69最恐の幼なじみ。
「うーん。今日は会えるかなぁ…………」
昨日はラオーアくん師匠に会えなかった。何か会える仕組みとか方法とかがあるのかなぁ?
はぁー。早く会いたいなぁ…………って何々、何なのよこれは。
違う、違うでしょ、これじゃあどう考えても恋する女の子じゃないのよ!
そんなんじゃ無いんだって。
師匠なんだって。
多分、兄妹とかなんだって。よく……分からないけど。
……でも彼の話していた事は恐らく真実。
私と彼には何かが必ずある。うーん。何だろうね。
生き別れた――――とか?
あぁ、でもでも彼はどういう状態なんだろう? 何かを頑張っているみたいだけどそれが私と、どう関わっているんだろう?
ふぅー。
考えても解るものでも無いか、取りあえずの目的なんだよ。
会ってね、相談して、それからダンジョン――――って決めちゃったんだけどもしかして私、不器用なのかしら……。
でも何故か順番ってあるのよね。
それをその通りにしないと収まりが悪いっていうのか、何てゆーか。
理由は無いんだよね。
初志貫徹に近い……融通の利かなさが近いのかなぁー。
……………………あぁそうか。
頑固なのか、一徹なんだ、わたしって。
…………よーし、追加ルール。
あと、二日間、今日と明日で会えなかったら諦めよう。そんでダンジョンいこっとね。
今日も闘技場を目指す私。会えると良いなぁー。
…………会えなかったら腹いせにプリンスちゃんで奏でてやる。
…………うーん。
何か駄目だなぁ。うん、そうだね。
やられたからってやり返すのは永遠と終わらない何かだよね。
少し、姉さんの教えとは違う気がする。
姉さんなら…………完膚なき迄かその時の気分…………あれ、これは教えでは無いよね?
良いや、その時に決めよう。
受付のロベルタさんに顔パスの如く手続きを済ませて早速ですが開始するよ。
今日の気分はいけいけだね。
闘技場、本日の一人目。あの男の子だった…………。
この思い。これは来たでしょ? って思ったけど違った。
中身もあの男の子だった。
戸惑いつつ反撃で基本四種の魔法を使ってくるんだけど私の敵では無い。
…………でもあの男の子って魔法使いなのかしら?
私はナガッセ村で裸を見られてしまった時の事を思い出しへこんだ。
もうあの村には行けないよ……。
二人目はグラ子さんだった。
「…………朋ちゃんまたやるんか? 良いで良いで! 今日こそ食べてやるかんなぁ!」
「あはは……」
グラ子さんは毎回私を食べようとしている。
……どうやって? ……けど流石に食べられたく無いので魔法一閃でグラ子さんは沈黙する。
「朋ちゃんは食えん奴やなぁ」
最後にそう言ってバタンと倒れきゅーってなって消えた。
おっきいナイフとフォークを持って獲物を狙う獣の様に舌舐めずりしていたグラ子さん、そんなに大食漢には見え無いんだけどね。
一体、私の何を食べる気なのだろう? 毎回思うんだけど。
もしかして、わき腹のおにく? いやいや、そんなの無いんだよ。
三人目は姉さんだった。
この闘技場で会う姉さんとの戦いは学ぶ物がとても多く、始めは手を抜かれていた様に見えたのだけれど次第に良い勝負となり最近では私が押している事も多くなってきた。
でも今日は時間となり引き分けだった。
「良いわね、朋ちゃん。その調子で強くなってね」
「…………うん。頑張る」
姉さんはおっきく丸を作ってくれた。
瞬間、私は涙をこぼした。
……必ず、必ず会いに行くよ。…………姉さん。
ちょっとしんみりした後の四人目は…………誰?
知らない女性だった。
「………………」
「………………」
目の前の綺麗な女性は私を見ている。
少し驚いた表情をしたりニコニコしたりといった顔の動きが微かに見えた。
様子を伺っている感じかしら、でも知らない人だ。誰だろうこの女性。
「あの……どなたですか?」
「…………私は、青葉って言うの。私の事……………………分かる?」
「……ごめんなさい」
「そっか、確認するわね。貴方は、穂美香ちゃん? それとも朋かしら?」
この目の前の女性は私を知っている? というか、何を確認しているんだろう? 何処かで会った人かなぁー?
「私は……朋です」
「…………そう。なるほど、ええと…………うん。大体解ったわ。そういうことね。…………よろしく、朋ちゃん」
吸い込まれそうな程の澄んだ瞳で見つめられた後に彼女、青葉さんは私にそう話した。
「…………よろしくです。ええと青葉さんは私の何かを知っているのですか?」
「そうね、大体の事は知っているかも知れないわね。まぁいま知った事も多いんだけどね」
少しでも、何かを知りたい。
……しかし、大体って、今って? どおいうこと?
