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57風が動いている。そして針も進む

更にそんな日は無かった日が追加された私が、そんなな日から一週間程経ったある日。

夕顔ちゃんから闘技場に行ってみようって誘われた。


あー、そんなのもあったねー。

私は大分回復していたけどまだ少しだけやさぐれていた。


でも気分を切り替えないと……ってな事で折角だし、気分転換も兼ねて闘技場へ行く事にした。



「じゃあ行こっか、夕顔ちゃん…………気分を変えてみるね」

「おけおけ。特に用意も要らないし行ってみようよ、ねっ」



「うん、闘技場楽しむ。ええと場所は…………」

「私、遠くから見たことあるから、場所は知ってるよ」

「お、であついてくね」

「ういうい。ついてらー」


頑張って気分を変えたい私はその時、視線を感じた。

それは街の中を二人で闘技場に向かって歩いている所だった。


およ?

何か、やらしー目で見られている気がする。


今なら多分被害妄想も凄くあるよね。

気のせいかなとも何度か思ってみたけれど、気配というか視線はそのまま感じるんだ。


……さり気なくそっちの方向を見てみたら、多分だけどよくギルドでぶつかっていた人に似ている気がした。


むー、あの人かなぁ?



そのまま夕顔ちゃんと一緒に街の中を数分歩いている。

気になっていた人はその後、少しだけ付いてきて、それから気配を感じなくなった。


多分、見てるよね。

視線は感じるんだ、何故か…………。


気配は無いのにね。

何らかのスキルとかかなぁ?


…………うーん。

ホント何の用事なんだろう。


最近私には不幸な出来事が続いているし……もう恥ずかしいのいやだよお。


……でも、もしかして、もしかするとリセルさんみたいな感じなのだろうか? 

私は歌いたくもないんだけど。


むむうー。

謎は深まるばかりだった。

今の所は単に付いてきているとか見られているだけ、なんだけどね。


うん。

謎ではないか、残念。


「気配が消えたね……」

「あ、夕顔ちゃんも気がついてた?」


「うん。でも何かヘンな感じはするね、流石に街中は大丈夫と思いたいけど……」

「あーでも私、ダイラックで早朝に簀巻きにされそうな女の子見て、叫んだら巻き込まれたんだよね」


「ええー。何それ、そんな感じなの? ダイラックって」

「いやいや、そんな感じだったよ? 流石に日常とは思えないけど、たまたまだとは思うけど、何事も偶々起きてしまうものかもしれないし……」


「それは…………確かにそうだね、朋ちゃんっと、見えてきたね。あれだよ闘技場」


おおー。


家々の隙間から何かそんな感じの建物っぽいのが歩くにつれ見えてくる。

うん、期待を裏切らない建物だね。デデンとしたおっきい奴。


私でも外観を見て闘技場って解るもの。

結構な大きさだなぁ、あれ。


……サラダエクレアって以外に大きい街なんだね。暇を見つけて外壁から外壁まで歩いてみたい。


どれぐらいの時間掛かるんだろ。気になるね、うん。


見えてから、更に数分。


ん、十分ぐらいだね。歩いていたら入口まで辿り着く。付近には特に人がいない。

夕顔ちゃんと恐る恐る入口らしき所から中へ入ると、見るからに受付っぽいのが見えた。


夕顔ちゃんの顔を見て二人うなずいてから受付へズンズンと進む。


「すみません。冒険者ギルドから来たのですが、腕試しが出来る所って此処で良いですか?」


「……はい。初めてですね? こちらで受け付けていますよ。……そこにある銀盤Aに登録書をかざすと番号の付いた鍵が出てくるのでその部屋へ行くと腕試しが始まります。基本的には自分と同等の実力を持った何かが出てきます。開始の合図は声が聞こえたら始まりで、ギルドのランクにより戦いの最大時間も決まります。最後に闘技場の判断により試合は終了されます。…………こんな所ですが、何か解らないことがあったらまた聞いて下さい。あ、ちなみに戦える回数は日に五回までで、勿論、自分以上に強い何かも出てくる事はあります」


「えーと、これって他の人の戦っている所は見ることが出来るのですか?」

「腕試しに関しては基本は不可です。ギルドランクがA以上ならそういう機能も存在しますが……」


「日に五回も戦えるんだよ。とりあえずやってみよっか、夕顔ちゃん」

「そうだね」


夕顔ちゃんは他にも何か聞きたい様子だった。んー。止めちゃう結果になっちゃったかなぁ。


でも確かに他の人が戦っているのを見てみたい気はするね。


相手は自分と同等の実力を持った何かって言うのも気にはなったね。

まぁそれも戦ってみれば解るよね、わくわく。


二人とも説明通りに銀盤から鍵を借りた。

私の番号はAAって書いてある……番号? 番号では無かった。

夕顔ちゃんに見せて貰うと夕顔ちゃんはBBって書いてあった。んん?


