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83さり気なく強い人

まだジローさんとは会って間も余りないけれども、信頼しても良いのかも。


信じて、頼ってみよう。

今の私は特にゴブリンには全然自信が無い。


ゴブリンと対峙して、自分がどういう行動に出るのか。


その瞬間の自分の動き、行動を信じる事が出来ない。


でも、ジローさんがあんなに頼もしい事を言ってくれた。

それはとっても有難いよ。


私は今、そもそも自分に自信を持つことが出来ない。

せめて、朋ちゃんがいてくれたら……。


……こんな私でも、彼女の隣に…………。



この先の道を進めば必ず絶望に出会うだろう…………それは、あの手紙の内容だから。


そして、その先にも光は無いのかも知れない。


あるのは、答えだけ。




世界は、どういう風に答えてくれるのだろう。



……今の私が朋ちゃんの隣に胸を張って並ぶには、一体……どうすれば、どうなれば……良いのだろう?


似たような問題とゴブリンの事。

解っていても、知らずと答えを求めるかの様に考えてしまう。


考えただけで簡単に答えなど出ない事も何処かで解っている癖に。


朋ちゃんの強さというか、凄さって実際もう良くわかんないんだ。


成長するスピードが速いのと、強さや何かを楽しんで求める心のあり方とか。


何にでも臆すること無くやってみるという好奇心とか。

勿論、弱点や欠点も見えるけどちょっとドジでお茶目に見えてしまうぐらいなんだよね。



そうか、底が見えないんだ………………全然。


そんな凄い人に対し、並ぶっていう事を私はまだ理解していない。


その道は夢であり――――――――


そうなんだ。


それはぼんやりとした夢の形。


手をどれだけ伸ばせば触れることが出来るのか、空にとても高くある、あの月と同じ。


見上げているだけでは絶対に――――。

絶対に届かないんだ。



そういえばグラ子さんに夕顔ちゃんは真面目やなぁって言われたよね。


でもそんなことだって、解っていても嫌なんだ、その状態を自分を騙して見てみない振りを私は出来ないよ。


……私は少し真面目過ぎるのかもしれない。


もう少し、柔らかく考えないと。

『この世の中は何時だって誰かの行動の結果の世界なんだから』


誰かが何かをしたからこうなったという。

とっても解りやすい真理。


隣に住むお姉ちゃんに回復魔法と共に教わった私の好きな言葉。


自分の好きな世界にするには、自分が少しでも行動しないといけないんだ。


その結果が明日の……。

未来の……自分の世界なんだから。



見上げているだけでは駄目、動かないと。少しでも、変えないと、今の私を……。



「――――よし、そろそろ行くか」


シラクさんの言葉と共にみんな立ち上がる。

あそこに見える赤い扉の向こうに行く時間だ。



想定されるボスは幾つかあるらしく聞いてみたら、ワイトやサイクロプス。

ガーゴイルとかキマイラにマンティコア、ミノタウロスとか、最低でもそれ位の強さのボスが現れるみたい。


どのモンスターも名前は聞いたことがある位に有名な魔物だね。

きっと朋ちゃんだったら楽しみだね、ワクワクだよって言うよね。


そういう所は素直に見習いたい。


「……大丈夫かい?」

「はい。万全です!」


私は先に進まないといけないんだ。


…………世界が私に答えてくれるその日まで。



赤い扉の前に集結する五人のジュリアダンジョン攻略パーティ。


前から、リーダーのシラクさん。隣にはケイジさんで後ろにイコさん。

そしてその後ろに私とジローさん。


「では、行くぞ…………」


リーダーのシラクさんは赤い扉に手を掛けそのまま押した。

赤い扉はそこまで力を掛けなくても何らかの意志の力が加わったかの様に、ゆっくりと開いた。


扉の先は、広い…………。


とても広い空間で、天井も結構高く此処は本当にダンジョンなの? と思わせる程の場所であった。


大きい空間の内部は明るく酸素も十分にある。



全員で中心へと歩く。

およそ真ん中付近に辿り着くと何処から共無くカウントダウンを告げる無機質な声が聞こえた。


その声は十から始まり一秒毎に数が減るアナウンスが流れた。


そして地面には数字が淡い赤色の文字で描かれていく。

その数字は九十九を表した。


更にカウントダウンは続いている。


「不味い、コラボだ……皆、入り口の壁側まで走って体勢を整えるぞ!」


皆が振り向き入り口へと走る。


その間にもカウントダウンの声が響きその数字はゼロを告げた。


「……まずは何の敵が出るかを確認してからだ。敵が二体出る事が確定したので備えろ!」






シラクさんの指示の元、みんな入り口付近の壁側まで待避し、敵、中ボスは一体何が出てくるのか。



数十秒の後、中心部付近に黒っぽい靄のような者が現れその空間を支配した。


その靄はどんどん大きくなっていく。

ある一定の大きさになりその靄は形を変えていく…………あれは、人?



