81中ボスのフラグと風格のあるオーク
ダンジョン内では勿論、敵モンスターも現れて、その敵に対し攻撃し倒す。
という感じで難なく進んでいた。
私の出番はまだ無い。
更に進み、地下二階へ進んで最初の敵に出会った辺りで何となくパーティーの雰囲気が明らかに変わった。
敵はウルフ一体。個別名はダブルオーウルフ。
狼の種類は結構、細かく分類されてはいるのだが、この個体は特徴があり身体の毛に大きい丸が二つ並んで描かれている様な紋を持つ狼で強さ的にはそんなに強くはない。
大体コボルトと同じぐらいで、スピードはそこそこあるが攻撃性に関してはそこまで無いから脅威度はかなり低い。
このダンジョンでは初めての遭遇となる。
主な攻撃は牙と爪だけど力が弱いため怖さも無い。
しかしパーティの雰囲気が何故か変わった気がした。
でも敵は弱いので私の出番も無いままダブルオーウルフは前衛の二人に簡単に倒された。
そしてそのまま進む。
二階層の終わりまで敵モンスターと何度か出会い戦闘になるが、敵が弱いのと前衛が安定している事もあり何事も無く進んだ。
三階層の入り口を見てリーダーのシラクさんは少し休憩しようと言った。
皆、頷く。なるべく近くに寄った状態で円を組む様に五人は座った。
……何か、話があるのかしら? この階層の始めの敵が現れてから少し……いや、結構、解るぐらいに空気が重くなった。
「…………知っている者は解ったと思うが――――ズレが生じた」
「……そうだね」
「ああ…………」
「………………」
「………………」
「一応知らない者がいても困るので簡単に説明だけする。一階層の始めのモンスターと二階層の始めのモンスターがズレた。ジュリアとジュリエッタダンジョンでは基本同じ敵が出現する。しかし…………今回みたく一階層の始めフロアーラビット、二階層の始めダブルオーウルフとズレた。これは中ボスが現れる示唆となっている」
「つまり、三階層には中ボスが現れる事が濃厚となった……だろ?」
「……そうだな」
「私たちは願ったりよ?」
「…………裁決を取ろうと思う」
「…………」
多数決の結果、というか満場一致で三階層の中ボスに挑むこととなった。
私は周りの話を聞いて自分で決めた。
少しだけ流された感はあったかも知れないけど。
……でも未知の出来事はワクワクする。
少しでもトラウマから気を紛らわしたかったって言うのが近い感覚かもだけど。
それでもこの世界には色々あるんだ。
私も、朋ちゃんみたいに楽しまないと、この世界を。
「ではあと十分程、休憩してから三階層へ向かうぞ」
皆、各々で頷いている。私は中ボスの事は詳しくなかったので詳しそうなシラクさんに聞いてみた。
聞いた話の第一印象はチャンスであり当たり。そんな感じだった。
結構イレギュラーな事も多いらしいのだけれども、この戦いは「割に合う」という事らしい。
しかも中ボスが現れる確率が結構低く、次のチャンスなんて言うぐらいならダンジョンへ挑むのを止めた方が良い。
とまぁ、そんな感じの認識らしい。
しかし、リスクはあり、初級ダンジョンと言えど年間で見ると結構な数の人が大怪我を負ったり帰らぬ人となったりするらしい。
……それでも「割に合う」とか。
ジュリアダンジョンとジュリエッタダンジョンは結構、似ていて中ボスの情報も似通った所が結構有るらしく、情報だけで言えば、中々に解明されてはきているらしいけど「ダンジョン」とは基本謎の塊みたく、色々な違う顔を見せてくれるとシラクさんは言っていた。
隣でジローさんも一緒に聞いていて、余り詳しくないのか、シラクさんに対して質問もしていた。
……結構強そうなんだけど、ダンジョンには詳しくないのかしら?
ジローさんは話していると良い人そうなんだけど、このパーティでは一番謎の人だった。
私のカンだとこのパーティで一番強そうなんだけどなぁ?
その後、ジローさんとのお話で最近どんな事をしているのかって話になった。
「最近は…………」
…………プリンスちゃんの事を思い出し、こみ上げる何かを消す様に朋ちゃんを思い出した。
「最近は仲の良い友達と一緒に冒険者ギルドのクエストとか、ちょこちょこと、してます」
「……へぇー。どんな友達?」
「あぁ、結構……私と違って結構凄いのです。自慢の友達です」
「そうなんだ…………名前は?」
「あ、ええと朋ちゃんって言って私より魔法が凄くて。……センスというか、能力っていうか、もう自慢で憧れの友達」
「そっか、そっか……凄いね! 夕顔ちゃんの自慢のお友達かぁ。良い子そうだね。今度…………紹介してくれないかな?」
「…………はい。良いですよ」
ジローさんは朋ちゃんに興味があるみたい。それじゃあ紹介しないとって…………あれれ?
そんな簡単に紹介しても良いんだっけ?
……何か、話の流れで、ええと……あれ?
………………ジローさんって、お話が凄く旨い?
何か、違和感を感じるけど何だろう?
