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61アリアダンジョンと魔法使いの格、そしてこれから

ゆったりと、ゆっくりとした日が続き継続していた。


日中は今までに無い程に夕顔ちゃんとまったりと過ごす事を心がけつつ。


召喚で仲間になってくれたひぃちゃんも夕顔ちゃんに紹介してみる事にした。


……始めは駄目そうだったけど、徐々に距離を縮めていったら受け入れてくれる様になった。


でも、私は何処かあせっていた。

……このままで良いのか?


毎日続く、夕顔ちゃんと過ごす日常。

少し、少しづつだけど、夕顔ちゃんの笑顔は戻って来た。


根本的な解決はされないままに。


「…………朋ちゃん。ごめんね、私のために」

「ん? どうしたの? 夕顔ちゃん」


「あ、あのね、私は……もう大丈夫だよ。朋ちゃんは目的があるでしょ?」

「今の夕顔ちゃんを私は放っておけないよ。確かに私には……目的があるけどそれとは別だよ」


「…………じゃあ、とりあえずさ、クエストしようよ。次は……確かダンジョンだったよね。行ってみよう、朋ちゃん」


「夕顔ちゃん。無理しなくても、ゆっくり進むことも、ね。その道が実は近道だったって事もあるみたいだからさぁ」


「…………それは、今の私には、とっても優しい考え方だよ。ありがとう……朋ちゃん」



「だから……」

「だからこそ……ダンジョンに行こう。朋ちゃん」


私は夕顔ちゃんに押し負けた。

本当にダンジョンに行きたいのは私なんだよ。


夕顔ちゃんはそれを理解している。

私を知っている。


とても優しくて強く良い子だ。

そんな夕顔ちゃんが私は大好きだよ。

でも多分……。


私たちには、何かが足りない。


それは何だろう?


んー。んー。解んないや。

今度ラオーアくん師匠に聞いてみよう。何か、教えてくれるかも。



 ◇◇◇◇



「…………久しぶりやね、ホンマに。もう大丈夫なんか? 夕顔ちゃん」

「……はい。大分、良い方向へ進んでいます」


「そか…………ってもしかしてクエスト受けるのか?」

「グラ子さん。ダンジョン。よろしくお願いします」


「――――良いんやね? 私が言うのも何だけど、二人ともまだ若い。だからって事でも無いんやけど急ぐ必要は無いんやで?」


「す、少しでも…………進みたいんです」

「…………」

「……わあった。二人で決めたなら何も言わんよ。でも無理はしちゃ駄目やからな」


「はい。ありがとう……グラ子さん」


「――――じゃあ説明するからな。君たち二人がこれから向かうのは初級ダンジョン。通称アリア。ダンジョンの歴史の中では一番に古いダンジョンでな地下三階で構成されていてな。現れるモンスターも一番強くてもウルフパーティとかレモンラット辺りで一階辺りの広さはこの街の半分ぐらい。地下三階の一番奥には祭壇があってな、自分の運命に関わる何か、記念品をくれるらしいで」


「…………運命に関わる?」


「――――――――と言うても大概は次のダンジョンの資格をくれる。ジュリエッタかジュリアやね。とまぁ、こんな感じや。クエスト自体は一階を制覇やから、一度戻って来てもええんやけど大半はそのまま地下三階まで行く感じやね」


「…………奴はでない?」


「出ない出ない。次のジュリエッタやジュリアではたまに見かけるかもしらんがね」


「…………どうする? 夕顔ちゃん?」

「うん。行こう――――――――朋ちゃん」


「アリアの入り口は闘技場の地下やね。というか、全てのダンジョンの入り口付近と繋がっているから。闘技場から行くのがええで」


「……繋がっている?」


「あぁ、本来のアリアはこのサラダエクレアの街からだと馬車で二ヶ月位の場所にあるんや。しかし昔の偉人が少しでも楽をしたいと自分用にダンジョンの入り口を作ったらしく、その場所からだと全てのダンジョンへ行けるって寸法や。まぁ、半永久機関の転移魔法が施されているって話やね。君らには関係ないけどこの技術、結構悪さに使う人が多くて国がゲートキーパーを設置しているから変な事せんといてな。普通に使う分には大丈夫だから。あ、ゲートキーパーっていうのは門番みたいなもんでこの国の一番強い魔法使いが召喚した使い魔や魔法で作ったゴーレムとかがそれに当たるんや。だから、変な事したら審判されてぴやーってなってまうらしいんで。気い付けてなー」


