幾つか答えてくれ…………此処に夕顔ちゃんという女の子がいなかったか?」
「…………あぁ、俺のパーティメンバーだ。メン、バーのジローと共に…………穴に落ちた」
「解った。ありがとう。……お前はヴァンパイアにやられたんだな?」
「…………そう……だ」
「仇は取ってやる……お前の名前は何だ?」
「俺は…………シラ…………ク…………あとは……たのん……だ」
「おう。頼まれた。……安心して休め…………シラク」
シラクという戦士はヴァンパイアにやられた様でもう瀕死な状態だ。血が止まらない。
俺が彼にしてやれる事を何か他にも考えてみたが思いつかなかった。