うーん。…………まぁ良いか。気のせいだよね。
そしてシラクさんの合図で次の三階層へと向かう事になった。
フォーメーションは三階層へ降りても同じでそのまま。
前衛三人に後衛二人。隣にはジローさん。偶に視線を感じる。
何か、気になるのかな?
って思っていたらジローさんが合図をくれた。
後ろから敵が現れた。同時に前でも戦いが起こっている。
私とジローさんの後衛に現れた敵は見るとマッドスライムとドラゴンズフライみたい。
両方とも名前や特性は知っているけど初見のモンスターだ。
マッドスライムは泥のスライム。
確かにダンジョンならではって感じがした。
動きを見るが、私が知っているその辺で見かける
スライムと変わりが無い。
しーの実の時みたいなスライムくんでは無さそうだ。
ドラゴンズフライは分類すると虫。でも結構大きくてブンブンと飛んでいるモンスターで、時折火を吐くらしいけど、危険度は低い筈。
ジローさんは剣を構えて突撃しようとした時、足を止めてこちらを見た。
「まだいる……」
「………………」
両モンスターの後ろに何かいる。
警戒をしながら様子を見ていると地を這う様な足音と共に現れたのはグールだった。
人型のモンスター。
通称グール。
基本的に動きは遅いが鋭く大きな爪を持ち顎と牙も鋭いモンスター。
力もまぁまぁあるけれども基本的に近接。
距離さえ開いていれば魔法使いな私の敵では無い。
私はジローさんに合図しグール相手に魔法を放つ。
「この世界にある万物の源より紡ぎしマナにより、その力を我に示せ。……アイス」
私の手の平から水と氷が混ざった魔法アイスは対象のグールの足付近へ上手く当たりグールは躓き自分の足を見ながら藻掻いていた。
そこへジローさんは素早く走り込みマッドスライム二体とドラゴンズフライを倒す。
次に倒した事を確認しゆっくりとグールへ近づき剣を振るった。
……やっぱ強い。
動きに無駄が無いね。まぁ敵が弱いのもあるけど凄く良い動きをしている。
しかも結構早い。
剣を手入れしながらジローさんは戻ってきた。
「おかえりなさい。結構強いですね、ジローさん」
「…………そう? まだリハビリ中なんだけどさ、だいぶ動ける様になってきたよ」
前衛の方を見ると、今終わったみたい。合図の音が聞こえた。
再び進む私たちパーティ。
前衛が手こずる位のスケルトンの大群が現れて私たち後衛が前衛に合流する展開が一回あったけれども、それ以外は無難に誰も怪我することも無く順調な運びだった。
スケルトンを見て朋ちゃんを思い出すのはもう仕方が無いよね。
もう何か、単なるモンスターには見えない。
寧ろ愛着が沸きそうな変な感覚すらあった。
三階層の終点。
行き止まりが見えた所でそこを守るかの様に一体の敵、オークが見えた。
パーティのフォーメーションは結構な感じで縮んでいて、前衛が戦いを起こそうとする頃には敵オークも見える位の距離に私たち後衛はいた。
距離が短かった事も有り、なんとか前衛とオークが戦いを起こす前に私たち後衛は合流する。
間近で見るそのオークは中々歴戦の勇者を感じさせる程の雰囲気を持っており、簡単な相手には見えなかった。
これがボスと言っても良いのでは? って私は思った。
陣形は前衛のシラクさんとケイジさん。
その後ろにイコさんがいる所に私とジローさんが合流する。
大きい丸太の様な棒を持ち軽々と振り回している。
きっと、私なんかがあの攻撃を食らったら一溜まりも無いと思う。
動きを牽制しつつ剣を振るうシラクさんとケイジさん。
即席なパーティなのだが、それを感じさせない動きをシラクさんがしている様に見えるが、重くて意外に早い丸太の攻撃、更に空いているもう片方の腕と足、全てを使い歴戦のオークは二人の攻撃を上手く受けている。
始めは躱していたものの、時と共にケイジさんは敵の攻撃を食らいだした。
シラクさんはソレをカバーする様な動きで敵を翻弄もしている。
怪我を負うケイジさんに対し、イコさんは回復を掛け、中々な万全の体制が整いつつあった。
このまま何事も無く行けば間違いなく勝てる。
そんな戦いのパターンに入り込んでいた。
ジローさんも短剣や投げナイフ等の投擲をタイミングを合わせて行っている。
私はこの混戦に攻撃する自信が無かった為、回復を直ぐに掛けられる準備だけに専念する事にした。
歴戦のオークの粘りは凄まじく敵ながらにも感心した。
此処までの戦力差に臆する事無く善戦していた。
途中、ケイジさんが敵の攻撃を躱すとき上手く躱せずに体制を崩したが、ジローさんが上手いタイミングで入り込み、戦線を維持した。
そんな戦いが結構長い時間続き、シラクさんとケイジさんの攻撃が同じタイミングで入り、すかさずにジローさんが追い打ちを掛けた時。
敵オークはズシンという大きな音と共に膝を付きそのまま前へ倒れた。




