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5猫な彼女はリーアさん

「あーんっと、取り込み中かにゃ?」


誰かの声が聞こえた。


「ん? くっ。何でもねえよ。どっか行けよ」


「お前も俺らのういんういん邪魔するか?」


新しく来た女の子? はこちらの様子を眺めて顔色を変えて叫んだ。


「おい、そこのチンピラ。それ以上そこの子に手を出すにゃ。もう限界点が見えるにゃー!」


「はぁ? お前、何言って」


「ん? あっ兄貴? 子供から何か…………」


何か腕にしているミサンガから声と共に牛を形取ったもやが見える。



『警告します。悪意を確認。標的を特定。私の名前はサクリファイス。護衛主から今すぐ離れなさい』



「あん? ってやべぇ。おいブタマロすぐ逃げるぞ、召喚術だ」


「ははぁ。な、どうしたんですか兄貴。こんなのにびびっても…………」



『未来予測攻撃を開始します三、二、一』



「ぐぁー。お、おでの腕がぁーーーー」


その声と共にもやからの攻撃を受けたのか一人の大人は腕を押さえてもがいている。


「なっ、今すぐ離れろ、ブタマロ」



『警告、警告。三秒後に実行モードに入ります三、二』



私から泣きながら離れる大人の一人。

私のそばにいるもやの掛かった牛さんはカウントダウンを止めつつ沈黙している。


「あ、あああ…………兄貴ぃーおでのうでがぁーーーー」


「おいブタマロ、落ち着け、大丈夫だ。あれは未来予測だ。数秒先の未来を予測しビジョンを見せるだけの高度な魔法的セーフモードだ」


「そんなこと言っても痛いよおおおお」


「ちっ、此処は逃げるぞ、急げ!」


大人の二人、サイギスとブタマロという名前らしい人達は逃げるように去って行く。


私は立ってられずにヘタリと座り込んだ。

そこへ恐る恐ると猫のコスチュームを着た人なのか猫なのか解らない人が私の元へやってきた。


「だ、大丈夫かにゃ?」


「ん、ふっ、ふうー」


猫のコスチュームを着た人は私の心配をしてくれているみたい。


「た、助かりました、ありがとうございます。…………猫の、人?」


口元の布を震えている手で取り外してから私は目の前の猫の人にお礼を言った。


「あぁ、良かった。怪我はないかにゃ? リーアは何もしていないけど、危なかったにゃー」


「いえ。声を掛けてくれました。もう駄目かと……。後、相手も怪我させずにすみました」


「あはは、相手の心配はああいう時にはしなくて良いにゃん、優しいにぁ」


「あ、震えが止まった。私は朋と言います。改めまして、先程はありがとうございました」


「うん。良かった。私はリーア。この洋服は装備品だにゃ。語尾は気にしないでニャ。副作用みたいなもんにゃお」


「なるほど、そうなのですね。分かりました」


「しかしさっきのはやっぱ使い魔かにゃ?」


「はい。あれは姉さんの召喚獣の内の一体です。何回か見たことあるので」


「ふーん。あれ程だと、相当の使い手かにゃ、見ていた私もちびったし。にゃーっと」


「はは。姉さんは魔術道士ですね、結構凄いです」


「なっ――――――――魔術道士ってこの国に三人ぐらいしかいないはずにゃあ…………それはあの人達もご愁傷様ですにぁ。所でさっきは何があったのかにゃ?」


事の経緯をリーアさんに話すと、むむむー。

と唸って、ちょっとお時間あるかにぁ? なんとなく全貌が解ったにゃ、と話している。


「時間は、大丈夫です」


「うん。それじゃあ行こうっとその前にー」


『にゃーお』


結構大きい声で目の前のリーアさんは鳴くと何処からともなく黒猫さんが現れた。

その猫さんに対しリーアさんは何か話しているが言葉の殆どが、にゃーとかにぁーとかにゃにゃにゃにゃにゃーでさっぱり解らにゃー。


ああ……移るよ言葉。


その猫さんとの話は終わった様で「さぁ、行こうか」と私を見て話す。

リーアさんに私はついて行くと街並みの外れ。

さっぱりとした住宅街をどんどん進み大きいお屋敷ばかりの区画に入る。


うーん、こっちの方は来たこと無いんだよなぁ……どきどき。


「さぁ、ここだにゃ!」


「……………………」


リーアさんがここだよと案内してくれた家は周囲の大きいお屋敷よりも大きくっていうか、これ家なのかなぁ? 最早、城に近い何かだ、これ。

私、お城見たこと無いけど。


頑丈そうで綺麗な装飾された鉄格子の入り口から中に入る。

外からも見えたけどその建物近づくと更に大きく見えた。

家の扉までたどり着くと同時に中から老齢の身なりのしっかりとした男性が出てきた。


「お待ちしていました」


