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67少しでも前へ

此処が、ジュリアダンジョン…………。


私は今日から本格的にダンジョンの攻略をしていく事を決めた。

さっき朋ちゃんと朝ご飯を食べてから準備をして闘技場のジュリアダンジョン入り口へと向かった。


今日の装備は何時もの魔女っ子セットBと、最近購入したショートワンド+1という魔法を補助してくれる装備品。


靴や手袋、帽子といった装備にも魔法を補助する効果のある物もあるのだけど、今はまだ装備はこれだけ。


闘技場の外観を見ると嫌な感じになるのはもう諦め気味。

ゴブリン、というか、プリンスちゃんに対してどう折り合いを付ければ良いのか。


……私の精神を蝕んでいるゴブリンという存在。

何故こんな事になってしまったのか。


原因は間違いなくプリンスちゃんとあの本『ゴブリンに捕まった者達』この二つ。

思い出すだけでも吐きそうな程に私は嫌悪している。


あの動き、肌の色、質感と爪。もう全てだ。


……朋ちゃんはほんと凄いね。


あんなにも立ち向かいこんな状態をも跳ね返す強さと、諦めない心。

朋ちゃんは私の憬れになった。


殆ど同じ年の子をこんなにも尊敬するとは思わなかった。


朋ちゃんは私が尊敬し憧れるぐらいに強くて、優しくて。


可愛いし、格好いい。世間知らずな所や少し抜けている所も愛おしいし。

もう神様の奇跡としか思えなかった。


そんな彼女に出会えたこと、これは誰にでも自慢できる私の宝物。

この思いはほんと特別。


とっても眩しいよ。

少しでもそんな朋ちゃんに付いて行ければとの思いもあって闘技場に挑戦した。


それであの出来事が起こった。

私は……闘技場で相手に出てきたプリンスちゃんにもう何度も何度もコテンパンにされた。


「オイ。オレの嫁。一体どれだけ俺の事がスキなんだよ。コンカイハ何処を引っ掻いて貰いたいんだ? あん?」


「マタ来たのか、オマエ、そんなにオレに弄られたいのカ? 引っ掻かれたいのカ? 泣きながら喜ぶなんて飛んだ性癖ダナ」


「日ニ何回ヨ? このエロ人間が。ヨダレ垂らしやがって。今度はどう弄られたいんだア? 今回もオタノシミだな。ドレ、尻を叩いて奏でてヤロウか」


「もうオレの嫁はオレ様にゾッコンだな、子供ハ何人欲しいんだ? オマエは二番だからスコシは遠慮しろよナ」


「マタ来たのか。今日はコレでお終いだぞ。愛してヤルよ嫁ちゃんよ。オマエの尻は最高ダシナ。皆にジマンしないとな」





全く駄目だった。

私は此処に何をしに来ているんだっけ?


あれ? プリンスちゃんに会いに来ているの?

あれ? アレ? あれれれ? 此処、何処だっけ? 私、何してたんだっけ?


今日は。

いや、昨日だっけ?


闘技場がコワイ。

プリンスちゃんは私の旦那様……………………いやいやいやいやぁ。


そんなの――――――――あんまりだ。誰か…………ねぇ。助けてよ……。




私の心はもう半分壊れていたのかも知れない。

日にちと、時間の感覚も無くなった。


もうどうでも良かった。


永遠に続く暗闇。もう諦めていた。こんな状態に。いや全てに於いても。

それ位に、私のココロは脆弱だった。よわよわよわよわ。



そんな私に、忘れていた光が差した。

見えなかった光が、こんなにも。


「あ…………………………………………とっ、朋ちゃ……ん」


瞬時に闇を切り払う。

そんな一筋の、微かな…………光。


そう、そうだった。

私には、こんなに凄い友達がいるんだ。何を、怖がっているのよ。


闘技場はまだ怖いけど、もう大丈夫だ。

此処からやり直そう。ダンジョンから始めよう。


そう自分に言い聞かせ少しだけ、勇気を前に先へ向く私。遙か遠くにいる彼女を目指して。

進むんだ、少しでも…………。



しかし私の足取りは重い。泥沼で足掻いている様。

心が決めても身体が嫌がっている。

足が上がらない。

そんなに簡単では無いのかも知れない。


でも逃げたくない。進むが儘にアリアダンジョンへ。朋ちゃんとなら私は行ける。


大丈夫、頑張れる。



そう思って重い身体を前へ進ませながらもクリアーした。


アリアダンジョンは私が思っていたよりも順調に危険も無く踏破できた。


そのアリアダンジョンでも色々な経験をした。

朋ちゃんが凄いのは何時もの事だったけど、それでも彼女が試した中級四種の裏魔法。


勿論、存在は知っている。

しかし、私はあの魔法をあんなにも簡単に制御して上手く使う。そんな人は見たことが無かった。


確か、朋ちゃんはマーメイドウルフの時も試していた。


私が魔法使いを志し、先生と呼ばれる魔法使いにも何人にも会って指導も受けた。

そうした知識の中ではあの中級の裏魔法は一線級、二つ名がある位の魔法使いでは無いと制御出来ないだろうし、上手く使いこなせる事は出来ないと教わってきたもの。


…………そんな魔法でももう試す様に扱い、己の物にしてしまう力でありそのセンスも。


もう私と朋ちゃんだと、どれ位の差があるのだろうと、考える余地が無くなった。

そんな時の賢者様の存在とクリアー後の手紙の内容。


私にも、私にも資格があるのだろうか?

手紙にはこう書いてあったんだ。


『先へ進みたいなら絶望を知れ、たとえその先に光が無くとも。お前に資格があるのならば世界は答えるであろう』


…………アリアダンジョンは何に絶望したのだろう? 朋ちゃんもそんな感じのミサンガだったし。


いや、そこは関係ないかも知れないけど……。



でも最後に朋ちゃんのお兄ちゃんの存在。もうね、これでは進むしか私には道が無いよ。


……そんな夢の中の出来事で私が覚えているのは二つ。


朋ちゃんのお兄ちゃんの存在。

ゴブリンプリンスは私が倒さないといけないこと。


この二つだ。しかしそれは私にとって凄くしっくりくる。指標みたいな感じに思えた。

朋ちゃんとの差に少なからず悩む私にとって。


プリンスちゃんというハードルはとても高く、そして険しすぎる。

あの段階の朋ちゃんでも勝ててはいない。


しかし解りやすい。倒せば良いのだ。先へ進むと志すならば。


それから朋ちゃんのお兄ちゃん。

あの時の集落からの逃走劇は凄かった。あれはもう逃走とは言わない。

凱旋に近い。胸を張り、悠々と、あんな大群の中。もう私はあんな経験は出来ないだろうね。


あのお兄ちゃんが朋ちゃんにとってどういう存在なのかは気になるけれど。


あの胆力は凄い。

二人共だけど。


…………そんな人が、私の助けになってくれている。


踏ん張れ私。進むんだ。前へ…………。

頑張れ夕顔ちゃん!

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