72ジュリエッタ攻略開始
翌日、闘技場の『U-五番』で皆が揃った。
今回ジュリエッタダンジョンに挑戦するのは、リーダーで騎士のフランシスカさんに剣士のバスタルフさん。
両名ともCランクの強者。
そして私と同じFランクの魔法学校に通うエレさんといった四人パーティ。
昨日気がつかなかったけど、そういえばこのパーティ、回復する人いないよね。
って思ってフランシスカさんに話したら「私が初級の範囲なら使える」
と教えてくれた。
初級だと応急手当、応急処置に分類されちょっとした切り傷ぐらいなら治せたはず。
「わー腕が取れたー」とか「お腹に穴がー」
とかは無理だったはず。
でもそんな状態を治せてしまうのは相当な腕の持ち主さんだろうけどね。
私は回復魔法は使えないし、覚えてもいけない。
姉さんにはそう言われている。
魔女とはそういう者らしい。
夕顔ちゃんは今の所、中級まででもう少しで上級も行けるかもって話していたかなぁ。
攻撃と回復って凄いね。半永久的に戦えそうだ。
今日挑戦するジュリエッタダンジョンへの構成は四パターンがあって、
前衛にCランクの両名、後衛に私とエレさん。
次にバスタルフさんとエレさんが前衛にフランシスカさんと私の後衛のパターン。
そしてバスタルフさんが前衛に他三人が後衛のパターン。
最後に全員が横並びという編成の四つの種類。
ジュリエッタダンジョンの一階部分だけはバスタルフさんが前衛で他三人が後衛を受け持ち、以降はバスタルフさんとエレさんが前衛で私とフランシスカさんが後衛のパターンに決まった。
もしも強い敵が現れたら私とエレさんは後衛という方向で行くらしい。
こういう打ち合わせに話し合いを織り交ぜて挑むダンジョン。
パーティを組むって良いね。
私も夕顔ちゃんがいてくれて、あの時、声を掛けてくれて、ホントに運命に感謝したい。
一人と二人では全てに於いて違うのだ。
分かち合うとはそれ位の意味を持っている。
でもでも四人や五人といったパーティも憧れるね。
一体どんな経緯で一緒に冒険しようという事になっていくのか。
出会いもあり別れもある。
姉さんには楽しみなさいと言われた。全て貴方の物語なのだからと。
姉さん……何時か――――行くからね。強くて優しい。信頼し合えるパーティで!
ジュリエッタダンジョンの入り口には幾つかのパーティがこれから挑む準備をしている。
私たちを会わせると今は五組ほどだろうか。
今回のリーダーフランシスカさんが今、此処にいる他のパーティに話しに行きジュリエッタダンジョンに突入する順番が決まったみたい。
通常これぐらいの数のパーティだと入る順番をなんとなく話し合うらしい。
あくまでも、なんとなくという曖昧さを残すのが普通で、割り込んでも遅れても喧嘩にはしないという不文律という暗黙のルールが存在するみたい。
仮に突入時間が被ってもなんだかんだで距離も開くのがダンジョンだって。
さて、後十分で時間みたい。
ジュリエッタは私たちにどんな顔を、一面を見せてくれるのか。
怖いけど楽しみだ。
「そろそろだ――――出発しようか」
フランシスカさんの一言により私たちパーティは動き出した。
ジュリエッタダンジョンに皆が入り進む。
一階部分の前衛、バスタルフさんが見た目より素早く私たちの前へと進み残り三人。
真ん中にリーダーのフランシスカさん、真ん中を挟んで左に私、右にエレさん。
自然と打ち合わせ通りの陣形となった。
意識しているけれども自然な運び。
私はその場に組み込まれたピースの様な錯覚を瞬間、受けた。
そういう生き物のような感じ。
先頭のバスタルフさんが進み、私はフランシスカさんに合わせるように足を運んだ。
結構身体も背丈も大きい先頭のバスタルフさん。そう、近づくと私は前が全然見えない。
多分エレさんも同じだろう。
そこも考えてくれている感じの距離を取った進み具合なので、それ位の距離は離れてしまっている陣形なのだ。
と言っても大声で話さないと聞こえないような距離でも無い。
後衛の三人はバスタルフさんに付いていく様に進む。進んでいく内に思ったのだが、バスタルフさんの挙動に癖があり、数メートル進むと立ち止まる。
