62ダンジョンは賢者
「……此処だね」
「うん、やってみようか」
女性を象った石像の前まで来た。隣にも石像があるけど多分こっち。
私たちはロベルタさんに教わった通り、女性の石像の手の平に登録証を順番に置いた。
『Fランク二名確認。アリアへの入り口を開きます』
『よろしければ順番に右手に手をかざして下さい』
夕顔ちゃんと顔を見合わせ順番に手をかざす。
すると石像の後ろの壁がゴゴゴゴと開いた。
『登録証をお取り下さい』
石像の指示通り登録証を回収すると石像は『いってらっしゃい』と話している。
「…………これで良いみたいだね」
「そうだね……行こっか、朋ちゃん」
夕顔ちゃんと再び手を繋ぎ私たちは堂々と入り口から中へと入った。
◇◇◇◇
…………凄ぇな、今時は。
あんな若いのにもうランク者かよ。
しかも何あの美少女二人組…………。
このむさ苦しい空間に花が咲いていたな。
あんな子もダンジョンに行く理由があるのか。若しくは呼ばれているのか。
…………お前はどうだった?
え? あぁ、俺は二十歳越えていたかな。まぁ、早い奴で十代はいたけどそんなにいなかったからなぁ。
……そうだな。
学校へ通うようになってからとかだよな、早くても。
実践が良いのは分かるけどいざダンジョンってなるとな。
でもまぁあの様子じゃ初めてとかだろうからアリアじゃね。
とか、お前、初めてのアリアでちびってただろ? 聞いたぜ?
……あれは、水分取り過ぎて我慢できなかったんだよ!
ぶっ。
男は我慢してナンボだろ。
あーコレ一生言われる奴や……もうお前らとは組まん。
そんなでも今じゃ強いから良いじゃないか。
あれは多分、学校もまだだよな。
制服着ていないし、そうだろうな。
制服にはちょっとした加護が付いているから学生だったら制服か、装備少しぐらいは固めてくるだろ。
でも、一人は魔女っ子セット着ていたな…………あれは、Bだ。
マニアかよ。分かるわ。
…………変態共おつ。これだから男はやーね。
そういう目でしか女の子を見れないの?
いやいや、見守ってるんだよ。なぁ?
そうそう。
っだよなぁ。うんうん。
そういう目で?
っそうだな。いやあ、あんなに可愛いと目が離せなくなるな。
一挙一動に目が向いちゃうよな。
…………最近だけど冒険者ギルドでたまに見かけるぜ。
マジか。
そうね。しかも五番カウンターだから何かあるんだろうね。
受付、グラトニーちゃんだし。
…………それは気になるな。
そんな日もあるのかよ、冒険者ギルド。
グラ子ちゃんも追加だろ? もう眼福しかない。
ロリコン乙。
女の敵。
このゴブリンが。
うぅっ。酷い言われようだ。
今はそんなに激アツなのか。ギルドは。
……衛兵さんここです。この男たちです。
まず何かします。
とりあえず妄想罪で連れて行って下さい。余罪もきっちりお願いします。
此処は闘技場の地下。
ダンジョン入り口前の大広場。
大人数の居る所、似たような会話がそこら中でされていた。
「…………」
「…………ライト」
入り口から入る私たち。中はまず暗かった。ライトの魔法を使うと周囲の状況が分かった。
闘技場から此処まで来た様な通路がのびている。
進むと階段があり降りたら直ぐに石像があった。上にあった女神像の隣にあった石像に似ている。
「…………上では何だろうと思ったけど、もしかしたらコレがゲートキーパーかな?」
「……あぁ、そんな話もしていたね。でも形からは想像が出来ない何かだね、これは」
「いこっか……」
「動き出されても困るし、行こう。夕顔ちゃん」
石像の隣。緩やかな道を下がると広い空間に出た。
大体だけどグラ子さんを三人から五人縦に並べた位の大きさだね……私でも良いけど。
上を見ると場所によってはゴツゴツしてそうな感じ、洞窟、あぁ、パプリカ村のゴブリンの時がこんな感じの洞窟通ってたかな。
でも…………これが、ダンジョンか。
良いね。わくわくするね……でも出てくるものも決まっているからそうでも無いかなぁ。
なるほど、未知のダンジョンとか良いね。
まだ誰も通ったことの無い。とか、良いよね。うんうん。ロマンだねー。