「…………一番強い魔法使いってどんな人なんですか? グラ子さん」

「あぁ、今は確か『無限』の二つ名を持つお方やで」

「……姉さんより強い人がいるんだ………………」


「そりゃあ上には上がって言葉もあるからなぁ、確か……悠久は『十六』無限は『十八』だったかな?」

「それは、何の数字ですか?」


「魔法使いの格というか魔法の強さを総合した数え方やで、年に一回公表されるんや。まぁ、あくまで誰かが調べた数字だからホンマの所は知らんけどな」


姉さんは『十六』なんだ。ん、何かの冗談かと思ったけど私は一六歳なのよーって良く言ってた気がする…………もしやそこから。


「私は幾つなんでしょう?」

「んー。確かだけど、数字は最低でも二桁以上無いと公表されない感じだったかな? ほんまスマンな、うろ覚えや、年の頭だったかな、次はまだ半年以上あるでな」


「そっかー。今度見に行こうかなぁ、夕顔ちゃんも一緒に見に行こうよ」

「え…………あ、う、うん」


グラ子さんに色々な事を聞いた後、私たち二人は買い物をしてから闘技場を目指した。


夕顔ちゃんを見ると、闘技場に近づくにつれ、歩幅が短く、動きもゆっくりになっている気がした。


何か、何時もの歩き方じゃ無い気がするよ。


「夕顔ちゃん、大丈夫?」

「…………え? あ、だい、じょうぶだよ。うん、も、もうすぐだね……朋ちゃん」


闘技場に着いた。

夕顔ちゃんを見ると抑えているけど息が荒く肩でゆっくりと息を吸っている。


夕顔ちゃんはまだ此処に立ち寄ってはいけないのかも知れない。

そんな考えが少し頭を過ぎったけど、此処で引き留めても悪い結果にしかならない気もした。


そう悩んでいると夕顔ちゃんは足を一歩前に出した。


「……いこっか、ともちゃん………………」

「…………うん、行こう」


入り口へ行くともう顔見知りの受付さんがいてダンジョンについて聞いてみた。


「今日はダンジョンなのね、初めてよね、まあそんなに用意する物も畏まる事も無いとは思うけど。始めのダンジョン通称アリアは世にあるダンジョンの中で唯一、重傷者以上の人が出ていないという優しいダンジョンで地下三階層までなんだけど、アレに近いわね、肝試し。夜に暗くて怖い所に行くやつね、モンスターもネズミとか犬と猫と狼の混じったウルフぐらいだから、一応、此処の職員が日に二回ほど、見回りにダンジョン内を往復する決まりもあって安心安全をと謳っているのよ」


「なるほど、それは安全そうですね。時間にするとどれぐらいで一番奥まで行けますか?」


「うーん、二十歳以下の歩きで平均すると大体三時間から四時間って所かしら、因みにウチの職員は早足と警戒のスキルを使っているけど一時間で戻って来ているわね」


「…………どう? 夕顔ちゃん」

「うん、大丈夫だよ」


職員さんの話を聞いた感じだと大丈夫そうに思えた。


夕顔ちゃんも闘技場の中へ入ったらさっきよりは落ち着いたみたい。


これは何か有ったらっていう事では無くて、何に夕顔ちゃんが恐怖を感じてしまうか、あのゴブリン達やプリンスちゃんを連想してしまうかという……私も一度同じ道を通った身だからこそ分かる、そんな挑戦なのかも。


「お願いします。ロベルタさん」


受付の女性ロベルタさんはアリアダンジョンへの入り口までのルートを教えてくれた。


入り口の近くに女性を象った石像があるから、その石像の手の平に登録証を順番に置いて、次に石像の手の平に手をかざすと入り口が開く。


他のダンジョンの入り口もあるけど、資格が無いと他のダンジョンは開かないから、開いている所がアリアって事らしい。


ロベルタさんの案内通りに闘技場の中を歩く私たち二人。

夕顔ちゃんの様子を私は気にしている。


初めて此処で戦った後の対応を思い出し悔やんだ。


……隣を歩く夕顔ちゃんは大丈夫そうにも見えるけど、精神を結構やられている。


それは時間の経過と共にゴブリン達の存在が大きくなったんだと思えた。


そしてプリンスちゃんの存在とゴブリンの本の件。


全てが夕顔ちゃんにのしかかったんだ、きっと……。


ラオーアくんは任せろって言ってくれたけど、一体どうするんだろう?

私に今、出来ることは夕顔ちゃんを守ること。


その一点。


私はゴブリンと緑色を連想するだけでも駄目だった。夕顔ちゃんはどうだろうか?


……………でも試す様な真似は出来ないよね。


段々とそれっぽい雰囲気の場所に近づいている気がした。

場所は闘技場の中の地下。


少し薄暗い通路だけど、時折、話し声が聞こえたりするから多分近くにも人がいるんだろうか。


通路の分かれ道まで辿り着いた。


ロベルタさんの話だと此処を左に曲がった所の突き当たりの部屋って言っていたっけ?