「お待たせしました。あ、この子がそうですにゃ」


老齢の男性は紹介された私を見ると、ほう。

と言いたげな目で私をみている。


「では、どうぞこちらへ…………」


「いこっか、朋ちゃん」


「う、うん」


どうぞと通された部屋の内部は応接室みたい。

かなり広く部屋の中にはそれに伴った家具が置いてあり、シンプルながらも豪華に。


とてもセンスの良い人が上手く纏まるように家具を揃えてしかも落ち着ける様に整えられた部屋だった。

なんか、キラキラしているんだけど、ほわっとしている。


何か色々と凄いなぁ。


「そっちのソファーに座ろ、朋ちゃん」


「あ、うん。リーアさん。私、こんな所に来て良かったの?」


「え? あぁ、それに関してのお話がこれからあるけど、特に何かされる訳じゃ無く、寧ろ逆にゃ、感謝されると思うよ」


「んん? どういうこと?」


「あは。まぁまぁ、もうすぐ来るから。そういえば朋ちゃんは、んー。十三歳ぐらいかにゃ?」


「あ、当たりです。もうすぐ十三歳になるんだぁ。リーアさんは幾つなの?」


「あ、私は確か今、十四歳だったかにゃ、今は商人の修行中だにゃお。これも何かの縁。仲良くしよー」


「わー。はい。こちらこそお願いします」


「じゃあ友達だにゃ。よろしくね。朋ちゃん」


「あ…………うん。ありがとう。リーアさん。嬉しいよお友達」


私に友達が出来た。

どれぐらい振りだろう…………ターニャ。

あ、思い出したら涙が出そう……えーん、止まれ止まれ。


「ちょっ。どうしたの朋ちゃん。涙ぁ……」


「あっ、うぅー。ちょっと昔の事、思い出したら感情が溢れちゃった。ごめんね」


「はぅー。もし良ければ……で良いからさぁ、今度教えてね」


「…………うん」


それから数分後、紅茶が運ばれて来た。

リーアさんが飲んでいるのを見て、私も手に取る。

あ、この紅茶おいしい。


「お待たせしました」


先ほどの老齢の男性と共にもう一人男性が来た。

落ち着いた雰囲気というよりも疲れて少しやつれた顔をしている様に見えた。


「待たせてしまったかな。すまない。私は此処のダイラック領主でオスカーという。よろしく」


「私はさっき、路地裏でこの子を見つけたリーアといいますにゃ。ビバット商会の商人見習いです。で隣のこの子が朋といいます」


リーアさんは私に小声で自己紹介。

出来る? と聞いてくる。


「私は朋といいます。お姉ちゃんの手伝いで今日の朝ここの街に来ました」


「…………では何処から話そうか、とりあえず失礼だが、先ほど調べさせてもらって君たち二人の事はなんとなく把握している。まずはリーア、猫の使い魔による報告。感謝する。こちらでも何が有ったのか解らない状況下だったから連絡をくれたのは非常に助かった。ありがとう」


「そして朋。君があの場にいなかったら、恐らく私にとって物事は最悪の展開になっただろう。心から感謝する。助けてくれてありがとう。娘のルッカも今、念のため魔法による検査をしているが、恐らく大丈夫だろう…………一体何の話がわからないかもしれないから、私がわかっている情報をまず話そう。昨日の昼頃に娘は街中で誘拐された。その事が私の耳に入ったのがその一時間後。主要の所に話は通して網を張りつつAランク冒険者三パーティに依頼をした所だった。少しずつ情報は入るのだが次の日になっても娘は見つからなかった。その時、使い魔からの連絡を受けたという経緯だ。一体あの場では何が有ったのかい?」


私は自分の覚えている限りあの時起こった出来事をオスカーさんに話した。

結局、私は何もしていないんだけど、それを話すといや、切っ掛けも作ってくれたじゃないか。

と、何より娘はたいした怪我もしていないとやっぱり感謝された。


「じゃあ朋はメルヴィッセ魔術道士の弟子なのか?」


私の事を聞かれたのでお姉ちゃんの事を話した。

弟子なのかな私。

お姉ちゃんはお姉ちゃんなんだけど、まぁどっちでも良いのかな


「そう――――です。色々と教えてもらっています」


「そうか、話に聞いている所だと今までで弟子を取ったことは無いという話だったが、ふむ。余程、朋は優秀なのだろう」


「え。そうなんだ。じゃあ私は弟子じゃないかもです。お手伝いというか、姉が私の保護者です」


「いや、話していると所々でその若さにしては、という所が見えるよ。なんというか、物事を知っているね君は…………」


「そんな事は…………」


その後もオスカーさんとのお話は食事を挟んでからも続き、今回のお礼にと私とリーア共に十万C(クアレット)づつ渡された。あんまり渡すと四方から怒られそうな気がするのでとりあえず十万C。