広い空間に来てから何となくだけど私が前で隣の後ろに夕顔ちゃんというフォーメーション。
私の洋服の裾をちょこんと握って貰っている。
にぎって。
と言ったら握ってくれた。そろそろみょーんってなるかもだけど。
てくてくとそんなに警戒もせずに歩く私たち。
あぁついでに呼んでおこう。
「ひぃちゃんおいで」
右手を翳すとぽぽんと手の平から手品のようにひぃちゃんは現れて、私たちの上をバサバサ飛んで旋回しだした。
「ひぃひぃ」
「ひぃちゃんお願い。周囲を警戒していてね」
ひぃー。と了解してくれたひぃちゃんは私たちが歩く先の方へ飛んでいった。
バサバサと。
でも偶に天井にぶつかっている気がする。
「うーん。狭いかなぁ……」
「……たまに上に当たっているね、ひぃちゃん」
「そうみたい。慣れないようだったら後で一旦引っ込めるよ」
私は初めてのダンジョンを夕顔ちゃんと歩く。
ダンジョンって結構な感じで想像していたんだけどこれは私の想像とはかけ離れた作りだった。
もっと洞窟くさくてジメジメしていて結構歩くのも大変で狭く息苦しいとかそんなイメージもあった。
でも何故かどのイメージもダンジョンっぽくなくて。
それは現実にはそぐわない気がして。
でも実際の作りはそのまま。現実にそぐわないものだった。
それがダンジョン。
姉さんの教えでは「ダンジョンはね、生きているの」と話していた。
多くの者がダンジョンに魅入られて入る。魅力があるんだろうね。
そしてこうも言っていたかなぁ「ダンジョンは賢者」賢者って勇者とか英雄的存在だよね?
どおいう意味だろね。
色々と教えてくれるのかな?
このダンジョン、アリアは自由都市エスタリアス国の中では一番古く歴史があるみたい。
まだダンジョンに関しては図書館で調べてないんだよね、私。
知らない方が楽しめるかもっていう私の中で謎の手抜き感というか、知らない素振りが働いた。
という変な感じだったのだ、いやいや。
――――――――単に忘れていただけなのよね。
まぁでも人間、後々になってこうしておけば――――とか、思うことも多いよね。
ああもうこの次点でフラグだよ、もう。
確か二、三時間って言ってたね。
そろそろアリアダンジョンに入って十分ぐらいは経過するけどまだ何も無い。
「何も無いね……」
「…………多分ね、朋ちゃん。これはアリアというダンジョンがね、私たちを視ているんだよ」
「…………そうなんだ。んー。なんだか恥ずかしいね」
「私もそこまで詳しくないんだけどね、昔、読んだ本にそう書いてあったの。でも最後までその本、読まなかったから読んだ所までしか分かんないけど、ダンジョンは賢者そのものって書いてあったよ。何かの言い回しなんだろうけどね」
「あぁ、それは私も姉さんに聞いたよ。んー。多分そういう理由があるのかも知れないね」
先行しているひぃちゃんはある程度の距離を飛んだら私たちの所へ戻って来るを繰り返している。
でもまだ何も無いのかひぃちゃんの反応も無い。
「ひぃひぃ」
しかしひぃちゃん。余りかぁかぁと鳴かないんだよね。
もしかしたら鴉じゃない可能性もあるのかしら、カナメみたいに。
でもでもボディは黒いし嘴も良い感じ。
これは…………カラスです。
誰に聞いてもそういうだろうね。
えーと、今までで、うーん。一回か二回かな? カァカァ言ってたの。
そんな時だった。
私の街娘が更にみょーんってなって夕顔ちゃんの方から「ひっ」とか細い声が聞こえた気がした。
「ゆ、夕顔ちゃん?」
「あ、ご、ごめん……何でも無いの」
「………………」
夕顔ちゃんは壁の色が少し緑っぽくなっている所に反応してしまったみたい。
あー、確かに。あの辺り、ゴブリンの頭部に見ようと思えば見えるかも。
んー。私の時と同じく重症だね。
反応、反射だからなぁ。心の問題だからなぁ。
再び? そんな時だった。
ひぃちゃんがカァカァって……うん。聞き間違いじゃ無いよ。
良かった、ひぃちゃんはカラスで……じゃなくて、えぇ? もしかして異常事態?
察した私は夕顔ちゃんと共にひぃちゃんが旋回している所に向かうと壁に人が寄りかかっていた。




