59お名前はひぃちゃん
それからも数日、闘技場に通う私。
あれから何日経ったっけ? この前の日以来あのエッチなラオーアくんとは会えなかった。
あ、言い方は変えておこう。
これではエッチな人に会いに行く私になっちゃうよね…………。
うーん。
どうしたら会えるかな。
多分私が最短で強くなるのを目指すなら、彼の教えは必要な気がする。
師匠なラオーアくんにしとこ。
「…………」
「…………やぁ。久々だねってうわ、また男の子かよ! 引き弱だなぁ、俺は……」
「…………ええと、ラオーアくんだよね?」
「お、そうそう。この前振りだね。朋ちゃん。俺に会うために闘技場へ足繁く通ってくれるのは嬉しい限りだね」
冷静にね。
きっと煽っているだけ。
私はこの人に会うために此処へ来ている。
間違ってはいないし、ふん。ニコニコしちゃってさぁ。
しかもこの顔。
どうしてもあの時のことを思い出しちゃうし。
うーってダメダメ。
冷静に冷静に…………。
「…………そうだね。貴方に会うために私は此処へ通っているのは半分ぐらいは事実だよ?」
「素直だなぁ。ふむ…………目的意識が凄いね、朋ちゃんは。そこは素直に感心するぜ。ゲーマーとしてな」
「……ゲーマーって…………そういうことなのね。ええと……私が強くなるにはどうするのが良いかな? ゲーマーとして」
「…………ほう。俺だったらそうだな……先ずは召喚を早く増やしなよ。忘れてるみたいだけどね」
「あ…………」
「それから次はダンジョンでしょ。いろんな経験積まないとね。空いた時間は此処で戦いながら召喚をもう少し増やすと良いよ」
「なるほど。あと、知ってたら教えて欲しいんだけどね。最近、私知らないことを知っているんだけど、それって何だろ?」
「あー。それね…………気にしても仕方の無い事だから諦めた方が良いよ。知っているんだよ、キミはね。享受するのは良い点と悪い点があるから一概には言えないけど知識を知っているという意味に於いては、それは物事を少しでも正しい方向へ進ませることが出来る……かもしれない」
「何だか微妙に難しいんだけど」
「そうだな……俺もこれをキミにどういう風に話せば正解か、手探りだね」
「そっか、つまり、正しい情報をそのままでは教えないって事だよね?」
「………………物によってはね。君自身がどういう風に受け入れるか、影響を受けるか。それは俺にも分からないからなるべく言葉は選んで話しているよ」
「そう……ありがとう。悪意が無ければ、それで良いよ」
「…………朋ちゃんは聡いね、そして男にはもう少しだけ優しくしたげてー。男の子は女の子に弱いんだよー」
「えー。どうしようかなー。だって何かエッチなんだもん」
「それは仕方の無い事なんだよ。そうじゃないと人類は繁栄していかない。良くも悪くも人口は大切なんだ。そういう風にプログラムされているんだから」
「プログラム…………んー。でも女の子としては恥ずかしいし」
「男の子がそういう目を向けるのはある意味、好意なんだって! ……実際そういう風にならないと逆に女の子が困る事になる。人間や文化というのは面倒なんだよ」
「好意かぁ…………でも親族だよね? ラオーアくんと私は……」
「え? いやいや、可愛いは可愛いし、エッチはエッチだしそこに親族は関係ないんだよ……多分?」
「おやおやぁー。何だか少し自信が無さそうだよ? …………お兄ちゃん?」
「いや、違っ、これはね……色々とさ、心情が絡んだりね、するとね……あーもう、男の子は大変なんだゾ。ほ……朋ちゃん」
「ふーん……まぁそういう事にしといてあげるよ」
「……くっ。何か負けた気がする。男はゴブリンでもあるから仕方ないんよ、本能には勝てない時もある。理性さんのさじ加減マジ隠し味…………」
そっかそっか。
先ずは召喚、そりゃそうだ。
私が目指しているのは召喚術師だった。
何かやることが多すぎて全部散らかしてる気がする。
でもバランスとの兼ね合いもあるから仕方が無い面もありそうだよ。
うん。
後はラオーアくんはもしかしてお兄ちゃんなのかな?
さっきちょっとだけ…………少しだけどあせっていた気がするね。
彼の事はもっと信じても良いかもしれない。
多分私の中の土台に近い何かと関わっている。
そうじゃないと此処まで私の事を理解出来るはずが無いからね。
彼は一体私の何が見えているんだろ……。
不思議だね……多分教えてくれないだろうなぁ。んー。
翌日。スケルトンちゃんを初めて生成した空き地に来た。
使用する持ち物はカラスの羽根と鶏肉。
同じ鳥だし行けるよね? うん、いけるいける。
先ずはイメージ。
カラス、烏、鴉…………かぁかぁ。
カァカァ。
鋭い嘴に黒いボディー。
滑らかな……つやつやしてそうな…………。
いめーじ。
イメージ。
黒く。
飛び、空を制する…………。
「来い。 カラスよ!」
空気が震え…………ゴゴゴゴと音が鳴り目の前の空間が歪みいびつな形をした何かが現れた。
私の手に持っていた、触媒としてのカラスの羽根と鶏肉は何者かがもしゃもしゃと食べるかの様に少しずつ消えた。
いびつな形をした何かはゆっくりと動き分裂してはくっつくスライムの様にも見えた。
粘土や色と彩が混ぜ合い絡み黒色が作られる。
それは無彩色であり光を通す事無く吸収する色であり漆黒でもあった。
それが徐々に形を形成し再び円を描く。
黒一色だったその球体はミント色が浮かび浸食し最終的に楕円形の形を形成した。
「…………たまごだね」
そのままじーっとミント色に黒のまだら模様のたまごを見ていたが一時間程、何も起きなかった。
「えーと……どうしろと?」
仕方が無いので宿に持ち帰った。
たまごを。
うーん…………。
そのままたまごを眺めていたが何も起きない私の卵。
「おーい。何時生まれるんだー。早く生まれないとたべちゃうーぞー。がぉ」
それから数時間経過したけど一向に何も起きなかった。
「えーと………………つまり、どうしろと?」
うーん、うーん。
卵ってどうすれば…………あぁ、暖めれば良いのかなぁ?