それは後ろのフランシスカさんに合図を送っている様な感じを受けた。そしてフランシスカさんはそのタイミングで後方を瞬時に目視で確認。
安全を第一にCランクのベテラン二人が引率するパーティは確実に進んでいく。
私は今回のジュリエッタダンジョンとアリアダンジョンを知っている限りで比較してみたが、今の所は特に違いは見いだせなかった。
何処のダンジョンもこういう感じなのかな…………。
ダンジョンの中は暑くも無く寒くも無い。しかし、空気が淀んだ感じも無い。
何処かで循環されているのかしら。
気になったのは、少しだけ甘い匂いが私の鼻孔をかすめた事位だった。
ん? って思ったけど私が犯人だった。
そう。正確にはうさたん。君だよ。
チョコレートの臭いが少し漂う私の左腕。
いや、うさたんのお腹。
ダンジョンの中はライトの呪文で一定の明るさを保っているけれども少しほろ暗く、うさたんの汚れてしまったお腹までは見えない。
私は誰にも気づかれない様に少しだけ左腕を身体から離して歩く事にした。
無駄な努力だけどね。
まぁ多分うさたんは嫌なお顔をされているに違いない。
……逆を突いてニッコニコだったらこの世界と正気を疑うわ。
最初の戦闘は一瞬で終わった。
前衛のバスタルフさんが後衛に合図を送る。
後衛はフランシスカさんを中心に待機。
一分後にはバスタルフさんがダンジョンボアと呼ばれている猪の一種を仕留めていた。
そこに皆が集まった所「食うか?」と一言。
女性陣は皆、首を振った。
ダンジョンで生まれて生きている生物は生命活動を停止したとしても、魔石と呼ばれている石を取り外したり破壊しない限りはそのままの姿で一定時間は存在するらしい。
バスタルフさんはダンジョンボア目掛けもうひと突き。剣を振り下ろすと魔石が破壊されたのか、ダンジョンボアは砕け散る様に消えた。
先程バスタルフさんが言った様に上手く調理すれば美味しく召し上がれるらしい。
いや、美味しいかは分からないけどどうなんだろう?
その機会は今では無い様だよ。
消えた場所には小さい魔石が残る。魔石には価値があり売ればお金になるとか。
今回の儲けは基本皆で分けるそうだ。
更に進むとバスタルフさんが手で合図をする。
今度の敵は何だろう?
フランシスカさんが私たちに指示を出した。
「二人は私の後のサイドで」
話すと共に前へ進む。バスタルフさんは敵に対し間合いを取っているみたい。
あ、見えた。
今回は蜘蛛と…………スケルトンだね。
大きめの蜘蛛スパイダーが威嚇するように音を鳴らしたり糸を出したりしている。
紫色と黒を主体としたボディーは鬼のような模様を描き気持ち悪さを増した姿だった。
スケルトンはバスタルフさんに対し今にも攻撃をしようとしている。
そこへフランシスカさんがスパイダーと対峙。タイミングを見計らってバスタルフさんはスケルトンに斬りかかる。
バスタルフさんから繰り出される重そうな剣の一撃をスケルトンは躱すことも受けることも出来ずに肩口から斜めに斬られる。
スケルトンの骨も中々硬いのだが、バスタルフさんの叩き付けるように振り下ろされた剣の威力に肩口から砕けるように崩れ落ちるスケルトン。
そこへすかさず剣で首を飛ばした。
スケルトンの首は私の近くまで飛んできて私を見るとカタカタを歯を鳴らしていた。
スケルトンはとても見慣れているから敵と余り思えないね。
一方のフランシスカさんもスパイダーをもう倒していて、身体に絡まった糸を手で払っている。
私とエレさんは魔石を回収しながら周囲を見て戦闘後の安全を確保。
「よし、問題ないな」
「ああ……」
「――はい、大丈夫です」
「……ええ、問題ありません」
流石にランクCともなると強い。特に静から動に入る所とか、動きが躊躇なく滑らかだね。
多分、この二人がお互いの動きを理解しているんだろうか。
なるほど。私と夕顔ちゃんも多分そんな感じに動けているとは思うけど、こうやって戦いの連携を見るとまた違う一面が見えてくるね。
そっか、大まかに俯瞰で見て意識を絞って動く感じかな。
言葉だとそんな感じだね。その時、瞬間の行動で何を行いどう動くか。
姉さんにもしっかり教わったから大丈夫そうだね。
如何に全体の物事を把握出来て、最適な判断をするか。
パーティだとそういう事が大事なんだね。ふむむ。