分かれ道の上の方にも案内板があって左がダンジョン入り口、右が迷宮って書いてある。


…………え、迷宮もあるんだ………………。


夕顔ちゃんに迷宮の事を話したけど、反応は薄い……余り余裕が無いのかも。

そのまま左の道を進んだ突き当たりの部屋の扉を開けた。


扉を開けるとそこは地下とは思えない程の広い空間で、広場のような作りになっていた。

そして思ったよりも人が多い。


闘技場の上ではそこまで人と出会わなかったからこの場所がそういう所なのだと思ってしまったが、この人達を見る限り、結構ダンジョンに挑戦する人は多いんだなぁと感じた。


大体が此処に居る人達は塊ずつになっていて、それらは一つずつのパーティーで、各ダンジョンに挑戦しに来ている様に思われた。


五~六人程のパーティが多い様で、人々の装備を見ると戦士にスカウト、魔法使いや僧侶系といったスタンダードなパーティ構成が多く見られる。


私みたいに街娘の格好をした人は誰もいない。

私の場違い感凄かった。


みんな私を見ている気がして恥ずかしくなった。


「ゆ、夕顔ちゃん、とりあえず、端っこいこ」

「そ、そうだね…………」


夕顔ちゃんもこの光景にビックリしていた様だが、夕顔ちゃんはキチンと魔法使いの格好をしているので、きっと恥ずかしくは無いはず。


うーん、冒険者ギルドはそうでも無かったんだけどなぁ。


…………はっ! も、もしかして、私と一緒にいると恥ずかしいかも知れないかもという確立が夕顔ちゃんの中に存在していたりする?


……いや言い回し自分で考えててもわかんないよう。

要は私が恥ずかしい子なのだああああ。


「…………うう」

「……まさかこんなに人が多いなんてね、朋ちゃん」

 

「っ、ふぇ? あ、うん。多いよね。ダンジョンって結構人気なんだね」

「そうだね、私も知らなかったよ。あ、あそこにあるのが多分女性の石像かな」


「どこどこ?」


夕顔ちゃんがさり気なく指をさして教えてくれた。

ああ、あれだね。あの石像に登録証をかざすんだっけか。


「…………私は大丈夫だから夕顔ちゃんの行けるタイミングで行こ」

「うん、ありがとう、少し、待っててね……」


そう話す夕顔ちゃんは目をつむり何かを口ずさんでいる。

精神を集中させているみたい。


見る限りでも周囲には五十人以上の人がいる為しゃべり声や色々な物音、剣と剣をぶつける音なども時折聞こえてくる。


これから時を待ちみんなダンジョンに向かう人達かな。


この先に安心できる場所はもう少ないのかも知れない。


中にはたった今ダンジョンから戻って来たっていうパーティーもいるっぽい。

このスペースへ辿り着くや腰が抜けるかの様に座り込む人たち。


恐らく全身全霊をかけダンジョンに立ち向かったのだろうか?

そこまで大怪我している人はいないみたいだけど、良く見ると所々装備品が結構痛んでる人もいる。


そこにはダンジョンと向き合った人々の本気が見られた。


それは死と隣り合わせた何かを得る為に必死で戦い抜く人の力の様な物を私は感じ、そんな状況を私は自分と重ね合わせたら身震い、ゾクゾクッと武者震いをした。


そうだ、そこにはやはりロマンがありリアルがあり生と死がある。

そんな感情がぐちゃまぜになり私を襲い、つい隣の夕顔ちゃんの魔女っ子セットBの裾を握った。


夕顔ちゃんは私を見て一言。


「…………行こうか」


そう言った。私もその言葉に心を静め頷く。


出発だ。


夕顔ちゃんと手を握り人々の中へと突き進む。

姉さんの教え「朋ちゃん、あなた、胸無いんだから、多くの人の前で怖じ気づきそうになったら胸を張りなさい…………」



………………これからだもん! と、姉さんの前で胸を張った。



ずいっずいっと突き進め、むんむん、がぉー。

行く手を遮るかの様にたまたま進む先にいる冒険者の人々は、なんだなんだとばかりに道を空けてくれた。


中には「おっとごめんなさいね」とか「すまんすまん」とか言ってくれるけど私は「シャー」とばかりに切り返す。


今はそんな気分なの。

難しい年頃なのよーだ。

ご拝読頂きありがとうございました!



もし、少しでも面白い、続きが読みたいと思って頂けましたら、


差支えなければブックマークや高評価を頂ければ幸いです。




これからもどうぞよろしくお願いします。

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