「大体の事…………私、自分の事なのに全然、自分のこと知らないんです。何か……何か教えてくれますか?」
「良いわよ…………但し、私に勝てたらね! 此処って疑似闘技場でしょ。貴方の今の最大限の力を私に見せてよ」
目の前の女性、青葉さんは私の力を見たいらしい。良いよ、そんなものなら幾らでも。
知らないからねっ。
「――――分かりました」
「あは。可愛いわね。全力で来なさい――――朋ちゃん」
私は息を整え詠唱を開始した。
今日は特にイケイケなので私の得意な魔法に決めた。
中級四種の魔法。
「紡ぎしマナの根源により解放せし更なる力よ、我を媒介としその威力を顕せ。ファイアボルト」
中級四種の魔法。
ファイアボルトは目の前のにいる青葉さんに向かって勢い良く強の私の気持ちと共にバリバリと音を立て斜線を描きつつ突き進んだ。
それをどう対応するのだろう? 私は魔法を放ってから見る事にした。
青葉さんは受ける様子も躱す様子も無く全身で受け止める。
「…………」
目の前の女性、青葉さんは少し首をかしげた。
あれれ?
「…………次は?」
「…………根源より生まれた唯一の始まりセフィロトから重ね合う創造四原種の理よ、今此処に姿を形成し表現せよ。ファイアボール」
上級四種のファイアボール。
私の中では一番得意で威力がある魔法。
手のひらで練られし私の意志。
とても大きい炎の塊。
大きさよし、色も良い色だし、良い感じっ…………行けっ!
こぶし大、いや、それよりも大きい炎の塊は正面の青葉さん目掛けて私の手から放たれた。
言うならばそれは大きな業火であり灼熱の球体を象った進む炎の球。
ファイアボール。
自慢の魔法だ。これは簡単に受けられないはず――――――――
「…………次は?」
…………私の目の前に居る女性は躱すことも手などで受けることも無く全身で私の放ったファイアボールを受け止めた。
これはやったか? って伝説の言葉が心の中を過ぎったが、結果、全く効いていない。
しかも何かを使った様な形跡もなし……。
「…………お姉さん、人ですか?」
「あはは、そうね、もう卒業しているかもね、人は…………」
「……降参します。今の私の力ではお姉さんに傷一つ付けられない」
私は両手を挙げる仕草をした。
世の中はまだまだ広い。此処が闘技場の中で良かった。
「まぁ…………良いか。あのね、間違いなくだけど、貴方の中に男の子がいるのよ。今は疲れて寝ているみたいだけど……」
「…………」
「それ私の幼なじみだから。貴方にとっては……うーん。……やっぱ止めておこう。これは私が言って良い事では無いのかもしれないから秘密ね」
「…………」
男の子って……ラオーアくん師匠だよね? 幼なじみ、ふーん。
師匠もこれぐらいに強いのかな?
「……私には事の現象は解るけど、その成り行きは解らない。今回のは成り行きはなんとなく知っているからまぁ……運命に任せましょうって感じよ」
「とても、難しいですね」
「そんなに難しく考える必要は無いわよ。単に別の人格が貴方の中にいる、それだけよ。でも、分離するか完全に混ざってしまうかではまた状況も変わるのかしら、ね」
「つまり、曖昧な状態と言う事ですか?」
「そうね、朋ちゃん。貴方とはまた会うと思う。まぁ敵同士にならないように運命に祈っておきましょうか…………」
「それは怖いですね…………お姉さん、私が知る人の中で多分一番強いですよ?」
「…………そうね。私は強いわよ? 私が知る人の中で多分私が一番強いもの」
「……そっか、色々と教えてくれてありがとうございます。青葉さん……もう一つだけ、もし解るのなら教えてください」
「なに?」
「ええと、私の姉さんの所へ行くにはどうすれば良いでしょう?」
「…………あなたの、姉さん、ね。……………………ふぅん。あぁ、そういう事? それは簡単ね。強くなれば行けるわよ。そこへは……」
「青葉さんぐらいですか?」
「…………私の、で例えるとショックを受けるわよ、貴方。まぁ、良いわ、受けなさい。私の一千分の一ぐらい強くなれば行けるんじゃ無いかしらね、冗談だけど……」
「……お姉さん、神様かなにかですか?」
「そうねえ……………………近い何かね、ってそんな大層なものじゃ無いわよ」
「……でも、解りました。強くなれば良いんですね、ありがとう、青葉さん」
「…………ん。いや、私の方も貴方に会えて良かったわ。またね、朋ちゃん」
「――――はい。また会ってください」
闘技場の部屋から出た。
何か凄い人だったなぁ。青葉さん。
あの強さは少し異常かも知れない。
最強だ。
きっと強さのみを求める私の人生が後三回……いや、五回ぐらい無いと辿り着けない場所にいるのかも。
ほんっとうに世の中は広い! 良いね。何でもアリなんだね。
そっか、ラオーアくん師匠は寝ているのか。
……だから会えないと。
そっかぁ。んー。
切り替えて明日からダンジョンに行こうかな。うんうん。
その後、グラ子さんとご飯に行って今日のことを何となく端折って話したら色々な所でビックリしていた。何か知っているのかな?
グラ子さんは私の何を食べたいですか? って聞いてみたら、「そやなぁー。夢のように甘い物なんて良いかもなー」
って話していた。
私の中の何処にそんな物があるのだろう???