後は一つ貸しだ。

……これは何か有ったとき私が力を貸す。

物事に依ってはこちらの方が価値は高いぞ、と話してくれた。


「あぁ、もうこんな時間か、すまない。結構な時間、拘束してしまった様だ。当家の馬車があるから何処へでも送ろう。今日は本当にありがとう。もし機会が有ったら、娘にも会ってやってくれ。娘はまだ家に戻らない。恐らくもう少し後になるだろうから、あぁ、メルヴィッセによろしく伝えておいてくれ」


「はい――――わかりました。今日はお招きありがとうございました」


「いやいや、感謝しているのはこちらだ。今日は本当に有り難う」


私とリーアさんは馬車で商業が盛んな区画『クロシマメノウ通り』へと送ってもらった。

時間は午後に差し掛かり朝見たときと違い人通りが多いというか、人が多い。

色々な物が売られている様で、時間を掛けて見て回りたい。


前回姉さんと来た時もそんなに時間が無かったのかあんまり見て回れなかった。

馬車の中でリーアさんが買い物に付き合ってくれると話してくれた。


何でもリーアさんが修行しているお店は遠い所から仕入れた物を販売するのが主な商売で、リーアさん自身は将来的には街に根を張り、お店を持って商売したいそうだ。


けど今は何をしてもその出来事が将来の糧になるから色々なことに興味を持つ事にしているらしい。


その結果か今日もたまたま私の事を見つけてくれた様。

偶然なのか、必然なのかはわからない。


私は運命の女神様に感謝した。


「えーっとねぇ。必要なのはマンドラゴラムンクの葉が三枚にケルピーの足爪五個、マンティスの鎌二個にガシャドクロの骨一個だよ」


「ふむふむー。それは中々…………」


「ガシャドクロの骨は有ったらで良いよーって言ってた。他のは恐らく買えるって」


「にゃあ。その見立ては正しいね。ガシャドクロの骨以外は買えるね。昨日までの情報だと骨は何処も仕入れていないね」


「解るんだ。凄いなぁリーアさん」


「まだ見習いだから、毎日ちょこちょこと物を見ながら商売もしているからねー」


「そういえばなんとなく気になったんだけど、聞いて良いかな? リーアさん」


「んん。なんだい改まって、朋ちゃん」


私は言葉に猫の言葉が入る時と入らない時が有ったのが気になったんだけど、単なる癖なのか失礼かもだけど聞いてみたら、あぁーそれは呪いなんだよね。


猫コスチュームの弊害というか、呪いで高確率で語尾などににゃ。

とかが付いちゃうんだにゃーこれが、と話してくれた。


「なるほどー。ありがとう。納得したにゃ」


「……むむっ。さてはお主も猫の者…………」


「あはは、違うよ移るんだって」


「知ってるニャ」


買い物が終わりリーアさんとお茶をしながらお話した。

ここはお勧めのカフェで今は限定で大きいパフェが食べられるんだって。


私もそれを頼んでみたら、凄いの。

大きさにびっくりしたけど、お腹には収まった。甘い物は得意です。

ビッグフジヤマって名前みたい。


「後は冒険者ギルドだっけ?」


「そうそう。登録するんだ」


「朋ちゃんは将来冒険者になるのかにゃ?」


「うーん。多分……」


「そっかー。まだ悩んでる感じかにぁー」


「うーんとね、何かしなければいけない事があるみたいで良く解らないんだけど、準備だけはしておこうかなぁと」


「ふむふむー。意味深な感じだにゃ」


「えーとね。良く解らないから比喩なんだけどね、私の中に扉があるの、多分二つか三つぐらい。でもその扉は開かないし誰かが入ってくる訳でも無いの。で、その日に依っても扉の数も違うんだけど確実にいつか開くみたいで、開いたら何かが起こる気がするの」


「何が起きるんだろうにぁ……」


「ねー」



冒険者ギルドに辿り着く前に寄っていったお店で買い物は済ませてある。

リーアさん凄く詳しいみたいで此処のお店でこれ、此処でこれという風に買い物は悩むまもなく直ぐに終わってしまった。


そんなこんなで冒険者ギルドにたどり着いた私たち。


リーアさんは用事があるみたいでここでお別れ、冒険者ギルドの中にも何人か知り合いもいるらしいけどここは大丈夫にゃあ、と教えてくれた。


リーアさんに今日のお礼をすると「これも何かの縁ですにゃ」と尻尾を揺らしながら話していた。


また今度会えると良いなぁ。

ご拝読頂きありがとうございました!

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