柔らかめのタオルを下に敷きその上にたまごを置く。
私はそのままたまごをじっと見守り一日が経過した…………。
「おはよう、私の卵くん、いや、女の子かな? 男の子かな、どうかなぁ?」
本当に生まれるのかしら? 私は卵を見守る日々が続く。
時折撫でてみたり話しかけてみたり、優しく愛でた。
「まだかなぁー。がぉがぉ」
夜通しそんな事をしていたら疲れた。
一旦寝ようかな。
卵をお腹の上に置きそのまま寝てしまった。あっためーあっためー。
ぐうぐう、すやすやぴーひょろろ。
あれぇ? ほっぺたが痛い? なにかに摘ままれている。
……でも私は眠いのだ。すーすー。
「うーん……」
まだ寝ていたいのに何かが私を起こそうとしている。
そんな力が働いている。
でもでも私は眠い。
すやすや。
……おでこが痛い。
ほへ? なんでおでこが? 耳が痒い。
んー。かゆかゆ。
誰かいるのかなぁ? 夕顔ちゃんかなぁ?
姉さんかなぁ。
お腹を突かれている気がする。
痒くて痛いよ? ぽりぽり。
もう。
わかったわよ!
起きれば良いんでしょ?
「………………あー。……よく寝た。…………今、何時だろ?」
「………………ひぃひぃ」
「えっ!」
「……ひぃひぃー」
「わわわっ! えーうそっ、わっわっ……か、かわいいー」
お腹に雛がいた、カラスだね、多分。
私のお腹の上で生まれたみたい。
私の事を見ているよ。
うぁー、っ可愛いなぁ……。
やっぱり暖めたのが良かったのかな?
えーと、んーと、あ、後でミルク貰ってこよう。
うーん、召喚術ってこんな事もあるんだね…………あ、名前、決めなきゃ!
「鶏だとぴよぴよ。んーひぃひぃかー。どうするかなぁ。ねぇねぇ、お名前どうするー?」
「え? ……何これ?」
何かに反応したのか雛の近くに文字が見えるね。
手を伸ばすが触れない。
ん? 何だろうこれ……ええと、何々……『アルフレッド』
「…………よし、キミは今日からアルフレッドだね。よろしくね。アルフレッド。そしてあだ名はひぃちゃんにしようかな」
「……かぁ」
それから一週間ほど経過した。
雛はあっという間に大きくなって黒い鴉となった。
三日目まで特に何も出来なかったけど突然、雛は消えた。
そして探しても居なかったので呼び出してみると目の前に現れた。
結構、怖かったけどスケルトンちゃんの要領でガラガラを試したが出来なかった。
良かった。
んー、スケルトンちゃんとは違うのかしら……。
図書館で調べて色々と出来そうな事などを試していたら色々と分かってきた。
文字が見えたものはステータスと言うらしく個人情報が記載されるらしい。
通常は隠されて見えない。
召喚は時間で消える。
がらがらぽんは出来ない。
名前のあるこの子はネームドという個体で鴉の中でも特別。
唯一な存在であること。
多重は出来なかった。
ネームドは言葉を話す事が出来るらしい。
知能も通常より高く、ある一定のダメージを受けると消える。
オーバーキルされると死んでしまう事がある。
使い魔に出来る。
とか色々あるみたい、うんうん。
徐々に試していこうね。
「ねっ、ひぃちゃん」
「ひぃひぃー」
「あっ。凄い…………飛んだ」
「ひぃひぃー」
部屋の中でひぃちゃんは飛ぶ練習をしている。
ぱたぱたぱたぁーととっ、トットッ。
徐々に滞空時間が延びているね。
良いなぁ。飛べるのかぁー。
……私も練習しよーかなぁ。
姉さんは飛べたもんねェ……。
空を飛ぶってどんな感じなんだろう、楽しそうだよね。
何時か飛びたいなぁ、今度……調べてみよう。
とりあえずはこれで召喚出来る子が増えた。
ええと、次はダンジョンかなぁ? それとももう少し召喚出来る子を増やす? うーん。
夕顔ちゃんに相談して…………あ、夕顔ちゃん。
最近会ってないね大丈夫かなぁ。
後で行ってみよう。