「ええと、すみません、このAAってお部屋はどの辺にありますか?」


「………………は、はいはい。へぇー凄い。AAなんて初めて見た。AAのお部屋はそこの階段を上がり三階の一番奥の部屋ですよ」


「あ、ではBBってお部屋は……」

「…………はいはい。ええとBBは二階の一番奥になります」


受付のお姉さんの様子が気になったので何か意味があるのか聞いてみた。


「……私が此処の受付を担当してからのお話ですが、通常は数字での管理をされています。しかし、何かの条件に当て嵌まると英語の表記された部屋へ案内されます、でも実際何の条件に当て嵌まったのかは私は知らないのです。その中でBBと言うのは今まで十年程ですが三人程は見たことがあります。今回で四人目ですね。そして、AAと言うのは見たことが無かったので少しビックリしました」


「………………」

「何の条件なんだろうね? 戦えば何か解るかなぁ……」


夕顔ちゃんに話しかける様に言ってみたけど、夕顔ちゃんは何かを考える様に指を唇に当てる仕草をしていた。何か知っているのかなぁ。


「うん…………行こっか、朋ちゃん」

受付のお姉さんに聞いた通り階段を上がって二階に着いた。


「じゃあ私、こっちだから、行くね。……んー。終わったら受付近くにあった座れそうな場所で待ち合わせしよ」


「解った。頑張ろうね!」

「うん」


私は夕顔ちゃんを引き寄せて抱きしめた。

でも何故か震えていた、何かに怯えるように……。


「ゆ、夕顔ちゃん? 大丈夫?」

「え、あ、うん。ちょっと何と戦うのか考えていたんだ。私の予想が正しければ……」


「大丈夫。そういう時のための腕試しでもあるんだから!」

「そっか、そう考えれば良いのね、うん。朋ちゃん、ありがとう」


「えへへ。じゃあ、私はもう一つ上の階行ってくるね」

「うん、また後でー」



 ◇◇◇◇



「ええと、一番奥…………ここかな」

鍵を差し込むと扉はカチリと音を立てる。ノブを回すとその部屋は開かれ中には広い空間があった。


「何も無い。空間…………」

すると私の正面。数メートルほどの所に靄がかかり何かの姿を形成していく……。

その形はやはり、私の予想通りの敵がその場に出現する。


「ゴブリンプリンス……」


私は一歩も動く事が出来ずにいた。

近づいてくるプリンスちゃん。


あの整いつつも嫌らしい形相。一歩、一歩と私に寄ってくる。


その一歩の動きが私を絶望へと誘う。

やめて、それ以上……絶対に、来ないで。


目の前のプリンスちゃんは私を軽々とひっくり返し後ろから引っ掻いた。

ただ、永遠に……爪を立てて。


ヒリヒリ、ヒリヒリヒリヒリヒリヒリガリガリ、ヒリヒリガリガリヒリヒリヒリヒリ。


「あはは…………これは酷い」


周囲を見ると扉の外にいる私。

へたんと座り込んで扉を見ているみたい。渇いた声で自己分析した。


「これが…………向き合うという事か」


…………朋ちゃんは凄いね。

涙流しながら吐くほどに苦手だったゴブリンに打ち勝っている。

私は、この状況をひっくり返す事が出来るのだろうか?


プリンスちゃんが易々と私をひっくり返した様に。

おしりがヒリヒリする。痛い、痛いよ。実際は引っ掻かれていない筈なのに……。

嫌だ、怖い。苦しい。痛い。誰か…………朋ちゃん。


「……だめ私、このままだと――――――――――――――――」



 ◇◇◇◇



「夕顔ちゃん!」

「…………」


「な、何があったの?」

「…………ともちゃん。私、立ち向かえないよ……」


夕顔ちゃんのただ事では無い光景に私は駆けつけ声を掛ける。

夕顔ちゃんを見ると床にへたり込んみ茫然自失。

目に力も無く存在がこのまま消えてしまうのではと思わせる程の酷い状態に見えた。


「――――――プリンスちゃん?」

「……………………うん」

「……何回出てきたの?」

「よんかい……」


「そっか…………もしかして、後の一回って……」


…………私は予感と共に聞いてしまった。

直接は私が悪い訳では無い。


しかし、この闘技場での戦いは『そういうもの』なんだ。

まだ、早すぎたのかも知れない。


この試練は人にもよるがとてもそのハードルは高く自分を強く保てる状態の時期じゃないと受け入れられない『そういうもの』類いの試練でありクエストだった。


……仮に私がゴブリン達が苦手で仕方が無い時に、この闘技場を始めていたら目の前にいる夕顔ちゃんの姿は私であっただろう。


今、恐らく心にかなりのダメージを負っている。

これは、なんという罪深い試験なんだろう。


そして、夕顔ちゃんも私と同様に、何か、運命を背負っている。

…………そんな気がした。


「そうだよ…………正解」

「そっか。ごめんね、夕顔ちゃん」

「……朋ちゃんは誰が出てきたの?」

「プリンスちゃんと姉さんとあの男の子とグラ子さんと…………夕顔ちゃん」


「……そっかぁ、私も、ごめんね」


なんだろう? この時ならまだ気がつけたし何とかなった筈だった。

姉さんの時よりも解りやすい状態と違和感。


しかし私はまた気が付けない。

もうこの先も、何回繰り返しても気が付けないのかも知れない駄目な私。


夕顔ちゃんなら大丈夫。

そう思ってしまったんだ。




 ◇◇◇◇




とある屋敷の中の出来事。

その男は何時までも忙しく、永遠に仕事をしている。


昼夜問わずに。

少し寝て、仕事の繰り返し。


中々な地位に就いていて幾らでも仕事自体は他人にも振れる立場ではある。

しかし、己でやっておきたいという理由で寝る間も惜しんで働く。

そんな仕事人間な主の元にあの報告が久々に入った。


「失礼します」

「……入れ」

「進みました。針が……」

「ほぅ………………進んだか。まさかだが……進むとはな…………次で、ほぼ確定だ。報告を期待してる」


「はっ。私も、報告に来られるように、祈っています」

「下がれ……」


「――――はい」

「ふふふふふふふ。あははははははぁ。良い! 良いぞ! とても良いタイミングだ。後は特定する為にどう動くかだ! 今回こそ作り上げてやる。あぁ、本当に待ち遠しい。楽しみだな、勇者よ!」


大声で嗤う屋敷の主は、己の考えとこれから起こるであろう出来事に期待し、妄想に妄想を重ねてから満足して寝た。


本人が驚くほどに。

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