「あの出現は…………ヴァンパイア」

「……大当たりだ」


「あはっ。倒せたら大儲け出来るよ、ケイジ。そしたら借金返せるね」

「おいバカ……止めろ」

「あ、ゴメン」


薄い暗闇のもやから出てきたのは、身長が高い細身の男の子だった。


……男の子は周囲を確認するように眺めている。


『此処は…………ジュリアか?』


『ふぅ………………糞っ。三割だぞ、三割。彼奴らめ、やってくれたわ…………』


『まさかこの俺が一瞬で三割もの肉体を失うとは……あの人間、只者では無い』


『ん? 嗚呼、此処はジュリアの大部屋……ひぃふぅ…………五人いれば二割は回復できそうだ。よし、人間よ。崇高なる我の血肉となれ!』


「…………まだ待機だ」


『俺は今とても血に飢えている。来ないなら此方から行くぞ……人間』


『…………あぁ、そうか。此処もコラボだな、相手は…………信じられん。俺のが先だと? ……糞っ! 三割失ったとは言えこの俺様だぞ! どんな奴が選ばれたんだ?』


中心付近の靄から出てきた高身長の男の子。

普通の見た目でヴァンパイアなんて言われても、そうなんだとしか思えない程に人間と変わりは無い。


そのヴァンパイアの男の子は直ぐにでも攻めてくるかと思われたが何か、思うところがあったのか、考え事をしている様な……。


顎付近、口元に指を当てて何かに悩んでいるのかも知れない。


『…………出てこないな。俺様の勘違いか? もうとっくに現れて雑魚で倒された後が今なのか? ……まぁ良い』


「……くるぞ、今までのフォーメーションで行くぞ! 強敵だ気を付けろ」


霧から出てきた男の子は中心から此方へ近づいて来ている。


動きは少し独特で身体に霧を纏っている様に見え、動きは残像を残しながら動いている様な移動をしている。



前衛のシラクさんとケイジさんとの交戦範囲に入り戦いが始まった。


敵ヴァンパイアの動きは速く、シラクさんとケイジさんは一歩、間に合っていない。


ヴァンパイアの男の子は爪による引っ掻きを多用していて前衛の両名共にその攻撃の傷を幾重にも受け手はいるが、威力は低めみたく、イコさんの回復魔法が十二分にも間に合っている様に見えた。


確か、高位のヴァンパイアになる程攻撃などのスキルの種類が多く多彩に使って翻弄する戦いに特化しているって……本に書いてあったかな。


攻防は味方シラクさんとケイジさんの方が押している様だけど、スピードでは少し負けている。


長期戦になれば此方が有利になる気はした。


しかし、今回の戦いはもう一体現れるらしい。

それの意味する所は間違いなく此方が不利になるという事だろう。


シラクさんとケイジさんの連携は意外に様になってきていてヴァンパイアを追い詰めるのだが、あと一歩という所で敵は消える。


否、姿が消えて霧が発生し、その霧は少し離れた所まで動き何らかの拍子にヴァンパイアの男の子の姿に戻る。


『意外にヤルな、人間め……まず一人、潰しておくか…………ブラッドセンチュリー』


敵ヴァンパイアは掌をケイジさんに向けた。


掌から何かが出ているのか、眼で追うのが精一杯の早さで勢い良く射出されたソレは秒でケイジさんへと迫った。


ケイジさんは咄嗟の事でガードをしようとして気が変わったのか身体を捻り躱すことを試みた動きが見えたが敵の攻撃は早くケイジさんの肩口を貫いた。


「グアッ!」

「ケイジ! …………癒やしの風」


直ぐにイコさんが回復魔法を唱えた。

思ったよりダメージが強い様で膝を付くケイジさん。


鋭いヤリの様な形状をした物は大きさ十センチ程。

それが肩口を貫いた。


そんな時に隣の彼はこう言った「ちょっと行ってくる」


瞬時、隣に風が吹きジローさんは前線へ向かい戦線を押し上げるような動きでケイジさんとイコさんのバックアップに入った。


「手伝います」


私もイコさんの所まで向かい中々な怪我をしたケイジさんの治療に加勢する。


治療するための魔法を唱えながら前線を見ると、敵ヴァンパイアは先程までの動きが更に早くなり二人にプレッシャーを与えている。


加勢したジローさんはシラクさんとの距離感を合わせつつ敵ヴァンパイアの動きに付いていっている。


ジローさんのスピードは速くヴァンパイアに勝っている様で手持ちの短い剣で一撃。


更に一撃と削る様な攻撃を行っている。


これが良く当たりシラクさんも続けとばかりの動きをし戦いは優勢に見えた。


『糞、なんナンだ今日は! 巫山戯やがって……もう一度だ! ブラッドセンチュリー』


先程ケイジさんの肩口を貫いた技は次にジローさんを襲った。


近距離からの早い敵の技に対しジローさんは動かない。


あぁ、駄目って私は思ったけど、ジローさんはすんでの所で敵の技を躱した様で、そのまま敵の技を横目に剣を当てながら前方へ走る。


ギャリギャリと甲高い音を鳴らしている剣。


勢いのまま走って敵ヴァンパイアに剣を振りかぶり勢い良く力の乗った一撃を叩き込んだ。


『グッ…………』


ヴァンパイアの手はジローさんの剣により引き裂かれたが、残像を残しながら後方へと逃げた。



とても…………。


とても早い動きだった。



『お前は強いな……人間め』

「お前もな…………化け物」



……少し、間が開いた。

ケイジさんの治療を続ける私たちにとって時間を稼ぐのは良いように思えた瞬間だった。


『ゴーン…………ゴーン…………』


鈍い、とても鈍く重い鐘の音が何処から共無く聞こえた。

何の音だろう。何かを告げる音色かしら。



――――その時に誰かが叫んだ気がした。




中央から離れろと。

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