82私に優しい大人の男性
「よし、終了だ。皆、怪我は無いな?」
シラクさんがメンバーにそう話し皆で顔を見合った。
ケイジさんは度々オークの攻撃を受けていたが、イコさんの回復魔法で十分に間に合う程度の怪我で済んだ様だった。
やはり、みんな強いね。
結構敵のオークも強かったと思うのだけどこのパーティにはまだまだ余力がある戦いだったと思う。
人数もすごく正義。
多ければ多い程――――とまでは言わないけれど、何人かいるだけで安定度が全然違うし、選択肢も沢山増える。
メリットの方が多く感じられた。しかも、これでも野良なんだ。
実際、私は後衛的な動きを心がけ、オークとは直接は戦わなかったけど、この戦いに参加出来た事が自信に繋がる気はした。
「結構強かったな、オーク」
「そうね、単体で良かったわね。取り巻きや他の個体がいたら危なかったかも、って思うけどまだ此処って三階層よね……」
「……そういえばそうだな、嫌な感覚だ……本来コイツがボスでも良いぐらいだろ?」
「――――確かに、それ位の強さも風格もあったな……よし、再び十分休憩してから作戦会議後、中ボスに挑むぞ!」
「おっけ……」
「はーい」
「解りました」
「ういよ」
各々返事をし、休憩に入る。
私は自らを落ち着かせる様に「ふぅっ」と息を吐き出し、メンバーが座りだした場所に間隔を取りつつ座った。
隣にはジローさんが腰を下ろし話しかけてくる。
「中々に強かったね、オーク」
「――――そうですね。でもみんなも強かったですね」
「そうだね。この後の中ボスは何が出てくるか……」
「そっか、何が出てくるか解らないっていうのは面白いですね」
「そうそう。余りに弱いのが出てきても拍子抜けするし、強すぎるのが出てきても困るよね、倒し甲斐はありそうだけど」
「……ジローさんって結構強いですよね?」
「…………そうかい?」
「戦闘中の動きがそんな感じに見えます」
「そうか…………あぁ、でも君を守れる位には強いかも知れないね」
「…………話し方も上手ですね」
「まぁ、伊達に年を取っていないさ。でも夕顔ちゃんも……学校まだだよね?」
「あ、はい……来年行こうとは思っています」
「俺の知る限りだと、学校を行く前にダンジョンを始める人は殆どいない筈だけどね」
「そう……なんですよね…………」
そんな話をジローさんと話していたら、シラクさんの合図で作戦会議をする事となり、丸く陣を組む様に五人座りこの先の中ボスに向けての会議をする事になった。
今回のジュリアダンジョン攻略はイレギュラーが生じた。
それは中ボスが現れるフラグとの事。
中ボスは何が出てくるのか解らないけど、報酬は悪くは無いらしく、基本的にはチャンスと捉えられているらしい。
中ボスの強さはピンキリで中に入り開始する少し前にナンバーが分かりそのナンバーと共に何のボスが現れるかが分かるというシステム。
しかし、此処はダンジョン。
イレギュラーも数多くあり、寧ろイレギュラーありきな考えを持たないとダンジョンは向かないという話みたい。
私はゴブリンさえ出てこなければ大丈夫……あーもう、こんな事考えていたら出てくる可能性が上がりそうでほんと怖い。
でも中ボスにゴブリンって言うのは……あ、でも色々な種類もあるし、出てきても可笑しくは無いのかなぁ……。
私が知っているだけで、ゴブリンシャーマンやホブゴブリン、ゴブリンキングにこの前のゴブリンプリンス。
他にもチャンピオンや英雄とかロードとかもいるらしいし。
と、兎に角ゴブリン以外でお願いします……神様。
結局、どんな中ボスが現れるか分からないから、強敵が現れた時は下がり気味で~とか、持久戦に持ち込むとか負傷したときの対応などを話し込んだ。
基本的なフォーメーションは今までと同じ、前衛から2-1-2という感じで初めて負傷者が出たらジローさんが前に出るという形で行く事に決まった。
その際には私もイコさんの隣まで上がり、回復の手伝いをメインにして、攻撃魔法はチャンスやここぞという時に頼むと言われた。
何の敵が出てくるか解らない戦いというのはそれだけで難易度が上がるんだね。
頑張らないと……。
最後に最悪の展開。撤退について話し合った。
敵が強すぎて話にならない時は勇気を持って撤退しようと。
シラクさんは今回、一人でも撤退を進言したら撤退にしようと思うと話す。
そしてペナルティーについても話してくれた。
ボス戦で撤退するとそのダンジョンには一年間は挑めなくなるって事みたい。
うーん、人に依っては重いペナルティーなのかしら。
……私は最近、逃げてばっかりだ。ゴブリンだけだけど。
とりあえずゴブリンが出てきたらどうしよう……そこだけ考えておかないと皆に迷惑を掛けてしまうよね。
此処さえ終われば、また朋ちゃんとダンジョンに来られる。
……頑張らないと。
飴に必死ですがる気持ちに何か似ていた。
「とりあえずこれで作戦会議は終わりだ。再び十分の休憩を取った後に……挑む。各自、用意は万端に行こう」
シラクさんの話と共にみんななんとなく少しだけ離れて休憩を取る。
私の隣には少し遅れてジローさんが先程と同じように座る。
「シラクさんと何か話していたんですか?」
「あ、ちょっと撤退についてね……確認を取った」
「なるほど……」
「…………君に話すのも何だけど、今回、俺の目的は君の安全にした」
「えっ? そ、それはどうして?」
「んー。単に初心者だからだよ? 年齢も若いし」
「そうですか……それは有難いけど…………ありがとうございます」
「……うん。だからって事でも無いけど、安心して」
「はい…………あ、私、話しておかないといけない事があって……」
「……というと?」
「……ええと。…………私モンスターのゴブリンが苦手で」
「あぁ、……そういう事か」
「――――はい。なので、他は大丈夫だと思うのですが、ゴブリン系が出てくると多分、私……動けなくなっちゃうかも」
「…………解った。その時はそれなりに守ってあげるよ」
「ありがとうございます。…………でも、それなりですか?」
「っ、あぁ、確かにそれなりじゃ可笑しいか…………うん。必ず君を守ろう」
「あはは。ありがとうございます」
「うん。任せてよ。それと……話してくれてありがとう」
「………………」
ジローさんは何故か私に優しくしてくれる。考え方もとても大人の人だ。




